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響きの良いホール/悪いホール








みなさんこんにちは!

今週のお話は、もしかすると演奏経験年数が多い方のほうが共感してもらえるかもしれません。が、演奏活動を続けているといずれこの話題は必ず出てくると思うので、ぜひ読んで頭の片隅に置いてもらえると嬉しいです。


《響きの良いホール、悪いホール》
音大生の時に一番この話題を耳にしたように感じますし、自分も言っていました。様々なホールで演奏をしていると、それぞれのホールの音響の違いに気づきます。とてもよく響いて吹いていて気持ちよくなるホールがある反面、ここは防音室ですかと言わんばかりに響かないホールなど。

演奏場所はホールとは限りません。本来演奏する場ではない室内や、場合によっては屋外ということもあります。我々管楽器奏者は楽器さえあればどこでも演奏会場になりますからね。お寺の本堂で演奏したこともありますよ。意外に響く。

で、本番のために会場に行くと、絶対に誰かしらが「ここのホール吹きやすい」もしくは「このホールはデッドだ」とかの声が聞こえます。デッドは、英語でdead(=響かない、鈍い)という意味です。デッドな会場は吹いていて息苦しさを感じてしまいます。

余談ですが僕、学生の時に酔っ払って真夜中の渋谷109の前でラッパ吹いたことあるんですが、あそこ両脇にビルが立ち並んでいてよく反響して、屋外なのに吹いていて気持ち良いんです。みなさんは許可なく吹いちゃだめですよ。もう大昔のことですから、時効ということで勘弁んしてください。もうしません。


《主観的なものかもしれない》
ただ、この響き良い/悪いというのは、演奏している人だけが感じてることかもしれません。
意外にも響かないホールでの演奏、客席から聴いていると違和感がないこともしばしばです(というか、同時にいろんなホールで同じ演奏を聴くわけではないので音響の比較対象がなくてわからないのです)。

むしろ、響きすぎるホールは、何を演奏しているのかよくわからなくなったりして、吹いている人は気持ち良いのかもしれないけれど、聴いている側からはそこまでありがたくなかったり、そんなギャップもあります。
今は少なくなりましたが、街の小さなカラオケスナックみたいなところで、きもちよさそうにムード歌謡か何かを歌っているおじさまの歌声、エコーがかかりすぎて何歌ってるか外からだとさっぱりわかりませんよね。(よね、ってわからない人も沢山いるでしょうけど)。昭和のカラオケはそういうところにしかなかったんですよ。行ったことないけど。

ですから、「響きの良い/悪いホール」というのは一概に奏者と聴衆も同じようには感じていないのかもしれない、ということは覚えておく価値があると思います。


《立ち位置の問題かもしれない》
また、吹奏楽やオーケストラのトランペットで言えば、演奏する場所にも原因があるかもしれません。後ろに行けばいくほど、ベルの前には人や物が多く、音を吸収したり反射する素材が多い、ということ。さらに、背後に打楽器、中でもシンバルや太鼓類などのいわゆる噪音楽器(音律の定まらない音を出す楽器)がいると「かき消された」気がしてしまうのも原因かもしれません。
これらは、自分の周りだけが響いていない気がしているだけで、実はホール内ではきちんと客席まで届いていることが多いのです。

むしろ「自分の音が飛んでいない気がする!」と思って、いつも以上に腹圧を高め(=腹筋を強く使い)必要以上の高圧状態でギュウギュウ吹いてしまったり、アパチュアをいつも以上に大きくしてしまい「鳴った気がする吹き方」をしている時こそ一番客席に届かない状態と言えます。。
こういった状態を「開いた音」を出していると僕は呼んでいて、自分やその周りだけには音はビャービャーと大きく(迷惑に)聴こえるのですが、なにぶん音楽的に美しくない音なのでアンサンブルにならず、単なる騒音になっているのです。結果「聴きたくない音」になるので客席には届かない、というか、客席にいる人たちの「心」に届かないのです。


《冷静に考えてみよう》
しかし、ホールがどんな響きであれ、そこにいる自分はいつも通り音を出すしか方法がありません。
そのホールでのリハーサル中、

「なるほど。このホールの残響は0.6秒のホールだから、ベルの角度はこうで、音量はmfを○デシベルとし、スタッカートの場合は0.3秒の長さに統一し、音量を○デシベルずつ変化させよう」

こんなこと誰ができるのでしょうか。
どこで音を出そうが自分の演奏は自分の演奏でしかありません。そのホールの響きについてはひとまず置いといて、自分がその楽器を一番響かせる吹き方、ブレスコントロールを「いつも通り」すればそれで良いのです。
それが結果的に「ホール中に響くサウンド」になります。


《自分が主体ではありません》
よく楽器を響かせるとか、ホールを響かせるとか言いますが、それはちょっと違います。
レッスンでも、一生懸命鳴らそう鳴らそうと頑張っている生徒さんにはよく言います。

楽器『を』響かせるのではなく、楽器『が』響く吹き方をするのです。

自分が楽器を操っているという意識はいつしか「楽器に言い聞かせる」「楽器をしつける」意識に変わってしまいます。しかし楽器というのは無機質な物体です。我々演奏者のことや、心を敏感に感じ取り、変化するものではありません。それぞれの楽器には完成した時点で持っている「響くポイント」のようなものが存在していて、それを奏者が的確に感じ取り、音を出すのです。

ですから「奏者が楽器に合わせる」のが正解です。

楽器屋さんの試奏などで複数の楽器を吹き比べているときに「この楽器吹きにくい/吹きやすい」を主観的なものだけで判断している方、多くないですか?

