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トランペット ウォームアップ本 (MyISBN - デザインエッグ社) (JUGEMレビュー »)
荻原 明
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2015.05.26 Tuesday
ノイズ(雑音)を発生させないためには
みなさんこんにちは!
皆様から多くのご質問を頂いておりましたので、今日はそのひとつをご紹介します。(現在は募集しておりません)
//////////////////////////////////////////////////////////////////////
こんにちは。中3で部活でトランペットを吹いている者です。
音に雑音が入る時があるのですが、どのようにすれば直りますか?少し前まで全くなかったので不安です。
雑音が鳴っている時に楽器からマウスピースを放して、マウスピースだけで吹いてもやはり雑音が含まれています。
(メールより一部抜粋、修正)
//////////////////////////////////////////////////////////////////////
このメールが届いたのは今年の1月なので、投稿していただいた方はすでに高校生かと思いますが、当時お送りした返信メールで改善が見られたのか少し気になるところです(お送りしたメールに対して、参考になった、改善した、言ってることがわからないなどのお返事があると、とても嬉しいです)。
トランペットを吹いていて雑音(ノイズ)が含まれてしまう時ってありますよね。
常にノイズが含まれているということはないにしても、一定の音域以上(以下)になると突然ノイズが発生したり、ノイズとまでは言えないけれど、サウンドそのものがあまりクリアに鳴っていないことが悩み、という方も多いのではないでしょうか。
ということで今回は「ノイズ」について書いてみます。
《ノイズが発生している場所はどこか》
まずはじめに知っておきたいことは「ノイズはどこから発生しているのか」。
実際には、その時の状況を見てみないとわかりませんが、楽器そのものに問題がないのであれば一番可能性が高いのは、ずばり
「唇の振動している部分」
です。唇はトランペットを演奏する上での音の発信源です。音を作り出している工場に何か異物の混入があったのでしょうか。工場の機械が不調なのでしょうか。
なぜノイズが発生してしまうのか、考えてみましょう。
《シングルリード楽器を参考にする》
その前に、他の楽器の音の発信源がどうなっているのか考えてみましょう。
吹奏楽やオーケストラ、ビッグバンドなどをされている方には身近な楽器、サックスやクラリネットといったシングルリード楽器は、3つのパーツを組み立てて音を出す仕組みを作り出しています。
ひとつはマウスピース、消耗品であるリード、そしてそれらを固定するリガチャーという器具です。
サックスやクラリネットを組み立てているところを見たことがある、という方は多いと思いますが、マウスピースとリードの位置をとても慎重に組み合わせていますよね。一度音を出して、再度位置を直しているところもみかけます。一度良い位置がきまれば、それがずれないようにリガチャーでしっかりと固定します。
これがシングルリード楽器の音の発信源でした。
《なぜノイズが発生するのか》
話をトランペットに戻します。
多くの場合、最初からノイズが入っていることは少なく、時間の経過とともにノイズが含まれてきたり、何かのアクションがあった時から突然発生することがほとんどです。
みなさんも経験ありませんか?急にノイズが含まれた音を出して、嫌な音だなあと思いながら演奏したこと。
音の発信源にノイズを生み出す何かがあるとして、途中からノイズが発生してしまったということは、
「何か変化があった」
と考えられます。
その変化が一番多く見られるのが「音域が上がってきた時」「高音域を出そうとしている時(出している時)」です。
《固定する場所》
そこで先ほどのシングルリード楽器を思い出してほしいのですが、音の発信源であるリードとマウスピースは、リガチャーによって「固定」されています。その状態はどんな音域を演奏していても一定の状態です。
音域が変化する時、リガチャーのネジをキツくしたり緩めたりしているところなんて見たことありませんよね。
これは、トランペット関しても同じことが言えると思います。
トランペットのリード部分である唇、もう少し具体的に言えば、アパチュア周辺にある唇が振動することで音を作り出していますが、この振動する部分は、サックスやクラリネットのように一定の状態(サイズ)をキープしておくよう心がけることが大切なのです。
なぜなら、ここは「音を発生させる場所」であって、「音域を変化させる場所ではない」からです。
「音を発生させる場所」の仕組みが変化してしまったら、それまで出せていた音質ではなくなりますし、ひどい場合には音が出なくなる可能性もあります。それはリガチャーの固定する力に変化が生まれて、マウスピースとリードがずれてしまったのと同じ状態です。
では、トランペットで言うところのリガチャーとはどこでしょうか。
《唇の貼りつき》
ラッパの吹き方ブログでは、これまでも幾度となく、「舌とアゴ」について書いてきました。音域(ピッチ)を変化するために不可欠なこれらのパーツは、低音域に行くと下がり、高音域では舌と上顎の接近によって生まれる小さな空気の通り道で目的の音の高さを出すことができます。
舌やアゴが動けば、その周辺のパーツも影響を受けることになります。
例えば、顔の表面、特にアゴとその周辺の筋肉や皮膚などは、一緒に引っ張られたり戻ったりと忙しい動きを見せます。
もしその動きにマウスピースリムと接している唇の部分までもが持っていかれてしまうと、マウスピースから唇が滑ってずれたり、離れたりしてしまいます。これではリガチャーがない、もしくはゆるすぎる状態です。
そこで大切なのは「マウスピースのリムに唇が貼りついている状態をキープする」という点です。
口の周りがどんなに大きな動きをしていても、マウスピースのリムと唇が貼りついて動かなければ、一定の唇の反応をキープすることができる、いわばシングルリード楽器のリガチャー部分と言えます。
マウスピースはよく、「プレスをしすぎない」とか、ひどい場合には「プレスをできるだけしない」なんてことを言う人もいます。しかし、それは音質や音域コントロールの不安定感を助長することにつながり、体への負担が大きくなります。要するにバテやすいのです。
なぜなら、リガチャーがない状態でサックスやクラリネットのマウスピースとリードの位置を変えないようにする努力をしているのと同じです。口周辺の筋力でなんとかするしかないのですが、あまりにも無理がありすぎですよね。
トランペットも、口周辺の力を強く使って、良い音が出る状態、音の反応が良い状態をキープするなんて、負担が重すぎです。そうではなく、マウスピースのリムと唇が貼りついていれば、もうそれだけで「固定」されているのですから、強い力など必要ないのです。
しかし、プレスもやたらと強くしてしまうのは問題があります。振動する部分を潰してしまうこともありますし、反応が悪くなります。そして何よりも体への負担が大きくなってしまいます。結局のところプレスは強すぎず弱すぎず、なんですね。
《使う必要がないように仕向けていく》
マウスピースと唇が貼りついて固定されている状態であれば、もうその部分に関してはそれ以上考える必要はありません。考えるというのは「意識的にコントロールする」につながってしまうので、息が通過したら音が発生する状態であるならば、ここにはそれ以上求めないので放置しておきます(もちろん、良い音を追求することは必要です)。
ノイズが発生してしまいやすい人は、この「口周辺の力」で音域変化をさせようとする方が多いはずです。
じゃあ、もう今後は口周辺は意識しないで、動かさないようにしましょう!
