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吹奏楽コンクール課題曲2015トランペット解説【1.天空の旅 −吹奏楽のための譚詩− / 石原勇太郎】後編










みなさんこんにちは!
只今「ラッパの吹き方」ブログでは、2015年度吹奏楽コンクール課題曲トランペットパート解説を行っております。前回より課題曲1「天空の旅 −吹奏楽のための譚詩−」について書いています。

前回の記事(前編)はこちら

それでは、今回は冒頭より順を追って解説をしていきます。


【冒頭】
ベルトーンです。低音域から順に音が重なっていきますが、こういったオーケストレーションの時に一番崩れがちがのがテンポです。なぜ崩れがちになってしまうのか、それは「それぞれの奏者が何を(誰を)テンポの基準にしているのか」が違うからなのです。
例えば指揮者を基準にしている人と、奏者を基準にしている人では絶対にずれが生じてしまいます。そもそも指揮者というのはin tenpo(正確なテンポ)を作り出す機械ではありませんし、そんな役割のために前に立っているわけではありませんから、指揮者にそれぞれの拍を求めてはいけません。

テンポというのは、2つの「何か」があって決定します。一番音楽的に言えば、2つの拍を感じられる打楽器の音や手拍子などがあれば決定できるのです。手拍子一発ではテンポはまだわかりません。
音楽から離れてみても、足を2歩出せばテンポが決定し、光の点滅が2回起こればテンポが決定します。もちろんそれらが継続的に行われなければテンポはどんどんずれてしまいますけどね。


ということで、ベルトーンのクオリティを音楽的に上げるためには、冒頭2小節目1拍目と2拍目を担当している奏者のテンポに逆らわずに受け継ぐべきです。この作品では幸い、1拍目にテューバと3rdトロンボーン(バス)が、2拍目にはユーフォニアム、2ndトロンボーンと、担当している金管楽器が充実していますから、かなり心強いですね。
そして3拍目と担当している3rdトランペットは、1stトロンボーンと一緒にタイミングを合わせられるよう、4拍目の1,2ndトランペットはテンポを受け継ぐだけでなく、3小節目の1拍目にバンド全員がタイミングを揃えて入ってこられるような説得力を持った演奏をするよう心がけてください。3小節目1拍目が短かったイントロの結末です。まずここで一旦全員の音楽性が合うように意識するといいでしょう。


【6小節目】
poco rit.です。これも先程書いたように指揮者にすべてを委ねて、奏者が「指揮者の棒に合わせる」意識を持っていては崩れてしまいます。注意してください。そして、テンポが遅くなりつつも、威力は増していくallargandoの場面ですから、単に遅くしようとか大きくしようとか考えずに、どんな結果になったら面白いか、聴いている人が惹きつけられるかをイメージして演奏しましょう。
長い音符は威力を失いがちです。ぜひ計画的に音を張り、そして威力を増幅させてください。


【練習番号A,4小節目】
冒頭でも同じことがありましたが、ホルンのメロディに応答する箇所がいくつかあります。「応答」ですから、ホルンの吹いた音形やスタイルに逆らわないように演奏しましょう。もしどうしても納得いかない(ホルンパートがこの音形について何も考えずに吹いている等の場合)は、ホルンとの合同練習でお互いが納得できる表現を追い求めてください。


【練習番号C〜】
前回の記事でも書きましたが、この作品の一番「やってしまいそう」な演奏が、付点(真ん中休符)+3連符のリズム表現です。かなり厳しく「この2つのリズムは違うものなんですよ!」と主張していいと思いますし、それが聴く人に伝わるように演奏しましょう。


天空の旅01

以下は、ついやってしまいがちな演奏パターン

天空の旅02

そして、この作品には2分音符以上の長い音が多くみられます。長いフレーズを失わないようにするために、これら長い音符を抜かないようにしましょう。吹奏楽ではなぜだか音を抜くクセを持った人がとても多くいるのですが、音を抜く奏法は「指示があった時にのみ行う特殊な吹き方」である、ということを覚えておきましょう。何も指示がないのであれば、それは音を張ることを意味しています。そして音を張ることによって、次の音符(休符)へ向かう力も強くなり、結果としてフレーズが途切れにくくなります。