しかし、それぞれの楽器の良さを見つけてあげようとすると、最初から「ダメな楽器」って(ちゃんと作られていつものは)ほとんどありません。
吹きやすいと感じたのは自分の吹き方に偶然マッチしたとか、相性が良かっただけで、それがイコール楽器の善し悪しに直結するわけでもなく、「万人にとって素晴らしいと言える楽器」かどうかもわかりません。

ですから、自分の楽器を選定する時は良いのですが、誰かの楽器を選定するときや、人の楽器を借りて吹いたときに「この楽器ダメだね」なんて偉そうに言っている人を見ると、なんだかかわいそうな人だな(もったいないな)、と思ってしまいます。


話がそれてしまいましたが、ホールを響かせたいのであれば、響きのある音を自分自身が出すこと、これに限ります。


《自分の体に注目してみよう》
演奏会場がどんな環境であれ、自分の体を使って楽器から音を出す、という点はまったく変わりません。
したがって、耳や頭で「響きの悪い場所だなあ」と思うのはやめて、体の使い方に意識をシフトしてみてください。

・いつもの練習通りの腹圧で、空気圧をコントロールしていますか?
・マウスピースを無理に押し付けて音色を壊していませんか?
・アパチュアを広くして「そば鳴り」になって満足してしまっていませんか?
・演奏に必要な筋力やうごきとはどんなものですか?

・要するに、いつも通りのベストな吹き方をしていますか?

いつも通りであれば、いつも通りのベストな音でホールに響き渡っています!
それだけでOKです。


《箱に合わせた演奏》
僕が音大生の時のことですが、ソロコンクールで吹いていた時、緊張も相まって曲が激しかったこともあり、調子に乗って吹奏楽の合奏みたいなffを出してしまっていたんです。その時の審査員のひとりが大学の先生だったので、翌日学校でお会いして昨日の講評を頂こうこと声をかけたら、すごい剣幕で

「なんだあの演奏は!音がうるさい!箱のサイズを考えなさい!」

と一蹴されてしまいました。
そのときに限らず、学生の時には何人もの先生に「箱のサイズを理解して演奏する」という言葉をよく耳にしました。

「箱」というのはホール、演奏会場のことです。
ソロのコンクールは予選だと、いわゆる小ホールサイズのところで行うことが多いので、あまり大きな音で吹くと「やかましい」演奏になりがちです。

ただでさえ緊張していて無駄な力が入っているのを解除できずに演奏していたものだから、一旦パワーのスイッチが入ると制御がきかなくなる、なんてこと当時はよくしていました。
みなさんは似た経験はありますか?吹奏楽などで最初に大きな音量で始まる曲があると、そのあともコントロールが効かないでずっと吹きまくり続けて練習の時よりも早くバテてしまう、なんてこと。

これは決して会場が小さかったら大きな音で吹いてはいけない、ということではありません。サウンドそのものの問題なんです。
質が良ければ大きな音であってもうるさい音にはなりません。そうではなく、音楽的な表現が合っていない、ということが一番の問題点であると考えます。
逆に、朗々と響くサウンドであれば、そんなに力をこめて大きな音を出さなくても充分説得力のある演奏ができるとも言えます。


確かに「箱のサイズに合わせた演奏」というのはあります。しかしそれは奏者としては第二段階の話であって、コントロールが柔軟になってくれば自然とできることとも言えます。
あまり意識しなくても、冷静に自分が演奏している環境を感じていればそれで良いと僕は思うのです。
むしろ、コントロールがあまり上手にできないのに、箱のサイズに合わせてうんたらかんたら〜なんてやっていると自分のベストな演奏ができなくなる可能性もあります。

なんとなくでいいので、自分がこれから演奏する空間をぐる〜っと見回してから吹いてみてください。最初はそれだけで充分だと思います。


《遠くのお客さんにも届ける?》
ですので、逆にとっても大きな空間で演奏する時に、無理に鳴らそうとするのは間違いです。
僕もよく言いますが「ホールの一番奥や3階席にいる方にもしっかり自分の音を届けて」というのは、あくまでもイメージの世界の話です。
それを奏法で解決しようとすると、結局力でなんとかしようとして無理がたたってしまいます。

大きなホールに立つと「孤独」を感じます。吹奏楽のように大勢が一緒の舞台にいても、なんだか心細くなります。それは音楽室とは違い、天井が高くて、背後も遠く、お互いの距離感も少しちがって、なによりも目の前に広がる客席が見慣れないからです。

星空を見上げて「オレはなんてちっぽけな存在なんだ…。」と言うのに似ているかもしれません(笑)

ということで、なんかすごい頑張って吹かなきゃいけない気がしますが、先ほど書いたようにいつも通りで良いのです。自分の体をいつも通りに使って、音のツボに当たった響きの豊かな音を出せれば会場中に音を届けることができます。


ということで、今回は本番の会場でのことを書いてみました。
これから吹奏楽コンクールなど、本番が多くなる時期かもしれません。ぜひ冷静に、いつも通りの演奏ができるように毎日、毎回の練習を大切に積み重ねていってくださいね。

それでは、また来週!

当ブログの写真・記事等の(全部、一部問わず)無断利用、ネット上(TwitterやFacebookなどのSNSを含む)などへの無断転載を禁止します。

at 06:05, 荻原明(おぎわらあきら), 本番・合奏練習

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計画的な練習









みなさんこんにちは!