と言われても、長い間使い続けてきてしまったその「習慣(クセ)」を直すには結構大変です。意識しないようにと意識するというのもなんだかおかしな話ですし。
ですから、こういった場合は
「ほかの部分が大活躍することで、使う必要がないように仕向けていく」
この順序にしましょう。
音域を変化させた時、特に高音域を出そうとすると口周辺に力が入ってしまうのであれば、舌をアゴだけで充分高音域が出せるように練習をすることです。意識すべきは舌とアゴ、そしてその動きに合わせたブレスコントロール。これだけで音域の変化をができるようになれば、わざわざ不安定になること、疲れることはしなくなるはずです。
《警告を聴き逃さない》
ノイズだけでなく、音質が変化した瞬間、音を出すシステムのバランスが変化したからです。
特に、音がくぐもったようなモッサリした音になった時は注意してください。クリアではない音がしている時というのは、唇の振動が充分でない時に起こります。
その理由はいくつかあり、マウスピースのプレスが強すぎたり、体の中の空気圧が高すぎる時なども音の変化が起こります。
しかし、何にせよ、良い音が出ていないということは、何かのバランスが悪くなっている警告です。
最初は自分で納得している音を出していても、気に入らない音に変化してしまったら、すぐに何が原因だったのか、今何をしたかなどを追求し、確認してみましょう。
必死に楽譜を追っている時や、チューナーやメトロノームのことばかり見ていたりと、意識する方向が音色に向かっていない時に音は崩れやすくなります。しかし、音色を一定にキープできない状態でチューナーでピッチをチェックしていても全く意味がなく、練習とは呼べません。
常に良い状態で音を出すこと。これをまず真っ先に意識してください。
《ほかの原因》
音域などが変化した時に発生するノイズですが、最初から、いつもの自分の音質でなかったり、ノイズが常に出てしまう、といった場合は、唇そのものに原因があるかもしれません。
一番よくあるのが「唇の荒れ」です。冬場など特に感想し、ヒビ割れたリードで演奏しているようなものですから、ボロボロな唇では良い音は絶対出ませんね。
また、体調や食生活が悪く、唇が腫れぼったい時もあります。
僕の場合は睡眠不足の時に唇が腫れぼったくて、良い音が出ない経験をよくします。
ということで今回はノイズについて書きました。
ノイズが発生しない演奏をするために一番大切なことは「理想の音色を持ち続ける」ことと「自分の音を客観的に聴く力を持つ」ことです。
奏法というのはあくまでも良い演奏をしている時にこんな使い方をしていましたよ、といういろんな人からの主観的表現を元に作られていることですので、何よりも大切な「音楽をする」ということ「最高のイメージを持ち続ける」ことを忘れず、演奏してください。
それでは、また来週です!
皆様から多くのご質問を頂いておりましたので、今日はそのひとつをご紹介します。(現在は募集しておりません)
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こんにちは。中3で部活でトランペットを吹いている者です。
音に雑音が入る時があるのですが、どのようにすれば直りますか?少し前まで全くなかったので不安です。
雑音が鳴っている時に楽器からマウスピースを放して、マウスピースだけで吹いてもやはり雑音が含まれています。
(メールより一部抜粋、修正)
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このメールが届いたのは今年の1月なので、投稿していただいた方はすでに高校生かと思いますが、当時お送りした返信メールで改善が見られたのか少し気になるところです(お送りしたメールに対して、参考になった、改善した、言ってることがわからないなどのお返事があると、とても嬉しいです)。
トランペットを吹いていて雑音(ノイズ)が含まれてしまう時ってありますよね。
常にノイズが含まれているということはないにしても、一定の音域以上(以下)になると突然ノイズが発生したり、ノイズとまでは言えないけれど、サウンドそのものがあまりクリアに鳴っていないことが悩み、という方も多いのではないでしょうか。
ということで今回は「ノイズ」について書いてみます。
《ノイズが発生している場所はどこか》
まずはじめに知っておきたいことは「ノイズはどこから発生しているのか」。
実際には、その時の状況を見てみないとわかりませんが、楽器そのものに問題がないのであれば一番可能性が高いのは、ずばり
「唇の振動している部分」
です。唇はトランペットを演奏する上での音の発信源です。音を作り出している工場に何か異物の混入があったのでしょうか。工場の機械が不調なのでしょうか。
なぜノイズが発生してしまうのか、考えてみましょう。
《シングルリード楽器を参考にする》
その前に、他の楽器の音の発信源がどうなっているのか考えてみましょう。
吹奏楽やオーケストラ、ビッグバンドなどをされている方には身近な楽器、サックスやクラリネットといったシングルリード楽器は、3つのパーツを組み立てて音を出す仕組みを作り出しています。
ひとつはマウスピース、消耗品であるリード、そしてそれらを固定するリガチャーという器具です。
サックスやクラリネットを組み立てているところを見たことがある、という方は多いと思いますが、マウスピースとリードの位置をとても慎重に組み合わせていますよね。一度音を出して、再度位置を直しているところもみかけます。一度良い位置がきまれば、それがずれないようにリガチャーでしっかりと固定します。
これがシングルリード楽器の音の発信源でした。
《なぜノイズが発生するのか》
話をトランペットに戻します。
多くの場合、最初からノイズが入っていることは少なく、時間の経過とともにノイズが含まれてきたり、何かのアクションがあった時から突然発生することがほとんどです。
みなさんも経験ありませんか?急にノイズが含まれた音を出して、嫌な音だなあと思いながら演奏したこと。
音の発信源にノイズを生み出す何かがあるとして、途中からノイズが発生してしまったということは、
「何か変化があった」
と考えられます。
その変化が一番多く見られるのが「音域が上がってきた時」「高音域を出そうとしている時(出している時)」です。
《固定する場所》
そこで先ほどのシングルリード楽器を思い出してほしいのですが、音の発信源であるリードとマウスピースは、リガチャーによって「固定」されています。その状態はどんな音域を演奏していても一定の状態です。
音域が変化する時、リガチャーのネジをキツくしたり緩めたりしているところなんて見たことありませんよね。
これは、トランペット関しても同じことが言えると思います。
トランペットのリード部分である唇、もう少し具体的に言えば、アパチュア周辺にある唇が振動することで音を作り出していますが、この振動する部分は、サックスやクラリネットのように一定の状態(サイズ)をキープしておくよう心がけることが大切なのです。
なぜなら、ここは「音を発生させる場所」であって、「音域を変化させる場所ではない」からです。
「音を発生させる場所」の仕組みが変化してしまったら、それまで出せていた音質ではなくなりますし、ひどい場合には音が出なくなる可能性もあります。それはリガチャーの固定する力に変化が生まれて、マウスピースとリードがずれてしまったのと同じ状態です。
では、トランペットで言うところのリガチャーとはどこでしょうか。
《唇の貼りつき》
ラッパの吹き方ブログでは、これまでも幾度となく、「舌とアゴ」について書いてきました。音域(ピッチ)を変化するために不可欠なこれらのパーツは、低音域に行くと下がり、高音域では舌と上顎の接近によって生まれる小さな空気の通り道で目的の音の高さを出すことができます。
舌やアゴが動けば、その周辺のパーツも影響を受けることになります。
例えば、顔の表面、特にアゴとその周辺の筋肉や皮膚などは、一緒に引っ張られたり戻ったりと忙しい動きを見せます。
もしその動きにマウスピースリムと接している唇の部分までもが持っていかれてしまうと、マウスピースから唇が滑ってずれたり、離れたりしてしまいます。これではリガチャーがない、もしくはゆるすぎる状態です。
そこで大切なのは「マウスピースのリムに唇が貼りついている状態をキープする」という点です。
口の周りがどんなに大きな動きをしていても、マウスピースのリムと唇が貼りついて動かなければ、一定の唇の反応をキープすることができる、いわばシングルリード楽器のリガチャー部分と言えます。
マウスピースはよく、「プレスをしすぎない」とか、ひどい場合には「プレスをできるだけしない」なんてことを言う人もいます。しかし、それは音質や音域コントロールの不安定感を助長することにつながり、体への負担が大きくなります。要するにバテやすいのです。
なぜなら、リガチャーがない状態でサックスやクラリネットのマウスピースとリードの位置を変えないようにする努力をしているのと同じです。口周辺の筋力でなんとかするしかないのですが、あまりにも無理がありすぎですよね。
トランペットも、口周辺の力を強く使って、良い音が出る状態、音の反応が良い状態をキープするなんて、負担が重すぎです。そうではなく、マウスピースのリムと唇が貼りついていれば、もうそれだけで「固定」されているのですから、強い力など必要ないのです。
しかし、プレスもやたらと強くしてしまうのは問題があります。振動する部分を潰してしまうこともありますし、反応が悪くなります。そして何よりも体への負担が大きくなってしまいます。結局のところプレスは強すぎず弱すぎず、なんですね。
《使う必要がないように仕向けていく》
マウスピースと唇が貼りついて固定されている状態であれば、もうその部分に関してはそれ以上考える必要はありません。考えるというのは「意識的にコントロールする」につながってしまうので、息が通過したら音が発生する状態であるならば、ここにはそれ以上求めないので放置しておきます(もちろん、良い音を追求することは必要です)。
ノイズが発生してしまいやすい人は、この「口周辺の力」で音域変化をさせようとする方が多いはずです。
じゃあ、もう今後は口周辺は意識しないで、動かさないようにしましょう!