【練習番号Dアウフタクト〜】
前までの雰囲気をひきずらないように注意してください。一旦落ち着きますが、ただそれは勢いがなくなったからではなく、例えば「奥行き」の問題でmpになった感じです。被写体が遠くにあるからmpなだけであって、もしそれが目の前にいるなら力は強いのです。したがって、近づいてくる(クレッシェンド)につれてそれまでの勢いが戻ってくるように計画的なクレッシェンドをしましょう。

練習番号Dの長いフレーズの最後(7小節目)に全音符がありますが、ここもやはり音を抜かないように気をつけましょう。しかし、むやみに音を張りすぎてしまうと、きっと指揮者から「トランペットうるさい!」と注意されてしまうでしょう。そうならないためのコツは

「ほかの楽器の音が聴こえているか」

を基準にすれば良いのです。自分が全音符で音を張っている時、他の楽器(特に木管楽器の細かいパッセージ)が全く聴こえないかったら、それは吹きすぎということです。これはどんな編成でもどんな場面でも使えることなのでぜひ覚えておいてください。

また、このフレーズはブレスを取りにくい箇所です。でも8小節元気に吹き切るのも結構大変です。将来的にブレスなしで演奏できるようにいろいろな練習や工夫をしたいものですが、(オーケストレーションの厚みなども考えると)とりあえずブレスを取るなら5小節目が一番無難かな、と感じています。以下を参考にしてください(ここがベストと考えただけで、ここでやりなさい、と言っているわけではないので注意)。


天空の旅03


【練習番号E】
合の手の3連符を演奏しているのはトランペットだけです。そしてpiu fですから、音楽的にはどうかとも思いますが、楽譜に書いてあるので結構突出した表現(固く、強く、輝かしい音)で思い切り吹いたほうが良いかな、と思います。ゴニョゴニョしているとみっともないので。


【練習番号F/1st,2nd】
1小節目3拍目ウラから2パートが揃って動きますが、多分合わせにくいと感じたり指摘されたりする部分だと思います。というのも、1stは前から吹いていてタイでつながっており、2ndはそこから吹き始めるので、テンポやフレーズの持っている感覚が違うんですね。
具体的には、タイを感じすぎると、そこで遅れをとってしまいますので、タイの後ろは吹かないくらいのつもりで早めのタイミングで3拍目ウラを吹き始めるようにしたいところです。
そして2ndは休符を「1,2,ン」と数えていると、非常に遅れてしまいますから、「音は出してないけど1stと同じメロディを演奏している」感覚でいてください。

タイの演奏のコツについては過去の記事
タイの吹き方
をご覧ください。

そしてフレージングについてですが、演奏をしていると、どうしても「音の一番高いところ=フレーズの頂点」にしてしまいがちで(自分がそういう意思を持っているから、というよりも高い音を出す時に音量を上げすぎてしまうことが主な原因)、この箇所も陥りやすい箇所です。最短のフレーズで言うなら頂点は練習番号Fの3小節目1拍目だと思います。そして長いフレーズ感で言うなら練習番号Fの5小節目1拍目でしょう。


【練習番号F/3rd】
2小節目にある3rdの4分音符のメロディは、実は同じことをしている人が誰もいません。したがって、かなり目立って良いと思いますので、バランスを確認しながらどんどん吹いてみてください。


【練習番号G,2小節前/2nd,3rd】
音楽の強制ストップです。聴いている人に察知されないようにしましょう。フレーズ的には、良い表現かどうかわかりませんが「車が壁に激突する」ような感じでしょうか。激突した瞬間は、4拍目ウラの山型アクセントの瞬間です。躊躇せずそこまで突っ走り、激突させてください。決して丁寧に吹き終わることのないようにしましょう。