今週は「計画的な練習」についてです。



《思い当たるふしはありますか?》
みなさんは毎日(毎回)の練習、どんな流れで行っていますか?
きっと義務感にとらわれてイヤイヤ楽器を吹いている方って結構少ないと思います。好きだから、楽しいから楽器を続けているのでしょう(そう信じて疑いません)。

それを前提として書きますが、「早く吹きたい!」とわくわくしながら楽器ケースを開けるのではないでしょうか。もしかすると「早く練習しなきゃ!」と理由はいろいろでしょうが焦っているかもしれませんね。

ともかく、練習意欲があるのは大変結構なことです。

そして楽器を出して…次、何していますか?
いきなり曲を吹く、という方はさすがに少ないと思います。きっと「基礎」的なことや「ウォームアップ」的なことを最初にするのではないでしょうか。

でも、きっとそんなことをしていても、やっぱり早く曲が吹きたいですよね。曲を吹くことこそ「真の練習」であり「一番の目的」であるのはよくわかります。

なので、なんとなく「基礎的なこと」や「ウォームアップ的なこと」をしたかと思えばもう曲を吹き始めて、一番かっこいいところや好きなところ、もしくは楽譜をアタマから通してみたり(あまり上手に吹けなかったところは、たいして気にしない。いつものことだから)。一通り吹いて満足。

で、次どうしよう?

もう一回通す?いや、違う曲通してみようか。じゃあ次の曲!

うーん、できないところはいつも一緒だなあ(まあいいか)。
ってか高い音出してたらバテてきちゃった。
休憩〜(ボーっとする/おしゃべり開始/後輩指導(自分は吹かない))。

(その後)
うーん、できないところはいつも一緒だなあ(まあいいか)。
ってか高い音出してたらバテてきちゃった。
休憩〜(ボーっとする/おしゃべり開始/後輩指導(自分は吹かない))。
(以下時間のある限り無限ループ。しかしバテはひどくなる一方)


…いかがでしょうか。どこかこころあたりありますか?


実はこれ、中学生のときの部活の時間の僕です。

教えてくれる人も、当時は手に入る情報も少なかったものですから、トランペットの練習って何をすればいいのかわかりませんでした。ウォームアップの重要性も、どんなことするかも、基礎練習って何なのかすら知りませんでした。ですから、「曲を吹けるようにするために曲を吹く」という安直かつ非効率的で解決しない練習を毎日繰り返すばかり。だからできないところはいつまでたってもできませんでした。だってその吹けないところを解決するための基礎力がないのですから、できなくて当たり前です。

そんなのだから曲を通すだけで(苦手なところは無視して)ろくに休憩もとらないからすぐバテる。バテたからすることがない。毎日その繰り返し。

僕の中学校は本番が非常に少なかったので、新しい楽譜をもらえる頻度がとても少なく、だからいつも同じ曲を吹いていて、この調子の練習時間でしたから、いいかげん飽きるんですよね。吹ける吹けない関係なく、飽きる。

みなさんはこうなって欲しくありません。計画的に時間を使って、練習したぶん何か必ず成長したという実感を持ってほしいです。

ということで、限られた練習時間を上達という面もメンタル的な面も含めての充実した時間になるようにするためにはどうしたらいいか、考えてみましょう。


《ウォームアップは念入りに》
人間はコンディションが一定ではありません。睡眠時間、食事、人間関係、仕事、体力、病気、イベント、アクシデント、様々な要因で刻々と変化しています。
そういった自分の変化を客観的に把握し、トランペットを吹くための「自分の実力」を常にベストな状態に安定させるための時間を「ウォームアップ」と呼びます。

これを習慣化していないと、せっかく一生懸命練習を積み重ねてきたのに、本番当日にもし「調子悪い!」となってもそれを修正することができず、成果を発揮できないで終わるハメになるかもしれないのです。これは絶対に起こってほしくありませんね。

ということで個人練習前でも、合奏前でも本番前でも毎回必ず同じメニューを繰り返し、コンディションの悪いところを把握し、それを奏法的な面から理論的に修正する作業である「ウォームアップ」を必ず行ってください。

先日「トランペット ウォームアップ本」という教本を出版しました。こちらにウォームアップに対する考え方から具体的な方法まで楽譜とともに書いていますので、ぜひ使ってみてください。コンディションが安定してくるはずですよ!お求めはAmazonにて(こちらをクリック)。


《それぞれのメニューを考える》
ウォームアップは、その日にどのくらい練習ができるかに限らず必ずしっかり行って下さい。とても極端なことを言えば、コンディションを整えて練習時間が終わってしまったとしても、コンディションが悪い状態で無理矢理曲の練習をするよりも圧倒的に有意義だと思います。
コンディションを整えるウォームアップも、少しずつパターンがわかってくると、短時間で済ませることができるはずです(30分程度)。

そして、ウォームアップの時間を含めないで、残った時間をどう使うか計画を立てましょう。
おおまかに分けるなら、「基礎練習」「曲練習」「休憩時間」をどのように配分するか、という感じです。
そしてそれぞれ「基礎練習」だったらどんな内容を、「曲練習」はどのように、など細分化、もしくは「今日のテーマ」を決めておきます。

[基礎練習について]
基礎練習というのはある意味無限に内容がありますから、「今日は課題になっている教本のこの部分についてしっかり練習しよう」「音階練習をメインにやろう」「苦手なリップトリルの練習を集中的にやろう」など、より具体的なテーマを決めます。

個人的なことを言えば「浅く広く」よりも「深く狭く」のほうが実力という山を積み上げやすいように思います。一度しっかり手に入れたテクニックや知識は、時間がたっても自分の実力として根付いているからです。言い換えるならば、実力として根付くくらいひとつのテーマを真剣に、集中的に練習すべきなのです。

[曲練習について 1.楽譜を正確に演奏できるようにする]
吹奏楽やオーケストラ、ビッグバンドに所属している方はそこで演奏する曲の練習をするでしょうし、そうでない方は、「できるようになりたい曲」とか「レッスンでやってる曲」など自由に決めているかもしれません。