と言われても、長い間使い続けてきてしまったその「習慣(クセ)」を直すには結構大変です。意識しないようにと意識するというのもなんだかおかしな話ですし。
ですから、こういった場合は
「ほかの部分が大活躍することで、使う必要がないように仕向けていく」
この順序にしましょう。
音域を変化させた時、特に高音域を出そうとすると口周辺に力が入ってしまうのであれば、舌をアゴだけで充分高音域が出せるように練習をすることです。意識すべきは舌とアゴ、そしてその動きに合わせたブレスコントロール。これだけで音域の変化をができるようになれば、わざわざ不安定になること、疲れることはしなくなるはずです。
《警告を聴き逃さない》
ノイズだけでなく、音質が変化した瞬間、音を出すシステムのバランスが変化したからです。
特に、音がくぐもったようなモッサリした音になった時は注意してください。クリアではない音がしている時というのは、唇の振動が充分でない時に起こります。
その理由はいくつかあり、マウスピースのプレスが強すぎたり、体の中の空気圧が高すぎる時なども音の変化が起こります。
しかし、何にせよ、良い音が出ていないということは、何かのバランスが悪くなっている警告です。
最初は自分で納得している音を出していても、気に入らない音に変化してしまったら、すぐに何が原因だったのか、今何をしたかなどを追求し、確認してみましょう。
必死に楽譜を追っている時や、チューナーやメトロノームのことばかり見ていたりと、意識する方向が音色に向かっていない時に音は崩れやすくなります。しかし、音色を一定にキープできない状態でチューナーでピッチをチェックしていても全く意味がなく、練習とは呼べません。
常に良い状態で音を出すこと。これをまず真っ先に意識してください。
《ほかの原因》
音域などが変化した時に発生するノイズですが、最初から、いつもの自分の音質でなかったり、ノイズが常に出てしまう、といった場合は、唇そのものに原因があるかもしれません。
一番よくあるのが「唇の荒れ」です。冬場など特に感想し、ヒビ割れたリードで演奏しているようなものですから、ボロボロな唇では良い音は絶対出ませんね。
また、体調や食生活が悪く、唇が腫れぼったい時もあります。
僕の場合は睡眠不足の時に唇が腫れぼったくて、良い音が出ない経験をよくします。
ということで今回はノイズについて書きました。
ノイズが発生しない演奏をするために一番大切なことは「理想の音色を持ち続ける」ことと「自分の音を客観的に聴く力を持つ」ことです。
奏法というのはあくまでも良い演奏をしている時にこんな使い方をしていましたよ、といういろんな人からの主観的表現を元に作られていることですので、何よりも大切な「音楽をする」ということ「最高のイメージを持ち続ける」ことを忘れず、演奏してください。
それでは、また来週です!
当ブログの写真・記事等の(全部、一部問わず)無断利用、ネット上(TwitterやFacebookなどのSNSを含む)などへの無断転載を禁止します。
at 06:37, 荻原明(おぎわらあきら), アンブシュア
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2015.05.19 Tuesday
吹奏楽コンクール課題曲2015トランペット解説【まとめ】
みなさんこんにちは!
今年度吹奏楽コンクール課題曲解説が前回ですべて終わりました。
今週は、まとめとして、課題曲という範囲にこだわらず、コンクールやコンサートなど、本番を迎えるにあたって心がけておきたいことや、今の時期まさにとりかかっているであろう「作品を完成させるために大切なこと」を、これまで書いてきた記事をたくさん紹介しつつ進めていきます。
この記事はぜひとも保存版としてブックマークしていただき、何度も読み直してもらえればと思います。
なお、曲ごとの記事リンクは以下の通りです。
////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
【課題曲1】 天空の旅−吹奏楽のための譚詩− 前編 / 後編
【課題曲2】 マーチ「春の道を歩こう」 前編 / 後編
【課題曲3】秘儀 III ー旋回舞踏のためのヘテロフォニー 前編 / 後編
【課題曲4】 マーチ「プロヴァンスの風」 前編 / 後編
【課題曲5】 暁闇の宴 前編 / 後編
課題曲解説【まとめ】※この記事です
////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
《練習というものを考えてみる》
みなさんは毎日、ないし定期的に楽器を吹いていることと思います。それのほとんどが「練習」という名目で行われているのではないでしょうか。本番以外のラッパを吹く時間は大概「練習」と言うのが普通ですよね。そして練習と呼ぶからにはその時間は「高める時間」と位置づけている、もしくは「言い聞かせている」と思います。要するに「あ、遊びで適当に吹いてるわけじゃないんだから!」って感じで。開放的に遊びで吹く時間があっても全然問題ないんですけどね。
話がそれましたが、その練習を呼ばれる時間での「高める」とは何でしょうか。
ただやみくもに楽譜を吹き、教本を吹き、合奏をして、バテて、今日もよく吹いたー!
これではあまり良い練習になっていないと思います。
練習はしっかりと目標、目的を持った上で、それを達成するには何をすべきか考え、実行することが大切です。
そのためにはまず練習(=高める)というカテゴリーを分けてみることにします。
■コンディションを整える
■演奏技術を高める
■音楽的表現力を高める
■芸術的感性を高める
■アンサブル能力を高める
■人間的魅力を高める
このようになるでしょうか。なんか漢字ばかりで堅苦しいですが、ひとつずつ解説していきます。
《コンディションを整える》
現在、トランペット講習会を全4回に渡って開催させていただいているところです(詳しくはこちらをクリック)。そして一番最近の講習会テーマが「ウォームアップと呼吸」でした。ウォームアップの重要性と具体的な内容についてお話ししましたが、人間は体力的にも精神的にも日々バラつきがある生き物です。様々な要因で気分が高揚したり落ちてしまったり。体力みなぎっていたり病気だったり。
もちろん日々の生活習慣でできる限り健康でいる努力はするべきですが、それだけではどうにもなりませんよね。風邪ひくときは風邪ひくし、嫌なことや辛いことが何もない人生なんてありえない。
トランペットは身体を使う行為です。そしてそのトランペットを演奏しているのは「精神(心)」を持った人間です。したがって、どうしてもコンディションにバラつきがあることはしかたがありません(あたりまえなんです)。しかし、そのバラつきを無視してトランペットを吹き始めてしまうと、自分の実力を充分に発揮することができず、できていたことができないために悩み、むやみに身体の使い方を試行錯誤し始めて、その結果さらに調子を崩すという負の連鎖になる可能性があるのです。成長するために練習しているのに、ウォームアップを怠ったことで自分のレベルを下げてしまうのは本末転倒ですよね。
ウォームアップはあなどってはいけません。コンディションを常に安定させたい、いつも楽しく意欲的に楽器を吹きたい、本番で練習の成果を発揮したいと考えるのであれば、絶対に取り入れましょう。
ウォームアップについては過去の記事カテゴリー(複数記事があります)をご覧下さい(こちらをクリック)
また、コンクール前は特に体調や楽器の調子を崩してしまいがちです。バテても無理やり吹くような練習は潰れの原因になりますので、上手に休みを取っていきたいものです。これについては過去の記事「バテる前に休憩を。 」をぜひ参考にして下さい。(こちらをクリック)
《演奏技術を高める》
練習と聞いて真っ先に思い浮かべるのが、この「技術の向上」ではありませんか?
「できなかったことをできるようにする」とか「あるテクニックを確実にできるようにする」行為です。
確かに、この練習は非常に重要で、聴く人に何かを伝えたいと思っても、技術が不足していると伝えることが難しくなってしまいます(楽譜に書かれていることを忠実に再現することが困難だから)。ですから教則本などを使って自分が持っていないテクニックを身につけたり、完成度を高めるために繰り返し吹く練習などをし続けなければなりません(技術の向上に終わりはありません)。
演奏技術が不足している状態を、いわゆる「ヘタ」と呼ぶ人は多いと思います。
確かにミスしたり、音が出せなければ直接的に「ヘタだなぁ」と感じるのはしかたのないことではありますが、「技術」ばかりに傾倒するのも音楽をする上では充分とは言えません。
チューナーの針が±0を指し続ける演奏が素晴らしい音程感を持った人とは言い切れません。
メトロノームのクリック音と演奏が一糸乱れない演奏をする人を「テンポ感がある人」とは言い切れません。
コンクールの練習であったり、コンクールで上位ステージに上がろうと考えているバンドほど、音楽に対する考え方が偏っているように感じます(もちろんすべての団体ではありませんが)。音楽ってミスしたらもう終わりですか?聴くに堪えないダメな演奏ですか?何百回もまったく変わらないプログラムされたような演奏ができることが素晴らしいですか?