【練習番号 I 】
なぜこの部分、トランペットだけがミュートをしているのかまったくわかりません。ホルンやトロンボーンはそのままOpenで演奏しています。指示なので仕方ありませんが。でも絶対的にトランペットの音だけが異常に別世界の音として目立ってしまうでしょう。ハーモニーやバランスを作るのも非常に難しいと思います。それを意図的と見せるか、できるだけホルン、トロンボーンと一体化を図るかは指揮者の考え方で良いのですが。僕は吹奏楽でやたらとミュートを使いたがる風潮が嫌いです。もちろんミュートを付けることによってオーケストレーションが格段に面白くなる場合も多々有ります。しかし、「なんでミュート付けるの?」と思ってしまう作編曲をされている楽譜がとても多いのも事実で、もう少し意味を持たせて欲しいな、と思ってしかたありません。

とまあ愚痴はともかくこの箇所、機械的に「音符→休符→音符/音符→休符→音符」と無機質に演奏しないように注意しましょう。田植え作業みたいな1拍1拍差し込むようにならないでください。
そのためには「3拍目の音符は1拍目に行きたがっている」という力を感じられるようにして欲しいと思います。賛否両論あると思いますが、例えば3拍目はテヌートにして力を増幅させ、結果として1拍目が弾ける(スタッカート)というリズムにしてしまっても面白いのでは、と思いました。やりすぎると気持ち悪いですけどね。
どうあれ、トランペット、ホルン、トロンボーンが統一するようにセクション練習をたくさんして欲しいですし、そのためには、全員主旋律を演奏してみると良いと思います。クラリネットの楽譜ならそのまま吹けます。誰かに主旋律を吹いてもらい、他の人は自分のパート譜を演奏する、なんて練習も効果的ではないでしょうか。

また、どんな素材、形状のミュートを使うかでも大きく印象は変わります。例えば木製でとても柔らかな音の出るミュートを使うとか、敢えて金属的なよく響くミュートを使うなど。指揮者と十分相談して、できれば今の時期にいろいろ使い分けてイメージに一番近いものを選べるといいですね。そのためにはもちろん、演奏しているメンバー全員が同じミュートを使用します(敢えてメーカーや形状をバラバラにして絶妙なバランスをとる、なんてのも面白いかもしれませんが、かなりややこしいし面倒くさいですね)。


【練習番号K】
ミュートを付けたまま同じ運指で付点のリズム、しかもトランペットパートが全員同じ動きで、他のパートはどこも何もしていない(Soli)という、結構プレッシャーなところです。

替え指(3番ピストン)を使っても良いと思いますが、せっかくなので練習を兼ねて正しい運指(1,2番)で吹いてみましょう。

付点は、どうしてもうしろの16分音符がユルく聴こえてしまいがちです。他のどの音よりも強く鋭く吹いてください。そのためにまず、記譜上「ラ→ミ」だけを練習します。「ミ」の音をぶつけるように演奏しましょう。最初は2つの音の長さを同じにして、できるようになったら付点のように「ミ」の音を短く演奏します。
次に「ミ→ラ」で同じ練習をします。それができたら「ラ→ミ→ラ」で。
動画を見てもらったほうが早い。



こんな感じです。
ミュートをしているのにチューニングスライドを抜かなかったせいで非常にピッチが高くてごめんなさい。
この部分は演奏開始までに時間があるのでチューニングスライドの調整が可能ですから、動画のピッチは反面教師として高くならないよう対策をしてください。


【練習番号M/2nd,3rd】
ここは2ndの腕の見せ所ですね。どんどん目立っちゃいましょう。この箇所は練習番号Dと同じメロディではありますが、オーケストレーションが(他のパートがやっていることが)違います。中でもユーフォニアム(テナーサックス)にそれまでなかった動きが出てきています。これを無視してしまうと演奏が崩れてしまうので注意が必要です。