最終的にはもちろん「完成」を目指すわけですが、「完成」とはどの状態を指すのか、あいまいな方が多いように感じます。

もちろん、楽譜に書かれていることを最初から最後まで忠実に正確に演奏することがひとつの課題ではあります。そのためには「苦手としている最低限の箇所を見つけ出し、それを克服するための練習方法を考えて効率的に解決する」ことが大切です。

例えば、難しいフィンガリングの箇所があった場合、その中で指がまわらないのはきっと「2〜3音」の範囲だけなはずです。そこを反復練習するわけですが、リズムをかえたり、フレージングやテンポを変えたり、あと、とても遠回りに感じるかもしれませんが教本を取り出して同じテーマの練習曲を使うなど、様々な工夫したパターンを繰り返すことが大切です。
そうしているうちに苦手な箇所もできるようになることでしょう。

[曲練習について 2.音楽的完成を目指す]
しかし、本来の「完成」というのは楽譜に書いてある情報だけを最初から最後まで吹き通すことだけではありません。ミスしないで吹けることだけでもありません。もっとも大切なことは「作品をより音楽的に演奏できるようにする」という課題です。

吹奏楽やオーケストラをされている方の中には、この課題をあまり重要視していない方が多いように感じます。
「そういうのは合奏で指揮者がやってくれることじゃないの?」とか思っていたらそれは違いますよ。

確かに、指揮者は自分の音楽的イメージを伝えてきます。指揮者というのは音楽監督なのですから、奏者はそのイメージを形にするための演奏をする必要があります。
しかし、真っ白なキャンバスに一から描いていくことを指揮者は望んでいません。そこにいるメンバーそれぞれが用意した「表現」を期待しているのです。もちろん、指揮者のイメージと照らし合わせて、奏者の表現を修正したり時には否定することもありますが、それは奏者失格ということではなく、相性とか偶然の組み合わせの悪さなだけですから、気落ちする必要もありません。むしろ何も指摘されないで、関心も納得もされないほうが奏者としては残念な存在かもしれません。

ということで、まずは個人個人で「この作品は(この場面は)どのような完成形になるのか(楽譜、編曲的な面から)」「作曲家はこの作品(この場面)をどのように演奏して欲しいと思っているのか」「自分はこの作品(この場面)をどのように演奏したいか」をバランスよく作品に込めて、自分の中にあるイメージを音にしてください。

実際はここに一番時間をかけたいところです。

そして、それぞれが完成してきた「作品」を合奏という場で一斉に表現することで、その団体がその時しか出すことのできない「音楽」が生まれるのです。
合奏の楽しさはここにあります。クラシック音楽が同じ作品を何度も何度もコンサートで演奏するのは、この変化が面白く、期待されているからでもあります。

ですから、指揮者が合奏で最初から最後まで完成させるというのは本来あってはならないことです。楽譜を正確に演奏できるようになっただけではいけません。ましてや、合奏(曲作りを目的とした合奏)で、楽譜に書いてあることが正確に演奏できないから、みんなが揃っている前で基礎練習みたいな合奏になってしまうことは絶対に避けるべきだし、そういうつもりで合奏までの練習を積み上げていかなければならないのです。

たくさんの曲を経験したり、基礎練習で実力を高めていくと、過去に吹いたことのある作品もまた違った見方やイメージを持つことがあります。「前はこうしたけど、今はもっとこうしたほうがいいと思う、もっとこうしてみたい」。これを感じることができたら、以前よりも成長しています。音楽は延々とこれの繰り返し。終わりがないのです。
だから楽しいんですよね。


《逆算した練習スケジュール》
ということで、すべては計画的に行いたいものです。

ひとつの最終目標(例えばコンクールの地区予選)を設定し、その日までに完成させるためにはどのような練習メニューをどのように積み上げていくのか、を予め計画しておくのです。

そして、その積み重ねる要素(=毎回の練習の成果)をできる限り質の高いものにするためには、毎回の練習メニューも逆算して計画しておく必要があります。

例えば、個人練習の場合ならば「今週末の合奏までに楽譜に書いてあるメロディを指定テンポで通せるようにする」とか「ソロの部分をかっこよく吹けるようにする」など。目的、目標によっては単に楽器を吹き続けることだけが練習メニューではないかもしれません。練習時間外で何かのコンサートや美術館に足を運ぶとか、たくさんの音源を聴くとか、文献を調べるとか。考えられることはたくさんあります。

ぜひ計画的、効率的な練習を積み重ねていくよう心がけてください。
それぞれの練習に対するヒントはこのブログの中に沢山書かれていますので、このブログ内検索でいろいろ調べてみてください。

ということで今週はここまで。
また来週!



当ブログの写真・記事等の(全部、一部問わず)無断利用、ネット上(TwitterやFacebookなどのSNSを含む)などへの無断転載を禁止します。

at 07:07, 荻原明(おぎわらあきら), 練習に対する考え方

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吹奏楽コンクール課題曲2016トランペット解説【2.スペインの市場で / 山本雅一】後編








みなさんこんにちは!