音楽は人間が生み出すものです。人間は機械ではないのです。
音楽は本来審査されるものではありません。ここがダメ、あれはダメ(だってピッチが…テンポが…以下略etc.)。こんな粗探しをするために聴くのが音楽ではありません(そんなことして楽しい?)。音楽は批判をするために聴くのではありません。音楽は楽しむためのものです。もちろん、高いところへ向かおうとする意思意欲実行力は非常に大切なこと。それは自分のことであり、周りが意味のない重箱の隅をつつくような指摘なんてするべきではないのです。
良いところを見てあげればいいのです。一緒に楽しめば良いのです。
おっと、つい余計なことを書いてしまいました。次にいきましょう。
《音楽的表現力を高める》
コンピュータに打ち込んだ音楽は絶対にミスをしませんし、定めたピッチやテンポで演奏し続けられますから、ある意味完璧な技術力を持った演奏と言えます。
しかし、そこに感動はありません。完璧な技術に感動する、ということはあると思いますが、それはどちらかと言えば感動ではなく「関心」です。ここでは「心が揺さぶられる」「自分の感情に訴えかけられる」などのダイレクトに心へ突き刺さるものを「感動」と呼んでいます。
感動は時として技術を超える力を持っています。
例えば、幼稚園のお遊戯会でみんなが一生懸命ひとつの曲を演奏している姿や、上手にいかないけれどひとつの物事に必死に努力している姿をみると我々は感動を覚えます。
園児たちの演奏技術は、プロに比べれば明らかに劣ります。しかし、その一生懸命な姿に心を打たれ、「とってもよかった!」「感動した!」という気持ちになることがあります。
音楽はまずそうでなければならないと思います。強い気持ち、心、真摯に向き合う姿。
演奏者たちはその姿勢で、音楽を使って伝えたいこと、訴えたいことを表現するのです。
しかし、演奏者が強い気持ち、訴えかけたいことをいくら持っていても、それを伝える能力がなければ理解してもらえません。
そこで技術が必要になります。
技術は「言語能力」のようなものです。たくさんの言語を扱える人のほうが世界中の人たちと短時間で深い交流をしやすいのと同じように、演奏でも相手に何かを伝えようとした時、演奏技術を多く持っているほうがより伝えやすくなります。
音楽でも、基本となる表現方法、こういった演奏の仕方をすると美しく感じるとか、ある程度のお約束(その方法は無限)がありますので、それを学ぶことが大切です。
技術と表現とはそういった関係であるべきです。技術だけが高まっても心がなければ機械と同じです。
《芸術的感性を高める》
作品の持っている力を読み取り、自分の感情もそこに込め、聴く人に的確にメッセージを伝えるためには「芸術的感性」を養う必要があります。芸術的感性というととっても難しそうですが、そんなことはありません。
簡単に言えば「何かに感動できる柔らかい心」を持っていてほしいのです。
例えば、
動物を見て、触れて「かわいい!」と素直に感じ、笑顔になったり
褒められて「嬉しい!」と喜んだり
美味しいものを食べて大喜びしたり
雪を見て「きれい!」と感じたり
悪事をはたらいた人(フィクションでも)に「許せない!」と憤ったり
恋愛小説を読んで「素敵!」と思って主人公を自分に置き換えてニヤニヤしてみたり
こんな感じ。自分の心を柔軟にしたいのです。
心が強く揺さぶられると、誰かに共感してもらいたくなったり、伝えたくなったりしますよね。
その気持ちが音楽に含まれることが大切なのです。
芸術という言葉は難しそうに感じますが、言い換えれば「心を伝えること」です。
自分の心が豊かであれば、相手の心や何を伝えたいのかも少しずつ理解できるようになります(憶測も含む)。
そうしていると、人でなくても絵画や彫刻、音楽などの芸術に対して、スポーツなど表現をしている人に対してなど、あらゆるものに心が揺さぶられるはずです。
この感性はすべての物事に対して無理矢理感じる必要はありません。何も感じないのは(今の自分が)興味を持てないことなので、悩む必要はありません。何の良さも感じない音楽や絵画があってもいいのです(ほかの人がどんなに熱狂的になっていても共感できないことは多々あります。自分の心に素直になって、決して無理して合わせる必要はありません)。
しかし、食わず嫌いはもったいないです。とりあえず一回は触れてみて、そこで判断したいものですね。だからジャンルにこだわらずいろんな音楽を聴いてみて下さい。今まで知らなかった音楽に強い感動を覚えるかもしれません。
そして、昔は関心がなかったのに、月日が経ったら興味を持つようになることもあります。恋愛をしたらそれまで無関心だったものに強い関心を持つようになった経験はありませんか?
昔、「ぼのぼの」というマンガに書いてありましたが、いつもは自分がまったく関心を向けていなかった草や木、石などが、いざ自分が病気で苦しんでいる時にはそれらは僕に無関心だと書いてあり、なるほどな、と関心しました。自分の心境や環境の変化で関心を持つことや範囲が刻々と変化しているということですよね。ですから、一度放り投げたことでも、時間をおいて触れてみたり、経験してみることをお勧めします。
昨年の記事になりますが、課題曲2「勇気のトビラ」で「楽しさ」について触れています。この話につながることですので、ぜひ読んでみて下さい。
■吹奏楽コンクール課題曲2014トランペット解説【2.行進曲「勇気のトビラ」/高橋宏樹】その1
《楽しさの2つの意味》《楽しい楽曲》《反対を考えてみる》
《アンサンブル※能力を高める》
※ここでいうアンサンブルとは、ほかの人と一緒に演奏することを指しており、室内楽について言っているわけではありません。吹奏楽やオーケストラもアンサンブルのひとつです。
管楽器の多くは同時に1音しか出せません。ですから、複数人で音楽を作り上げることが基本になります。
そうなると、演奏者どうしのアンサンブル力を練習で身につける練習時間がどうしても必要です。
しかし、ただテンポを決めて、それぞれの割り当てられた楽譜を同時に演奏するだけでは本当の意味でのアンサンブルにはなりません。
これはまるでタイミングを合わせて台本を読んでいるだけの演劇です。観るほうはまったく面白くないと簡単に想像がつくのに、音楽だとこれをやってしまっていることが意外に多いのです。
もちろん、アンサンブルをするにはまず自分が担当する楽譜がきちんと演奏できるようになった人どうしの集まりであることが絶対条件ですから、順序として合奏は様々な練習の中でも後ろのほうになりますが、自分のパート譜が完璧に演奏できるようになったから合奏も完璧!ということにはなりませんので注意しましょう。
アンサンブルも経験、コツ、練習が必要ということです。
《人間的魅力を高める》
これは音楽をすることに限りませんが、人間的魅力を強く持った人ほどアンサンブルが上手で、表現力が豊かだと感じています。
特にアンサンブルは「相手を信じる」ことが非常に大切で、疑心暗鬼になっていては崩壊する一方です。
若い人が特に勘違いしやすいですが、八方美人がイコール人間的魅力が高いとは決して思いません。誰とでも仲良くできる力は素晴らしいですが、自分を押し殺してでも相手に合わせようとする姿勢ではアンサンブルは絶対に成立しません。主張はする。しかし相手も尊重する。そんな接し方ができる人が人間的魅力を持っている、と僕は思っています。
そして自分に自信を持っていることは、相手にアピールする力が強く、共感してもらいやすくなります。日常は別としても、演奏中は過剰なくらい自信満々のほうがうまくいくことは多いです(先ほども言いましたが、ただのワガママな人になってはいけません)。
感性が豊かで、自信に満ち溢れてる優しい心を持った人間になりたいですね。(←ホント、そうなりたい…心の叫び。自戒)
このように、練習といってもいろいろなものがあり、トランペットを吹くことだけが練習ではありません。部屋に引きこもって、外界と触れずに音楽を演奏することはできませんから、たくさんの芸術、たくさんの人間、たくさんの考え、たくさんの感情、たくさんの経験…生活すべてが芸術性を高めてくれます。
コンサートホールでの演奏会、オペラ、バレエ、美術展、演劇、歌舞伎、落語、スポーツなど、なんでもいいですがたくさんの「表現している人間」を目の当たりにすると、何か自分に変化が起きる可能性があります。ぜひ積極的に向き合ってみて下さい。
《過去の課題曲まとめ記事》
さて、今回のような課題曲解説最後のまとめ記事は、昨年、一昨日にも書いています。課題曲ブログ記事はどうしてもコンクールが終わると過去のものになってしまい、読まれなくなってしまうのですが、われながら良いこと書いているので、ぜひ読んでいただければと思い、こちらにリンクを貼っておきます(タイトルをクリックするとリンク先にジャンプします)。
吹奏楽コンクール課題曲2013トランペット解説まとめ【合奏練習〜本番に心がけておきたいこと】
《長時間の練習時に心がけたいこと》
■ウォームアップの必要性/調子が悪かったら/練習に飽きる
《合奏時に心がけておきたいこと》
■合奏練習時のマナー/複数のコーチがいる場合
《本番時に心がけておきたいこと》
■こまめに水分補給を/やはりウォームアップ/緊張/コンサートホールでの演奏/審査結果、というもの
吹奏楽コンクール課題曲2014トランペット解説【まとめ】
《コンクールという場での課題曲》《楽譜から見えるもの》《音楽を作る順序》《潰れないために》
ということで、今回をもちまして「吹奏楽コンクール課題曲トランペット解説2015」を完了させていただきます。
みなさんの練習のお役に立てれば幸いです。
それでは、来週からはまた通常のブログに戻ります!