天空の旅04

譜例にあるように、練習番号M,1小節目の4拍目と3小節目の4拍目で動きが一致するように心がけてください。ぜひ合奏前にユーフォニアムと一緒に練習する時間を沢山とってください。


【練習番号N〜/3rd】
1st、2ndと違う動きをしている箇所がいくつかあります(2小節目、7〜8小節目)。ここは目立たせるように心がけ、7〜8小節目は同じ動きをしているクラリネット(オーボエ)と一緒に練習する機会を設けてください。


【練習番号P,4小節目】
1小節間かけてクレッシェンドをしますが、多くのパートは3拍目から動き始めます。ですから、トランペットが「クレッシェンドだ!それー!」と1拍目からいきなり大きくしすぎてしまうとバランスが崩れてしまいます。ここはぜひ、クレッシェンドの効果を高めるためにも1,2拍目は我慢をして、3拍目から一気に盛り上がるように演奏してみてください。
クレッシェンドに限らず、楽譜にある記号の中には「その場所から◯◯し始める」という指示のものがいくつもあります。我々はそういった記号を見ると、書いてある最初の部分からいきなり変化を起こそうとしてしまいがちなのですが、あくまでの「その部分から開始」なだけなので慌てないようにしましょう。

例えばこの場所に書いてあるクレッシェンドも、「ここからクレッシェンドをしなさい」という指示ですから、1拍目でいきなり大音量になってしまうのは指示通りとは言えません。クレッシェンド記号がある間、その効果が続くわけですから、冷静に演奏してください。
そして何よりも大切なのはこういった記号には必ず「結果」が伴っているということです。クレッシェンド記号を抜けたところでその結果があります。多くはfやffになっていることでしょう。また、意外性を求める場面ではsub.p(突然pで)になったりするかもしれませんが、何にせよクレッシェンドの先に結論が待っていることに変わりありません。その結果を理解しないでやみくもにクレッシェンドしたのでは、作品を理解しているとは言えませんので、常に楽譜の先、作品が次にどう展開するのかを知った上で演奏をしてください。
この場面では曲の一番最後の小節にあるfffに向かってクレッシェンドをしているわけですから、それはそれは強烈な盛り上がりで作品が終わることになります。では、どこからどのようにしてfffに向かうのか、そのイメージをまず持ってからトランペットで吹くようにしましょう。

ということで、結構長くなりましたが、冒頭から順を追って解説をしてみました。
それでは、来週からは別の課題曲の解説に入ります!

当ブログの写真・記事等の(全部、一部問わず)無断利用、ネット上(TwitterやFacebookなどのSNSを含む)などへの無断転載を禁止します。

at 07:08, 荻原明(おぎわらあきら), 吹奏楽コンクール課題曲2015

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吹奏楽コンクール課題曲2015トランペット解説【1.天空の旅 −吹奏楽のための譚詩− / 石原勇太郎】前編










みなさんこんにちは!

只今「ラッパの吹き方」ブログでは、2015年度吹奏楽コンクール課題曲トランペットパート解説を行っております。前回、前々回で課題曲2「マーチ『春の道を歩こう』」について書きました。今回からは課題曲1「天空の旅 −吹奏楽のための譚詩−」です。

課題曲2の記事は以下より進んでください
 マーチ「春の道を歩こう」/ 佐藤邦宏 前編
 マーチ「春の道を歩こう」/ 佐藤邦宏 前編


さて、課題曲1ですが、冒頭いきなりマーラーの交響曲第6番「悲劇的」終楽章?と思った直後、なんだ、スウェアリンジェンだったのかと思いましたが、全体的にわかりやす作られているように感じます。
ただし、いくつか気をつけておきたい点があるので挙げてみます。