ただ今、吹奏楽コンクール課題曲トランペット解説実施中です。今週は課題曲2「スペインの市場で」の後編です。これで、今年度の課題曲すべての解説が完了します。他の作品解説は以下のリンクよりご覧ください。

課題曲4.マーチ「クローバー・グラウンド」前編
課題曲4.マーチ「クローバー・グラウンド」後編
課題曲5.焔 前編
課題曲5.焔 後編
課題曲3.ある英雄の記憶 〜「虹の国と氷の国」より 前編
課題曲3.ある英雄の記憶 〜「虹の国と氷の国」より 後編
課題曲1.マーチ・スカイブルー・ドリーム 前編
課題曲1.マーチ・スカイブルー・ドリーム 後編
課題曲2.スペインの市場で 前編

この作品を演奏しない方も、そもそも課題曲とは無関係の方にも参考になることをできる限り書いておりますので、他の作品解説も目を通してみてください。

それでは今週は順を追って解説していきますが、演奏するにあたって非常に重要なことを先週の記事に書きました。拍子の取り方をまず理解しておかないとこの作品は演奏しにくいので、読んでいない方はまず「課題曲2.スペインの市場で/前編」に書いてあることを理解してからこちらの記事を読み進めてください。


《指揮者の振り方に左右されないように》
場面ごとの解説をする前に、前回の記事で話題にしたように3/4拍子と6/8拍子が混在している音楽です。よって、指揮者がどちらで振るかは、それがメロディに対してなのか、リズムに対してなのかで変化していくものだ、と覚悟しておくと良いでしょう。要するに、「指揮棒の動きに合わせる」「指揮者の棒の動きと拍と合致させる」なんて意識を持ってしまうと、とたんに演奏が崩れてしまいますし、そもそも指揮者は「人間メトロノーム」ではありませんから、テンポキープするための機械のように見ないよう、注意しましょう。指揮者にテンポを出してもらうのではなく、自主的にテンポを培っていくことが、この作品に限らず重要です。


【10小節目】
ここは3/4拍子ではありますが、6/8拍子として捉えてください。連桁(れんこう:8分音符以上に付いている「旗」が隣同士くっつき合って一本の太い横棒になったもの)の付け方を6/8拍子に書き直してみてください(練習番号Bと同じ捉え方にする)。頭の中の音楽(聴こえてくる音楽)と楽譜の拍子が一致すれば、それだけで吹きやすくなります。

これと同じような場面がこの先何度も出てくるので、それぞれ書き直すなど工夫して読みやすくしてみましょう。


【33小節目】
この小節だけ3/4拍子でとります。先週の記事でもこの小節を話題に出しました。



この楽譜を3/4に書き換えるとこうなります



これで簡単になりました。
ちなみに、その前後の小節は6/8ですので、ジャンプ力の加減(前回の記事参照)の切り替えをできるようにしておきましょう。


【38小節目〜(拍子の取り方)】
ここからめまぐるしく感覚的拍子が変わります。以下を参考にしてください。

38小節も6/8拍子
39〜41小節目は3/4拍子
42小節目は6/8拍子
43小節目〜は3/4拍子


【58小節目アウフタクト】
[指揮を参考にして、アインザッツで合わせる]
非常にシンプルな動きですが、トランペット以外誰も演奏していない「むき出し」なところです。こういった箇所でのアンサンブル力は評価の対象としても非常に重要視されます。

まず、各トランペット奏者が指揮者(指揮棒)に合わせようと、それぞれ「指揮者 対 各演奏者」という一対一の関係になると、一向にアンサンブルになりません。どんなときでも同じですが、「それぞれが指揮者に合わせる」のではなく、「指揮者の指示をきっかけ、参考」にして、「1st(トップ奏者)のアインザッツでアンサンブルをする」ことが大切です。

この点については過去の記事

室内楽(アンサンブル)4
室内楽(アンサンブル)でのアインザッツ

もぜひ参考にしてください。アインザッツをきっかけにしたアンサンブルを日常化するためには、合奏だけでなく様々な練習形態でも同じように行うことが一番です。
パート練習やセクション練習などのときに、メトロノームをカチカチ鳴らしてパートリーダーさんが「1,2,3,4!」とか言って合わせているようでは、アンサンブル力は一向に身につきません。
いわゆる「縦を揃える」とうのは、誰か(メトロノームも含む)の持っている、もしくは表現しているテンポに全員が「合わせにいく」のではなく、確固たるテンポ感、リズム感、フレーズ感をそれぞれの奏者が心や頭の中に強く感じ、それを演奏に表現すること、それと同時に他の奏者のテンポ感やリズム感、フレーズ感を耳や心で感じ取ること。これらがあればメトロームのカチカチに合わせる必要もありませんし、むしろそれがとても窮屈で演奏しにくいものと自覚できることでしょう。

[ピッチ、ハーモニーの合わせ方]
この作品のトランペットは、オクターブやユニゾンで書かれているところが結構あります。オクターブ(8度音程)やユニゾン(1度音程)というのは、ピッチが合っているかどうかが一番わかりやすい音程です。

では、各自のピッチを安定させ、パート内での音程を良くするために、どのような練習をすれば良いでしょうか。

キーボードやチューナーに対して自分の音が正しいかそうでないかを評価する、という行為は音楽的ピッチや音楽的音程感を一向に良くしてくれません。それどころか、「自分の音をどんな手段を使っても、合わせようとする」ことばかりに意識が向いてしまい、ピッチを唇や口周辺の力で変化させ、奏法が崩れてどんどん悪い方向へ進んでいきます。

そもそも、なぜ安定したピッチを求めているのか、根本的な目的を忘れていることが多いのです。美しい響きや美しいメロディを演奏するためにやっていたはずなのに、いつしか「ピッチが安定するためにピッチを安定させる」という目的がさっぱりわからない単なる「作業」になっていることが非常に多いのです。音楽的な目的意識や求めているものを常に明確にしておく必要があります。