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at 08:28, 荻原明(おぎわらあきら), 吹奏楽コンクール課題曲2015
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2015.05.12 Tuesday
吹奏楽コンクール課題曲2015トランペット解説【4.マーチ「プロヴァンスの風」 / 田坂直樹】後編
みなさんこんにちは!
さて3月から始めてまりました課題曲トランペットパート解説も、今回ですべての作品について書いたことになります。それぞれの記事リンクは以下からどうぞ。
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課題曲解説【はじめに】
【課題曲1】 天空の旅−吹奏楽のための譚詩− 前編 / 後編
【課題曲2】 マーチ「春の道を歩こう」 前編 / 後編
【課題曲3】「秘儀 III ー旋回舞踏のためのヘテロフォニー」 前編 / 後編
【課題曲4】 マーチ『プロヴァンスの風』 前編 / 後編(この記事です)
【課題曲5】 暁闇の宴 前編 / 後編
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で、来週ですが、もう1回だけ課題曲解説のカテゴリーの中で書きます。
練習の仕方や合奏について、本番について、過去の記事をリンクさせながらコンクールや本番に向かっての進め方の参考になれば、と思っています。
ということで、マーチ「プロヴァンスの風」の解説を始めます。後編は曲を冒頭から順に書いていきます。
【冒頭】
前回の記事でも書きましたが、この作品である「プロヴァンス」という言葉に惑わされないようにしてください。完全に場面はスペインです。情熱的で、血の気の多く、陽気なのにどうか陰鬱な色も持ち合わせているような、、、カルメンを連想してしまうからそうなってしまうのかもしれませんが、みなさんもタイトルのことはこの際無視して作品そのものの持つカラーや世界観を自由にイメージして演奏してください。邪魔なので紙を貼り付けてタイトルを消してしまいましょうか。
さて、演奏についてですが、この曲に限らずどんな作品にも共通する「演奏者が自覚しておくべきこと」があります。それは、
・短い音は長い音より聴こえにくい
・低い音は高い音より聴こえにくい
という点です。この自覚なしに演奏してしまうと、細かい動きや低い音が埋もれ、高い音や長い音ばかりがお客さんの耳に届きます。どんなリズムもメロディもすべて聴こえるのが当たり前なのですから、主観的に(自分の耳に)「楽譜通り聴こえている」ではなく、客観的に(お客さんの耳に)「楽譜通り聴こえている」演奏を目指しましょう。
そのためには、意図的に細かい音や低い音は、よりハッキリと演奏する必要があります。
これを僕は「聴衆とのギャップ」と呼んでいます。
ではこの冒頭部分ではどこに気をつければ良いでしょうか。
わかりますか?16分音符が2つ連続している箇所が注意すべきところです。
この場面では、8分音符にスタッカートがついていますから、結局のところ全部16分音符くらいの音価にはなるのですが、連続している細かいリズムは、他の音に比べて聴き取りにくいのです。
要するにダブルタンギングをいかにハッキリ吹くかがこの場面では重要になってきます。
また、これも前回の記事で書きましたが、休符を活かした演奏を常に心がけてください。休符は「音を出さない箇所」「休める場所」「息を吸う場所」と軽く捉えず、休符が存在することによって音楽ががどうなるのか(逆に休符がなければどんな印象になるのか)を理解することが大切です。
そして冒頭部分の最後7つの音に山型のアクセントが付いています。言いたいことはわかりますが、これの最初の3つの音(3小節目3拍目裏〜4拍目)を表現するのはとても難しく、流れの中に組み込みにくい、というかしないほうが良いと感じます。
僕の演奏表現力が未熟で、引き出しがないからそう思うのかもしれませんが、どうしても無理があるように思えてしかたありません。
なので、僕としては、
「メロディの最後(4小節目)に向かっていく力強さと言い切る語尾」
これがあれば充分だと思うのです。突き進めーー!!だけでよくないですか?
わざわざ3小節目の山型のアクセントを表現すると、音楽のベクトル(感覚的スピード)がどうしてもそこで威力を失ってしまうように感じるのです。
みなさんはどう考えますか?
なお、4小節目のほうは「キメのポーズ(死語?)」といった存在で、山型のアクセントがしっくりきますから、ここはかっこよく吹きたいですね。
【練習番号B 5小節目アウフタクト〜】
このメロディに関しては、練習番号Eのところで詳しく書きます。
【練習番号C】
吹奏楽でよく出てくる、いわゆる「裏打ち」と呼ばれる部分で、ハーモニーとリズムを担当しています。ということは、主旋律は他にいるということ。
よくあるコンサートマーチの形式通り、ここは中低音楽器がメロディを担当していますので、それを邪魔しないように演奏したいものです。
そのためには「音の面積を使いすぎない」ことを心がけます。
トロンボーンがメロディを気持ち良く吹いているのに、その前に頑丈な壁を作ってしまったら迷惑ですよね。視界不良でお客さんもストレスが溜まります。
だからと言って、演奏しない、もしくはコソコソしていてよく聞き取れない(結果としてお客さんに聴こえない(聴こえにくい)ので同じ)のもダメです。存在はしっかりしていて、なおかつメロディを邪魔しないためには
「音を硬質にし、スマートに吹く」
ことが大切です。ただし、硬いといっても、奏者の体がガチガチになっているわけでもありませんし、作品を壊すような硬いアタック音が欲しいわけでもありません。あくまでも音楽的に「硬い素材をイメージさせるサウンド」で演奏する、ということです。
音を短くしようとして「音の中身」がまったくない、ピーナッツの殻のような演奏にならないよう、注意してください。どんなに短く吹いても、それが何の音なのか聴く人がわかるようでなければ、ハーモニーは作れません。
裏打ちは単にリムズだけでなくハーモニーも担当している、と先程書きましたが、それを理解しながら演奏していれば、おのずとどのような演奏をすればいいのか見えてくると思います。
【練習番号C 4小節目】
そしてこの「裏打ち」の最後の小節にはデクレッシェンドが書いてあります。
デクレッシェンドが書いてあると、「あ、弱くしなきゃ」とまず思うはずです。しかし、単に「デクレッシェンド=だんだん弱く」とだけ考えていると、とても機械的で無機質なものになりがちです。
しかも機械的作業の感覚を持ってしまうと、音楽は表現しずらい(なんでデクレッシェンドしなきゃいけないのかよくわからない)ので、結果的にうまく演奏できないのです。
ですから、こう考えましょう。
「デクレッシェンドをすることでどんな雰囲気になるのか」
「デクレッシェンドを無視したらどんな雰囲気になるのか」
これをイメージしてください。「デクレッシェンド無視」は、実際に演奏してみましょう。
結果、「作曲者はこんな表現を求めていたのか(憶測含む)」
がわかるはずです。それが例え作曲者の本意でなくても構いません。今はデクレッシェンドを音楽的に表現することが目的ですので。
ということで、単にデシベル的に弱くするのではなく
「語尾を丸く終わらせる」
で良いと思います。後に続く場面のオーケストレーションがとても静か(情熱的な印象は変わってない)なので、そこへ自然に流れていけるグラデーションが表現できると良いですね。
ちなみに、練習番号Cの5小節目からの木管中心の場面ですが、雰囲気が気持ち良すぎてテンポ自体が落ちてしまう可能性が高くなります。それはメトロノーム的テンポが遅くなっているというよりも、フレーズのベクトル(推進力)を落とせてしまえる(テンポを揺らして表現できてしまう)薄い楽譜の書き方がされいるからだと思います。
静かなシーンは落ち着いているもの、という心の中にある固定観念がますますそうさせていると思うのですが、静かであっても、それは表面的なだけであって、心の中は熱く燃えたぎっている場合もありますよね。
この場面も、決して心が落ち着いてのんびりしているわけではないと思うのです。したがって、ユーフォニアムやオーボエにはぜひ静けさの中に燃えている情熱を表現してもらいたいですし、そのためにはトランペットをはじめとしたデクレッシェンド組の演奏が、弱々しい語尾からのバトンタッチにならないようにしなければなりません。