《「祈り」というテーマ》
作曲者の曲解説を読んでいると、「祈り」という言葉で埋め尽くされています。「祈り」と聞くと宗教的な祈祷をイメージしがちですが、作者は具体的な宗教思想における祈りではなく、「望み」「願い」もっと平たくいうなら「気持ち」といった人間が誰でも持っている感情を指していると言っています。そして、その祈りは空へと高く舞い上がり、様々な「祈り」と出会い、いつまでも旅をしているそうです。

うーん、ファンタジー。

なので、天空を旅しているのはパズーでもシータでもドーラでもムスカでも、ましてや閣下でもなくて、「魂」とか「心」のことを指しているようです。そして「祈り」は、感情ですから、安らかなものから力に満ち溢れたものまで様々です。こういった背景がある作品ということですが、少しこの作品の様子が見えてきたでしょうか。

僕は最近まで、楽曲を理解するためのひとつの重要な情報源に「タイトル」があると思っていました。確かにそれは一理あるのですが、同時にタイトルがほとんど関係なかったり、まったく適当な命名だったりすることもあるのを今回の課題曲群で実感しました。それについては今後の課題曲解説で触れますが、タイトルなんてあまり深く考える必要もないのかな、なんて思うようになりました(一応調べて重要度合いを理解するようにはしていますが)。


《長いフレーズ》
この作品の特徴のひとつに、「フレーズが長い」という点が挙げられます。曲が始まると、ほとんどフレーズが切れずにどんどんどんどん前へ進んでいきます。ちょうど紙飛行機が気流に乗ってどこまでも水平に飛んでいくかのうように、邪魔するものもなく清々しいくらいに直線飛行をしています。

ですから、この流れを邪魔してしまう「重すぎる音符」「強すぎる拍感」を音楽に出さないよう心がけることが大切です。これはアクセントや強打について言っているのではなく、フレーズを分断してしまうような存在を無意識に表現してほしくない、ということで、たとえば1拍1拍ウンウンウンウン…とうなずきながら演奏してしまったり、長い音符が前へすすむ力を感じさせない(僕は「音のベクトル」と読んでいます)演奏をしないように、ということです。
したがって、部活動でよく見かける「メトロノームに合わせて演奏する」練習や「指揮者が譜面台をカチカチ叩きながら合奏をする」方法をとりすぎると、フレーズ感がなくなってしまい、この作品の持っている長いフレーズ感が消滅してしまいます(もっとも、メトロノームという器具はそのクリック音に合わせて音楽を合わせていくためのものではありませんから、使い方自体が間違っていると言えますが)。

メトロノームを使った練習がなぜNGなのかについては過去の記事
 「室内楽(アンサンブル)5
をご覧ください。


もうひとつ、長いフレーズを演奏するために覚えておいてほしいことは、「吹き始めの勢い(吹く前までの体の使い方)で飛距離が変わる」ということです。
わかりやすく例えるなら、弓矢を放つ時、遠くへ飛ばしたい時と近くに飛ばしたい時の弓の使い方が違うのと似ています。自然な流れの音楽的フレーズは、矢を放ってしまった後は操作しないほうが良いのです。飛ばした弓の軌道が思っていたのと違うからと言って、ゲームのコントローラーや呪文などで動かすことはできませんよね。仮にそれができたとしても、見ていて非常に不自然です。ですから、演奏する前までに「これから吹き始める音楽は、最低でもどこまでたどり着ける力を持っているのか」をイメージし、それに見合った演奏開始でなければいけません。これらはブレスコントロールが重要で、勢いのない息では着地地点も近くなり、息切れを感じる演奏になってしまいますし、遠くへ飛ばそうと力を無駄に使っても、結果としては暴発して全然飛ばなかったりもします。
呼吸が生き生きと使い続けられるコントロールをするにはどうしたらいいか、ぜひいろいろと研究してみてください。
もうひとつヒントとして、基本的にフレーズの間は音が減衰しないように演奏しましょう。要するに、音を張り続けるということです。特に長い音を伸ばしている時に、音を抜いてしまうとそこでフレーズは分断されてしまいます。今吹いている音は次の音に向かおうとしている、ということ。そして音を出し始めたその瞬間、すでに着地地点が決まっているので、それまでは音がつながりあっている、ということを覚えておいてください。