では、具体的にどうすればいいのでしょうか。

まず自分の楽器のピッチを安定させるために一番大切なのは「音のツボに当てる」ということです。簡単に言えば、その楽器を持つ一番良くなるポイントで鳴らすこと。すべての音をツボに当てることができれば、もうこれだけで大概はピッチが安定します。
ただ、その楽器の一番良い音=トランペットらしい響きがどういう音なのかを知らなければ目指すもののイメージを持てないので、そこは、生で一流のプロの演奏を聴くとか(録音はあまり参考になりません)、プロにレッスンを受けるなどが必要かもしれません。
そして、すべての音をツボに当てられるためには、「美しい音階(音楽的に美しい音程感)」がないと難しいので、ソルフェージュ力を高めるためのトランペット以外の練習(声に出して歌うなど)やレッスンができると、より近道かと思います。

音のツボを当てられる奏者が揃えば、ある程度の安定したユニゾン、オクターブ、ハーモニーを聴かせることはできます。しかしここでも、「美しいユニゾン」「美しいハーモニー」とはどんな響きなのかを具体的にイメージできるかが非常に大切なので、やはり一流のプロのアンサンブル(楽器や編成問わず)やオーケストラの響きを生で聴くことです。頭の中にイメージのストックが多ければ多いほど、実際の演奏にも影響させやすくなります。

中でもおすすめは、クオリティの高いトロンボーン4重奏や人数の少ない合唱です。バロック音楽などもいいですね(バロック音楽の中でも古楽器で演奏しているものは現代ピッチに比べてとても低いのでびっくりしないでくださいね)。


奏法面から言うと、2人以上の奏者の音が安定した響きに聴こえるためには、単なるチューナー的ピッチの統一ではなく、「音色」「音のスピード感」「演奏スタイル(曲に合っているか)」の要素が非常に大切です。要素や方向性が似ていたり近いもののほうがより安定した響きになるのは想像つくと思います。


ちなみに、65小節目からも同じようにパート内で安定したアンサンブルが求められますが、ここはミュート演奏の指示です。
ミュートの種類にもよりますが、「音のツボ」に当たらないと、くぐもった音になることが多いです。
それに慣れるためにも、ミュートは演奏するときだけ使うのではなく、個人練習などでミュートを付けた状態でずっと安定した演奏ができるか(=音のツボに当たり続けているか)の確認をするために使ってみるのも良いと思います。
また、ミュートはメーカーや種類によって音色が大きく異なりますので、できれば全員が同じミュートで演奏しましょう。


【73小節目】
[テンポの遅い3連符に注意]

ハバネラのメロディには必ずと言っていいほど3連符が出てきます。この、ねっとりとしたメロディが雰囲気を盛り上げているのですが、あまりに歌い込みすぎて、3連符のリズムが崩れてしまわないよう、注意が必要です。
往々にしてこのようなリズムに変形しやすいです。


※わかりやすいように、この作品の倍の長さ(2拍での3連符)に置き換えています。

右のリズムになってしまうと、もはや3連符ではありません。これはポップスによく出てくるリズムで、なんとなく耳に慣れ親しんでいるので、ついついこうなってしまう方も結構多いのです。
対策としては、3連符の最初の音をあまり引っ張りすぎず、すぐに2つ目、3つ目の音に向かってしまうのが良いと思います。そして、3つ目の音を、気持ち長めに歌うことで3連符らしさが出てきます。

ハバネラの間、3連符には注意してください。


【112〜114小節目】
ハバネラから抜け、冒頭の主題に戻ってきたので、また3拍子と6拍子の切り替えに意識してください。
特に、この112小節〜114小節は、楽譜上6/8拍子で書いてありますが、3/4拍子の音楽です。トランペットパート内でのアンサンブル力が試される箇所ですから、拍子の取り方、テンポの感じ方、タンギングのクオリティといった様々なものの統一感を持った上での演奏を心がけましょう。


【練習番号K】
ここから3/4拍子になりますが、最初の小節だけは6/8拍子です。他のパートもすべて6/8拍子ですから、バスクラ、トロンボーン、ユーフォ、テューバ、コントラバスのリズムの感じ方にも注意が必要です。


[まとめ]
この作品は、小編成用での演奏が可能なので、より「ウインドアンサンブル」なオーケストレーションになっています。ということは、自分の担当しているすべての音に対する責任感も大きいのです(自分以外に同じことをしている人が少ないか、だれもいないから)。
心細くなったり、それが緊張の原因になることもあるかもしれませんが、「全員が主役」と意識し、室内楽を楽しんでいるような、それぞれの楽器らしい音色や奏者の個性を生かしたアンサンブルを心がけてください。

みんなが同じ目線で作り上げることを意識し、決して指揮者に付き従う奏者にならないようにしましょう。




ということで、これですべての課題曲解説が終わりました。
次回からは、少し話題を広げて、効率的な練習方法やコンクールなどの舞台に上がるときのこと、メンタル的なことなどを書いていこうと思っていますので、ぜひ引き続きお付き合いください。

それでは、また来週!


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at 05:42, 荻原明(おぎわらあきら), 吹奏楽コンクール課題曲2016

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吹奏楽コンクール課題曲2016トランペット解説【2.スペインの市場で / 山本雅一】前編








みなさんこんにちは!