音楽はつながりあっていますから、その前に何があったかで影響を受ける場面がとてもたくさんあります。自分の出番が終わったからと言って、音楽が終わったわけではありませんから、自分の出番の最後は次の人にバトンタッチをする場面であるということと、そのバトンタッチの仕方で次の演奏も変わっていく(影響を受ける)ということを自覚して合奏に臨んでください。
これが理解できるようになると、アンサンブルがより楽しくなります。
【練習番号E 〜フレーズの作り方と音質に対する考え方〜 】
主旋律がきました。と言ってもトランペットのソロではありません。非常に多くのパート(すべて木管楽器)が一緒にメロディを吹いているので気をつけましょう。ちょっと気を抜くと、どんどん大きく吹きたくなってしまうのがこの曲の特徴です。
さて、この作品に限らずメロディを演奏する際に注意して欲しいことがあります。それが「フレーズ感を持って歌う」ということ。テンポ(メトロノーム)と音程(チューナー)ばかり意識していると、フレーズ感は生まれません。
フーレズとは、いわゆる「横の流れ」です。
日常生活で、会話をしている時や、本を読んでいる時、自然と「ここからここまでひとかたまりで読みたい」範囲が出てくるはずです。音楽のフレーズも同じものと考えてください。
「音符ひとつ」を吹くことは、会話での「発音ひとつ」にあたります。発音ひとつ、ないしは複数の発音を無機質に並べても相手に意思は伝わりませんね。たとえその発音がどんなに美しかったとしても、心には響かないのです。
音楽もまったく同じで、単なる音符の羅列では聴く人の心に届く演奏はできません。
もし楽譜を見て、フレーズがどこからどこまでなのかわからない場合は、声に出して何度も歌ってみると見えてくると思います。理屈っぽくならずに自由に歌ってみてください。
[フレーズ感を持って演奏するための練習方法]
フレーズを演奏している最中に、前に突き進む威力(これを「ベクトル」と呼んでいます)が弱くなったり、なくなったりすると、不本意なところで分断されてしまいます。そうならないためにも、まずはテンポを落とし、大きなフレーズのひとかたまりをスラーで演奏してみましょう。休符があっても音を切りません。
大きなスラーで演奏すると、その間は音を途切れさすことができませんね。要するに息の流れが止まらない(推進力を持って突き進んでいく)ようになります。その感覚がフレーズの原型です。これを失わないようにこころがけて、楽譜に書いてある通りのテンポ、アーティキュレーションで演奏してください。そうすることで、例えスタッカートが続くメロディであっても、フレーズ感を失わずに演奏をすることができます。
[音の頂点とフレーズの頂点は必ずしも一致しない]
そして練習番号Eで注意したいのは、「音(ピッチ)の頂点をフレーズの頂点にしない」ということです。音(ピッチ)の頂点は体の使い方から見ると、フレーズの中で身体に一番圧力がかかる部分ですので、フレーズとしても一番圧力をかけたくなりがちです。しかし、音の高低とフレーズの頂点は必ずしも一致しません。
例えばこの部分でいうと、練習番号E 1小節目の最後の音(1st F音、2nd D音)が音(ピッチ)としての頂点ではありますが、フレーズの頂点は、その次の音である2小節目のアタマにあると思います。この箇所で最高音を頂点にしてしまうと、2小節目がすべて「音を抜く」ように意識してしまいがちです。それではフレーズの威力は落ちてしまい、次のフレーズに入る時、またわざわざアクセルを踏まなければならなくなってしまいます。
新しいフレーズが始まるたびにいちいちアクセルを踏まれると、聴いている側としてはとても疲れてしまい、飽きられてしまいますので、注意しましょう。
[木管楽器と音をブレンドするためには]
また、アンサンブルをする上で、場面によって(指揮者の意向によって)「トランペットが突出して聴こえる(トランペットがリードする立場にある)」もしくは「他の楽器とバランスが取れている(音がブレンドされている)」のどちらかを要求されることが多いと思います。
この練習番号Eの部分は、きっと多くの指揮者が「木管楽器とのブレンド」を望むことでしょう。木管楽器に比べればいくらでも大きな音を出せてしまう金管楽器は、バランスの良い演奏する時に、何に心がけて演奏すればいいのでしょうか。
ブレンドをするために「トランペットの音量を抑える」と考えてしまう方も多いかもしれません。
結果的には音量が出過ぎないように心がけることは確かに大切です。しかし、抑えるというイメージが自分の音や主張までもを抑さえ込み、結果的に「コソコソする」になってしまう場合がとても多く、
「トランペットも一緒に演奏しているようだけど、コソコソしててよくわからない」
という存在になってしまうのは良くありません。
したがって、こういったバランスを求められた時にはこう考えましょう
「自分が演奏している時、他の楽器の音が(自分の耳に)聴こえているか」
これを守っておけば基本、大丈夫です。客席にもトランペットの音も聴こえるし、他の楽器を潰してしまうこともありません。アンサンブルでの「ブレンドする」というのは、コーヒーにミルクを足したらカフェオレになりました、といったような全く新しいものに変化するのとは違い、それぞれの楽器が持つ音色がすべて良いバランスで聴こえている状態だと考えてください。美味しいものを混ぜたサラダと言った感じでしょうか。
あともうひとつ心がけたいのは
「音量を抑える」ことと「音質が変化する」ことはまるで違うということです。
例えば、「大きな鉄の塊」で演奏したら邪魔と言われたから、「小さい綿」にしてみた、というのは規模だけでなく質までも変わってしまいます。それでは、元々作品の持っているイメージ(「らしさ」)や、自分が表現したかった音色までもが変わるので、その行為はふさわしくありません。
このような場合は大きな鉄の塊から「小さな鉄の塊」に規模を小さくし、質は変えないほうが良いのです。pというダイナミクスを要求されていても、優しい時もあれば激しい時もある、ということです。イメージから生まれる表現ば無限なのです。
この箇所より少し前から、自分の演奏を録画してみたので、フレーズ感について特に意識して聴いてみてください。
【練習番号F Trio 2小節目/3rd】
突然3rd+Trbの3rdでソロ的シグナルを演奏します。意図的に3rdに目立つ部分を吹かせようと書いていますね。教育的配慮?コンクールというステージだから?なんにしても、3rdは気が抜けない場面です。
単純なメロディではありますが、気をつけてください。先ほども書きました。
・短い音は長い音より聴こえにくい
・低い音は高い音より聴こえにくい
この部分は、「均一に吹いている自覚」を持っているだけだと、絶対に16分音符2つの音が聴こえず、2分音符ばかりが出てきてしまいます。それは絶対に避けたいので、意識的に16分音符をハッキリ吹きましょう。ポイントは演奏直前の8分休符です。これを「力を溜める、ストレスを溜める時間」として意識し、使いましょう。
しかし、力を込めてダブルタンギングをしてしまうと音楽の流れを崩してしまいますし、ミスをする可能性も高いですから、
「滑舌良くダブルタンギングをする」
という気持ちで吹いてください。もちろん、3rdトロンボーンと一緒に練習することもお忘れなく。
基本的には3rdトロンボーン=バストロンボーンですから、音の立ち上がりや音質、圧力が全然違います。ぜひ客観的に聴いてくれる人を置いて、ステージと客席でどのくらいギャップがあるのか、そしてバランス良く演奏するにはどうしたらいいかを沢山練習して「1stに隠れてゴニョゴニョしているだけの3rd」みたいに思われないよう、ソリスティックにかっこよくアピールしてください。下のパートを吹いている人のレベルが高いと、バンド全体のクオリティは劇的に上がります。
【練習番号G 5小節目アウフタクト/1st】
1stトランペットがメロディの途中だけ参加します。これをどのように考えるかは指揮者次第です。例えば立体的にしっかり聴こえさせる演奏にするか、音質、音量の強化として参加させるだけか(フレーズのピークの場所だけ演奏しているので)、もしかすると、作曲者の教育的配慮、コンクール課題曲だからこそ書き足したという可能性もあります(オーケストレーション的にはあまり意味がない)。
よくわかりませんが、僕だったらmpですしトランペットの柔らかいサウンドがきちんと聴こえつつ、バランスを崩さないように吹いてもらうと思います。書いてあるからには存在を無視するわけにいきませんからね。