そして、作曲者自身が書いている「練習番号E,G,Nの前の休止は重要な間(ま)である」というのは「長いフレーズの切れ目」と考えます。言い方が違うだけで意味は同じですね。フレーズには必ず着地点があります。それが作者の言う「間(ま)」だと思います。


《付点と三連符、スラーとタンギング》
課題曲2の前編で書いた「付点+スラー」の演奏時についやってしまうよくない吹き方が、この作品でも出てきます。


天空の旅01

楽譜通りに演奏すると、おおよそこのようになると思いますが、ついついやってしまうのが以下の吹き方です。


天空の旅02

どんな作品でもそうですが、スラーで吹いている直後に細かなリズム(タイミング)でタンギングをすることが苦手、またはおっくうになっている奏者が多いのです。なので、楽譜に書いてあるフレージングを無視してタンギングしやすいところまでスラーでつなげてしまう後者の吹き方にならなよう、充分に気をつけて演奏して下さい。

スラーをしている時に舌を無意識に必要以上に引いてしまうクセがある方に得に多い現象です。よく指摘される方、確認してみたらそうなってしまっているという方、ぜひいつもスラーの時の口の中がどうなっているか観察してみましょう。


そしてさらに、この作品によく出てくる三連符+付点(真ん中休符)のリズムでは、三連符と付点の差別化をしっかりする必要があります。傾向としては、三連符に感化されてしまった付点が「ゆるいリズム感」で表現されてしまうと思いますので、まずは以下にリンクした過去の記事

付点音符の吹き方

を読んで実践してみて下さい。

もし僕がコンクール審査員だったら、この三連符と付点がきちんと理解して演奏しているか(お客さんに違いを理解してもらえるように演奏しようとする姿勢か)がとても大きなポイントにすると思います。
ぜひ変なクセをつける前に徹底的に練習して「良いクセ」を身につけてしまいましょう。


今回は課題曲1のもつ世界観と注意してほしいフレージングについて書いてみました。

では、次回はこの曲を冒頭から順に追って解説していきます。
また来週!


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at 05:51, 荻原明(おぎわらあきら), 吹奏楽コンクール課題曲2015

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吹奏楽コンクール課題曲2015トランペット解説【2.マーチ「春の道を歩こう」/ 佐藤邦宏】後編











みなさんこんにちは!
只今「ラッパの吹き方」ブログでは、2015年度吹奏楽コンクール課題曲トランペットパート解説を行っております。先週は課題曲2「春の道を歩こう」に頻繁に出てくる付点+スラーについてじっくり解説をしました(前回の記事はこちらからご覧ください)。今回はこの作品を順を追って書いていきます。


【冒頭】
まず1小節目と3小節目の4分音符は息の勢いがなくならないように(ひとつずつ叩きつけるような音にせず)次の小節のアタマの音に届く息で演奏しましょう。そうすることで、「舌で頑張るアクセント」から「息で表現するアクセント」になります。
前回の記事でちょうどこの小節も含めた動画を掲載しましたので、参考にしてみてください。



コツとしては、冒頭1拍目にある4分休符を単に「まだ吹かない時間」にするのではなく、この休符を「ストレス(パワー)を溜めるための時間」にすることです。1拍目からすでに演奏をしている様々な楽器と一緒に音楽を(感覚的に)開始し、でも休符のために音を出せないストレスを2拍目で解放しましょう。そのパワーが2小節目の最後まで届く威力を持っていれば、おのずとひとつひとつの音を叩きつけるように演奏することはできなくなります。
タンギングをしていても(それがスタッカートであったとしても)フレーズはつながっている、という点を常に持っていて下さい。

過去の記事に息とタンギングの関係を書いていますので、そちらも参考にしてみてください。
タンギング 5(息のタンギング練習)