先月より、今年度の吹奏楽コンクール課題曲のトランペット解説を行ってまいりましたが、やっと最後の曲解説に入りました。最後は課題曲2「スペインの市場で」です。
現在、課題曲2を残してすでに掲載を終えています。これまで書いてきた課題曲解説の本文をご覧になりたい方は以下をクリックしてください。

課題曲4.マーチ「クローバー・グラウンド」前編
課題曲4.マーチ「クローバー・グラウンド」後編
課題曲5.焔 前編
課題曲5.焔 後編
課題曲3.ある英雄の記憶 〜「虹の国と氷の国」より 前編
課題曲3.ある英雄の記憶 〜「虹の国と氷の国」より 後編
課題曲1.マーチ・スカイブルー・ドリーム 前編
課題曲1.マーチ・スカイブルー・ドリーム 後編


この作品を演奏しない方も、そもそも課題曲とは無関係の方にも参考になることをできる限り書いておりますので、ぜひ一度目を通してみてください。

今回のお話を読む前に、この作品の演奏をまず聴いてください。YouTubeで検索するといろいろ出てきます。
とっても聴きやすく、明るく爽やかな印象を受けるかと思います。個人的には冒頭が「魔女の宅急便」の「海の見える街」の後半に聴こえます(笑)

スペイン風の音楽って、日本人になじみやすいのでしょうか。カルメンが人気だったりするのも何か共通する点があるのかもしれませんね。


では、曲を聴いた後、この作品の楽譜、できればスコアをご覧になってください。多分この作品を演奏される方みなさんが直面したことだと思いますが、聴いてるのと楽譜を読むのとではだいぶ違う印象、言うならば読みにくさを感じませんか?

それはなぜか、そしてどうすれば読みやすくなるのか考えてみましょう。


《書き方は何通りもある》
楽譜というのは、同じ演奏を再現するための書き方が何通りもあります。

例えば、4拍子の曲を2拍子に書くこと、可能ですね。小節線の数が倍に増えます。
12/8拍子を4/4拍子にすることも可能です。1拍を3連符ににすればいいのです。

「2/4 + 1/4 + 1/8 + 1/16 + 1/16」という変拍子を書いても、これらを合計すると結局は1小節内に4分音符が4つ入っていることと同じですから、聴いてる人には普通の4拍子だと感じさせることもできます。ストラヴィンスキーが、こんな手法を使っていることがありますね。

ということは、この作品に出てくる「3/4拍子と6/8拍子は1小節の中の音価が同じ(8分音符6つ分)」なので、どちらの拍子でも書くことができる、ということになります。

この作品のスコアを再度見てみると、3拍子と6拍子が時折変わっています。しかし、最初に聴いてもらった時の印象を思い出してもらうとわかるように、聴こえ方は変拍子のようにトゲトゲした違和感は全くなく、スムーズに流れています。


《捉え方が違う》
では、拍子が変わると何が変化するのでしょうか。
一番大きな変化は、カウントの仕方です。「1,2,3」と4分音符を1拍とし、3つカウントすれば3/4拍子になり、「1トット、2トット」もしくは8分音符を1拍として「1,2,3/4,5,6」とカウントすれば6/8拍子です。これらは、メロディやリズムがどちらのカウントの仕方をするとしっくりくるか、という感覚によって変化します。

しかし、この作品の面白いところ(複雑なところ)は、一概にメロディ、ハーモニー、ベースすべてのパートが、一斉に3拍子または6拍子に変更されているわけではなく、メロディだけが3拍子になるなどの、いわば「カラクリ」のような箇所がいくつも出てくるのです。「会報すいそうがく」に作者が寄せているコメントの中に出てきた「仕掛け」というのはこのことだと思います。

こういった音楽はよくあります。作曲者によっては、パートごとに拍子を変更していることもあり、レスピーギはその手法をとっています(6/8と2/4が混在しているなど)。この作品の場合は、そういったことをせずに、そのまま楽譜を書いていることが、「楽譜の読みにくさ」の原因なのです。

実際に、この作品の33小節目の1stトランペットの楽譜を見てみましょう。



何だかとても読みにくい楽譜ですよね。この部分、聴く側として3/4拍子に聴こえるので、本来スマートに楽譜を書くとするなら、こうすべきです。



結果的に耳に入ってくるものは同じでも、書き方はこのように変えられる、というのが楽譜の特徴でもあります。

したがって、この作品を演奏していて「なんか吹きにくい!リズムがとりにくい!楽譜が読めない!」となった時、ぜひ3拍子と6拍子を変更して書き直して(捉え方を変えて)みてください。例えば38小節目のトランペットは6/8拍子にしてみると「なるほど!」と吹きやすくなると思います。この小節は、前から続いている木管のメロディ以外は6/8拍子で構成されていますので、他のパートも全部6拍子で捉えます。したがって、ベースライン(低音楽器)の奏者が楽譜に書いている通りの3拍子と捉えて演奏してしまうと、「(3/4拍子としての)楽譜上2拍目ウラの音」を強く吹いてしまいかねません。しかし、音楽としては6/8拍子ですから、この音は(1小節内が付点4分音符2つと捉えた場合の6/8拍子の)「1拍目のウラ(3つ目の音)」なのです。
こういった「カラクリ」を理解し、本来持っているメロディや音楽の持っている形を表現しようとしない限り、この作品を完成することはできません。書いてある楽譜(拍子、音符、音価、連桁)をそのまま無理矢理読もうとせず、自然に歌えるリズム感を優先し、尊重して柔軟に読み替えられるようにしてください。

指揮者がどう振るか。それにかかってくる部分も大きいですね。


《ジャンプ力の違いと捉える》
今回の記事は楽典的、楽譜の基礎みたいな話になっておりますが、演奏者は楽譜を読むことが使命ですので、今は少し大変でもこの機会にぜひ柔軟に楽譜を読む力を身につけられるチャンスだと捉え、頑張ってください。

しかし、楽譜は所詮楽譜です。記号を印刷した単なる紙でしかありません。その紙には、作品を演奏するすべての情報が書いてあるわけでもなく、ましてや作者の思いがすべて込められているわけではありません。なぜなら楽譜の表記にはルールがあり、作曲者はそれに従って書く必要があるわけで、「妥協(しかたなくそう書いている部分)」が必ず含まれていることを演奏者は忘れてはなりません。