演奏者は、練習番号Gに入ってから、ただ単に長休符を「1,2,3,4,...」と数えて入ってくるのではなく、メロディの最初から一緒に演奏しているつもりで歌っていて下さい。そうすることで、自然な流れで参加することができます。「唐突に出てきた謎のトランペット」にならないように注意しましょう。
それにしても、Trioから練習番号Gに入る時の転調はすごいですね。まるでカラオケの演奏中、リモコンでキーを変えたみたいな印象を受けます。なんでもアリだなぁ。和声学ってなんなんだろうな(ひとりごと)。
[ホルンと低音楽器の方へ]
トランペットと直接関係ありませんが、練習番号Gからの伴奏が異常にシンプルでスッカスカなのでテンポが緩む可能性がとても高いです。この場面に入った瞬間、アンサンブルが崩れる可能性がありますから、「楽譜の持っているリズムで奏者それぞれのテンポ感を崩されないように、それぞれの音符の中身、ベクトルを常に前向きに演奏するようにして欲しいと思います」と、ホルンと低音楽器の方々に伝えておいて下さい(笑)緩やかですがシンコペーションなんです。
【練習番号Hアウフタクト】
メロディきたー!出番きたー!と勇み足にならないで下さい。あくまでも mf です。バンド全体のバランスを重視して下さい。
どんな曲にも通用するわけではありませんが、ダイナミクスは、自分自身の音量という解釈だけでなく「自分(トランペットパート)とバンド全体とのバランス」についても考えることができます。例えば、pは他のパートが主導権を持っていると意識し、mpやmfだったらバンドとの調和を意識し、fであればトランペットが先導するように演奏し、ffなら突出した目立ち方ができるように演奏するなど。もちろん作品によっても違いますが、そういった「基準」を持っておくことは決して悪いことではないと思います。
この箇所は吹きやすい音域である反面、鳴らしにくい(鳴りにくい)ところでもあります。
特にこのメロディは最初に上に行った後、下がるという流れの繰り返しなので、メロディ後半がゴニョゴニョしないよう、意識的に低音域をしっかり主張するように演奏しましょう。そうしないと高い音ばかりが飛び出て聴こえてしまいます。
[3rdだけがハーモニー]
なお、3rdが担当している動きは、リズムこそ主旋律と同じですが、同音の連続だったり、1st,2ndがユニゾンで3rdだけハーモニーの状態がほとんどです。なので、主旋律(1stパート)も演奏してみて、どのような動きなのか理解した上で自分の担当する3rdを演奏してみましょう。バンド全体とのバランスも、どのくらい主張すると良い響きになるのか、研究してみましょう。
【練習番号 I アウフタクト】
このメロディを聴くと、A.リード作曲「第二組曲」終曲「パソ・ドブレ」のトランペットソロを思い出します。パソ・ドブレはスペインの闘牛とフラメンコのダンスだそうで。もう「プロヴァンス」はどこへ行ってしまったのか。
0:21あたり
ともかく、ここはかっこよく吹きたいですね。ここで注意して欲しいのは、「3連符」と「8分音符+16分休符+16分音符(いわゆる付点音符)」のリズムの違いをはっきりと出せるかです。
いわゆる付点のリズムは、どうしても三連符になりがちなので、厳しめに演奏したいところです。過去の記事で詳しく書いてあるので参考にして下さい。
「付点音符の吹き方」
いかにもなファンファーレで、トランペットのためにあるような旋律ですが、ここも勢いをつけすぎないようにしましょう。f(フォルテ)1つです。フォルテシモではありません。その後に続くホルン+クラリネットの同じフレーズを考えると、圧倒的にトランペットが音量と圧力で勝ってしまいますから、そのバランスを保つためにも音量には注意したいところです。
また、今まで出てこなかった新しいメロディなので、それほど気合を入れて主張しなくても聴く側は新鮮さを持って受け止めてもらえるはずです。
それに、こういった動きは、吹きまくりたい気持ちが空回りすればするほと音を外しやすくなります。どちらかと言えば丁寧に美しく響かせるイメージを持っていたほうが良いでしょう。
この箇所に限ったことではありませんが「タイ」のうしろはどうしても引っ張って(時間をかけて)しまいがちです。早めに切り上げるように心がけて下さい。
タイについては過去の記事「タイの吹き方」を読んでみて下さい。
練習番号 I の3小節目は、ホルンにバトンタッチする箇所ですから、二分音符を抜かないように、音価通り最後までしっかり音を張って受け渡して下さい。
練習番号 I の7小節目も、付点のリズムと三連符(4拍目)の違いがわかるように演奏しましょう。
【練習番号J 1小節前〜】
rit.があってからの、最後のまとめに入る部分です。
どこも同じですが、指揮者の動き(出してくるテンポ指示)にそれぞれの奏者が合わせていくのではなく、「前からの流れ」に乗っていくように心がけましょう。
この場面では2〜3拍目のホルン全員ユニゾンによる強烈グリッサンドを指標にするとわかりやすいでしょう。
また、rit.は「だんだん遅く」ですから、その文字が書いてあるところから離れれば離れるほどテンポは遅くなり、a tempo(もしくはそれに代わる何か)まで効果は続きます。ですから、トランペットが吹く練習番号Jアウフタクトが一番テンポとしては引っ張られる箇所である、ということを忘れないで下さい。ホルンよりも遅いテンポなんです。
ちなみに、rit.と書かれているところは、「そこからだんだん遅く」なのですからまだテンポ変化がありません。どうしてもrit.という文字が目に入ると、もうその場所からいきなり遅くしてしまわないよう、注意して下さい。これはクレッシェンドやデクレッシェンドにも言えることです。
そして、rit.のストレスが解消された練習番号J以降は、フレーズの持つ前に進む力(ベクトル)も今まで以上に強くなります。楽譜には書かれていませんが、人間が持つ感性としては、それが普通であると僕は思いますので、終止線に向かってまっしぐらに突き進みましょう(テンポが走るのとは全然違います)。
そしてここも1st,2ndが同じ主旋律を担当し、3rdがハモるオーケストレーションをしていますが、バランス的にはやはり3rdの支えが欲しいところです。良い響きで聴こえるよう、練習を積み重ねて下さい。
ということで課題曲4を冒頭から順を追って解説してきました。
これがすべてではありませんが、どこか少しでも参考にしてもらえれば幸いです。
すべての課題曲解説が終わりましたが、冒頭で触れたように、もう少し課題曲解説という名前でいろいろとまとめ記事を書いていきます。
それでは、また来週!
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at 07:05, 荻原明(おぎわらあきら), 吹奏楽コンクール課題曲2015
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2015.05.06 Wednesday
吹奏楽コンクール課題曲2015トランペット解説【4.マーチ「プロヴァンスの風」 / 田坂直樹】前編
みなさんこんにちは!
ゴールデンウィークで曜日感覚が麻痺して昨日が火曜日だったことをすっかり忘れておりました。申し訳ありません。
ということで1日遅れのアップです。
吹奏楽コンクール課題曲2015 トランペットパート解説もついにあと1曲になりました。
去年までは「そろそろ始めようかな」とのんびり構えていたら、最後の曲を書く頃にはコンクールが始まっているという状態になってしまい、あまりの計画性のなさを反省していたものでした(それを2年続けてやった。学習能力がないですねぇ)。
ということで最後の曲は課題曲4 マーチ「プロヴァンスの風」です。
いろいろリサーチしてみると、この曲を演奏する団体が一番多いような気もします。課題曲2かもしれません。
迫力(オーケストレーションの厚み)も、曲想もわかりやすさがありますよね。ある程度「歌う」ことに関しても制約が少なそうですし。
《タイトルについて》
「プロヴァンス」というタイトルなのに、思いっきりスペイン風に始まるという不可解さ。何がどうなっているのかわからないままツイッターでそのことをつぶやいたら親切な方が、作曲者本人がそのことを言っていると教えてくださり、早速「すいそうがく」のバックナンバーを読みました。
ざっくり言うと「プロヴァンス」という言葉の響きがおしゃれだったからだそうです。
なんだそりゃ!
僕は結構最近まで、タイトルというのはその作品を象徴している重要な存在だと思っていました。もちろん、タイトルの持つ意味や、何を題材にしたかをストレートに表現していたり、音楽の形式を教えてくれる場合がとても多いのは事実です。しかし、今回のように「なんとなく、そんな雰囲気だったから」的なタイトルのつけ方をされていると、そんなに重要性を持って受け止めなくてもいいのかもしれないな、と感じるようになってしまいます。
それこそ吹奏楽部でラッパを吹いていた中高生の頃はタイトルひとつひとつに果てしなく強い意味を持たせようとして、調べられる限り調べてみたり、タイトルから受けるイマジネーションをどんどん膨らませてみたりしたものです。A.リード作曲のシェイクスピアを題材にした曲を演奏するとなったら、図書館で本を借りてきて読んだり、合唱コンクール(学校行事)で歌うことになった作品の元になっている民謡のオリジナルやその地方の情報をできる限り手に入れたりしました。熱心ですね、過去の僕。
それが本当に必要だったか、正しかったかは別として、結果的にいろいろな知識を得られ、「想像する力」を強く持てるようになったと感じます。
ですからみなさんも、楽譜に書いてある音符をただ並べるだけの練習にならず、その作品の背景にあるものはどういったもかを調べてみるのは大切だと思います。そのような「楽器を吹かない練習時間」も必要だと思います。
今はインターネットがあるので調べたらすぐに情報を得られてうらやましいなと思う反面、そこに書かれた内容が本当に事実かどうかを検証することが必要ですし、見極める力や、鵜呑みにしないで時には疑うことも必要です。
まあでも、とりあえずこの作品に関してはタイトルから得られる作品情報はない、と思っていいかもしれませんね(中間部は作曲者による「プロヴァンス」の勝手なイメージだそうです。民俗的なことは一切関係ないそうです)。タイトルに意味はない、と知ることができたのが収穫だった、ということで。
《楽譜に書かれていないことを読み取る》
さて、そんな課題曲4ではありますが、演奏を聞いたり吹いたりしていると、イメージはしやすいですよね。どこかで聴いたことのある旋律が流れてきたり、場面ごとの雰囲気も明確です。
ですから、ぜひみなさん自身が感じた自由なイメージをどんどん持ち込んで、この作品を演奏してください。
楽譜というのは単なる「情報が書かれた紙」です。ここに書かれているのは、作曲者がイメージした「音の高低とリズム、テンポ」と「ほんのちょっとの文字(楽語)」といった最低限の情報でしかありません。楽譜は、書き方の決まりや制約が多いのですが、しかしそうすることで世界中の誰もが同じ情報を得ることができる素晴らしいメリットがあります。しかし、作曲者は表面的なその音の高低、長さ、リズムだけを世界中の人に発信したかったわけではありません。書かれた楽譜には、目に見えない作曲者の「想い」や「願い」が込められています(多分)。
ですから、楽譜に書かれた情報を正確に再現するだけだったり、その情報を正確に演奏するための練習(メトロノームを使ってできるだけ正確なテンポで演奏しようとか、チューナーを使って一音一音狂いのないピッチで音を並べようとか)をしているだけでは、そのクオリティがいくら上がっても、作曲者が込めた心を表現することはできないのです。
そこで私たち演奏者は「作曲者は、どんなイメージを持ってこの作品を描いたのか、作曲者はこの作品を通して何を伝えたかったのか、作曲者は何を伝えたかったのか」、情報を手に入れ、イメージすることが必要です。そのイメージが正しいとか間違っているとか、そういうことではなく、イメージを演奏に込めることが必要です。
しかし「イメージなんてできないよ」という方、多いかもしれません。イメージというのは、考えて生み出すものではないので、しかたないとも言えます。しかし、本当にイメージが皆無である、ということは実際のところめったにないはずです。見えていない、気付いていないだけで、頭の片隅には何らかのイメージがあるはず。イメージは少しでも持つことができれば、それを膨らますことはできます。ですから、まずは自分の心に正直に向き合ってください。
内容によってはちょっと恥ずかしいな、と感じることもあるかもしれませんが、別に誰かの前で声高らかに「私はこんなイメージなのです!」と言葉で発表するわけではありませんから、恥ずかしがらず、素直に受け止め、出してしまいましょう。そのイメージがなんなのか、物語なのか、人物なのか、何かのシーンなのか匂いなのか色なのか、それはなんでも構いません。そのイメージを心の中にしっかりと持って、トランペットを吹けばいいのです。誰もあなたの心の中を否定することはできないのです。
そうして「心」がある状態で楽器を吹く習慣を身につけられれば、音楽と向き合う時(そうでない時でも)、いつも自然と心の中からイメージが湧きやすくなります。
ぜひ演奏する時は、楽譜に書いてあることだけを必死で追うのではなく、楽譜に書かれていないことを心に込めて楽しんで吹いてください。
《休符》
みなさんは、楽譜を見て演奏する時、休符をどのように捉えていますか?そもそも「休符」という名前が誤解を招きやすい呼び方だと僕は思うのです。なぜなら、すべての休符に対して「休む(休める)時間」と捉えてほしくないからです。もちろん、音を出さないのですからその間は体を休めることはできるかもしれませんが、この時大切なのは「自分が休符であっても音楽は常に最後(終始線)に向かって進んでいる」ということです。そして、楽譜の中に現れる短い休符は休むためにあるのではなく、文章でいうところの読点(とうてん)「、←この記号」であることが多く、演奏の間に休符があるからといってメロディを分断してしまうような、テンションが維持できないブレス(息継ぎ)や吹き直しをすると音楽の流れが一旦止まってしまうのです。
そうならないために、このような場合は
「休符をジャンプで跳び越える」
と考えてください。
ジャンプのイメージならば、休符のところで流れがストップすることなく、生き生きとした音楽を表現することができます。
例えばこの作品(課題曲4.プロヴァンスの風)のTrioから出てくるメロディが、まさにそれを意識して演奏してもらいたいところです。練習番号Jの8小節目に八分休符があります。この部分、もちろんブレスをするポイントではありますが、何も考えずにブレスをとってしまうと、せっかくクライマックスに向かって意気揚々と流れているメロディが一旦腰を下ろしてしまうような鈍さを聴く人に感じさせてしまいます。
「ここはジャンプをして、次のメロディに向かっていくぞ!ジャンプ!(の隙にブレス!)」
のようなテンションであれば、音楽は止まりません。無意識にブレスの取り方が変わるのがわかるはずです。
また、吹奏楽やオーケストラ、アンサンブルなど複数で演奏する音楽に用いる「パート譜」は、自分が演奏する音符しか書いていないため、メロディを吹き終わって長い休みが来たとしても、メロディはどこかの楽器が必ず担当しているのです。ということは、「メロディを吹き終わる=どこかの楽器にバトンタッチする」場面も、休符に対する考え方は同じなのです。
この曲で言うなら、練習番号Hの8小節目。トランペットの演奏はここで終わりますが、その先クラリネットが引き継ぎます。メロディは続いています(練習番号Jと同じ流れです)。ですから、トランペットの吹き終わりで「あー、終わった。ミスしなくてよかったー」とか気を抜かずに、メロディの最後はやはりジャンプして音楽を止めないように(クラリネットにバトンを渡すように)心がけてください。
もちろんこれらはメロディに限ったことではありません、伴奏であっても終止線に向かっていっていることを忘れずにいて下さい。
というとで課題曲4 マーチ「プロヴァンスの風」の解説前編はここまでです。
次回は冒頭より解説をしますので、おつきあい下さい。
それではまた来週!
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at 13:02, 荻原明(おぎわらあきら), 吹奏楽コンクール課題曲2015
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