したがって、演奏者は「楽譜に書かれている少ない情報から、作曲者がどう表現して欲しいのかを感じ、読み取り、そして自分はどう表現したいのかも含めて演奏という耳に聴こえる形にしなければならない」のです。


ですから、この作品に話を戻して、「拍子を捉える」ということに関しても、単に「1,2,3!1,2,3!」「1トット!2トット!」と楽譜を一生懸命に見て吹くだけでは表現したとは言えません。拍を感じるためのイメージが必要です。


そこで一番わかりやすいのが「跳躍(ジャンプ)のイメージ」です。


トランポリンをやっている人を想像してください。その人は常に同じ高さのところまで跳ぶことを繰り返しています。

それを見ているうちに、トランポリンのマットに着地するタイミングが「感覚的」にわかってくると思います。

なぜわかるか。それはトランポリンで跳躍をしている人の「軌道」を見ているからです。

それが「テンポ」や「拍子」なのです。

音楽における拍も、光の点滅のようないつくるかわからない拍のアタマを何の情報もなく、いわば賭けのように根拠のない感覚でカウントしているのではなく、トランポリンのように拍と拍の間に「軌道」「動作」が必ず存在しています。その運動をイメージした結果、着地する確固たるタイミングが見えてくる(強く感じられる)ようになることが音楽において大切です。

この作品でいうなら、3/4拍子と6/8拍子は、1小節内の音価(音符の数)=1小節にかかる時間は同じなので、その中をどう分けるか(カウントするか)だけの違いになります。

要するに、トランポリンで高く飛んでいるその間に「1,2,3」と均等に捉えればそれは3/4拍子になり、「1トット,2トット」もしくは「1,2,3/4,5,6」と捉えればそれは6/8拍子になる、ということです。
大切なのは、同じ時間をかけて1小節を大きくジャンプしているイメージを持った上で拍を数えたか、という点です。

これは小節単位に限らず、1拍という範囲でも同じですし、4小節とか8小節という大きな範囲の「フレーズ」でも同じです※。「イメージの基本はまずは跳躍」と捉えてください。

この感覚を常に持って演奏することができれば、例えば「走る(テンポが速くなる)」演奏がしにくくなります(ジャンプしているイメージの最中に次の拍を感じることができないから)。


※フレーズ感など、音楽の「流れ」を感じさせるためには、同じ場所を繰り返しジャンプしているだけのイメージだけでは本当は難しく、例えば均等な感覚で配置された複数のトランポリンからトランポリンへどんどんジャンプして進んでいくような、そういった「前に前に絶えず進んでいく躍動感」を感じ、表現する必要があります。


《メトロノームでの通し練習はしない》
そこでひとつ提言したことがあります。このブログで何度も言っているのですが、

「メトロノームのクリック音に合わせてメロディを演奏しない」

という点です。
これまでの話を理解してもらえればもう説明する必要もないのですが、メトロノームというのはあくまでも「点」(トランポリンでいうところの「着地の瞬間」)を教えてくれているにすぎません。しかも、動きや軌道がそこにはない(少ない)ため「いつくるか明確にわかりにくい」要素が相まって、結果的に「拍のアタマを『狙う』」意識にどんどん変化してしまうのです。

これでは、躍動感はおろか、人間的で自然的なテンポ感を維持し続けること、そしてそういった演奏をすることなど不可能です。

しかも「拍のアタマが合えばそれでいい」という感覚に陥る可能性が高く、「音符(音楽)の推進力」「フレーズ感」がまったく育ちません。

メトロノームは呼吸を考慮してくれるわけもないので、「ブレスはしないほうがスムーズ」という感覚に陥ることもあるので、呼吸が乱れ、結果的に管楽器を演奏する上で一番重要な「ブレスコントロール」がおそろかになってしまいます。音色が悪くなり、力で演奏するクセが出てきてしまうので、バテやすい、タンギングが上手にいかない、演奏できる音域が狭い、ダブルアンブシュアになってしまう、音圧のコントロールができないなどの様々な弊害が出てきてしまいます。

よって、メトロノームに合わせて曲を吹く、ましてや曲を通すなんてことは音楽の練習にはまったくならない、ということを理解して欲しいと思います。
吹奏楽部などの個人練習やパート練習だけにとどまらず、合奏の時までもメトロノームを濫用することに僕は猛烈に反対します。


ではメトロノームは何のための道具か、と言いますと、

「おおよそのテンポを瞬時に理解するため」
「反復練習のオトモ」

以上です。これ以上に使い道がありません。
しかし、現代音楽を演奏するならまだしも、おおよそのテンポを理解するためにわざわざメトロノームなどを出してくる必要もないと思います。ちかくに秒針のある時計があれば120と60は容易に割り出せますし、80程度のテンポの音楽を覚えておけば、それに合わせて40と160も割り出せます。
それだけ感覚的に持っておけば、だいたいのテンポはすべてわかります。

したがって、フィンガリング練習などの反復練習時に使うくらいしかメトロノームの必要性はない、と僕は考えます。(レコーディングやポップスの世界の話には言及しておりませんのでご了承ください)


ということで、今回は楽譜の読み方、解釈の仕方、拍子のイメージの仕方、メトロノームについて書きました。
この作品を演奏される方はまず、楽譜の読みにくいところは、その場面の音楽が持つ拍子としては3拍子か6拍子のどちらなのかを理解してください。それに合わせて拍子を書き直してみるのも勉強になるかもしれません。

では次回は曲に沿って解説をしていきます。
この作品を演奏されない方も、課題曲とは無関係の方も参考になることをたくさん書きますので、来週も引き続きご覧ください。

それではまた来週!


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at 06:53, 荻原明(おぎわらあきら), 吹奏楽コンクール課題曲2016

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