6小節目でバンド全体が盛り上がりますが、7小節目で「sub.mp(すぐにmpに)」という指示により、突然落ち着きます。そのギャップをできるだけ大げさに表現するためには、(トランペットは吹いていませんが、バンド全体の解釈として)「mp」の表現にこだわるというよりも6小節目の最後ギリギリまでクレッシェンドをし続ける、音を抜かないことを意識してください。結果をコントロールすることは不自然につながります。したがって、具体的な結果を求めるのであれば、それまでの過程がどうであったか(どうしたか)、が重要なのです。


【冒頭の2nd、3rdのスラーについて】
なお、2nd,3rdを担当している方は、パート譜だけ見た時、冒頭2小節目1拍目についているものがスラーなのかタイなのか悩んでしまうかと思います。ハーモニーを作っていると、同じフレージングで書いた時にどうしてもこうなってしまうことがあるのですが、判断に迷った時は、まずスコアを見てみましょう。

春の道を歩こう02

動きのあるパート(ここでは1stトランペット)を参考にすれば、どのように演奏したら良いのかもわかると思います。ここでは1stがスラーで動いていますから、それに合わせて書かれているんだな、ということがわかりました。したがって、演奏としてはタイではなくてスラーですから、結果的に1stと同じフレージングで演奏ができれば良いということです。

春の道を歩こう03

楽譜にするならばこのほうが適切でしょうか。結局はタンギングをせざるをえないので、できるだけ1stと同じニュアンスで演奏できるように音の質や音の向かう方向性について研究し、1stと一緒に演奏してどう聞こえるかたくさん練習してみましょう。そのために2nd,3rd担当の方も1stの楽譜を練習してください。


【練習番号C〜】
ここからいわゆる「Bメロ」になります。コンサートマーチではBメロになると中低音楽器がメロディを演奏することが定番で、この作品ももれなくそうなっています。したがってトランペット他、高音域の楽器は伴奏を担当することになり、以下の譜例を担当しています。できるだけスタッカッティシモ(スタッカートよりも音を鋭く短く)演奏するのが良いでしょう。音の形をしっかり出しつつ、低音域のメロディをジャマしないようにそれぞれの音のサイズをコンパクトにすると立体感が生まれます。ただし、ハーモニーも同時に作っていることを忘れず、打撃音だけにならないよう、「音の中身」が充実した演奏を意識しましょう。
また、リズムが独特なので、16分音符の箇所は以下のようにシングルとダブルを使い分けると雑にならないと思いますので、やってみてください。

春の道を歩こう04


【練習番号D,4小節前アウフタクト〜】
フルートから受け継がれたメロディを担当しています。裏拍で動くことの多いメロディで、こういったリズムを「シンコペーション」と呼びます。
シンコペーションは簡単に言えば「わざと表拍をはずして動いているリズム」なので、それを聴いている人にも伝わるように演奏することが大切です。そうしないとリズム感のない演奏だと勘違いされる可能性があります。
しかし、スラーがつきまとうメロディですから、先ほども紹介した「タンギング 5(息のタンギング練習)」を有効に使い、表現すると良いと思います。ぜひ記事を参考に、練習をしてみて下さい。

そして楽譜上では「練習番号D 1小節前」の1拍目でffを迎えているので、ここでピークになっていると感じやすいのですが、その先を見ると2拍目の裏に山型のアクセントがあります。ですから、「練習番号Dの4小節前アウフタクトから始まったメロディはこの山型アクセントに向かっている」と考えて演奏しましょう。

そのあとから生まれる新しく担当するメロディ(練習番号Dアウフタクトから)は、その前までの影響を受けることなく、仕切り直します。冷静に軽やかに演奏してください。スタッカートとスラーのコントラストが聴いている人に伝わるように意識しましょう。


【練習番号E〜】
カップミュート指示です。ミュートの付けはずしにあまり時間がかけれらないので、上手なON/OFFをしたいですね。過去の記事「ミュート1」を参考にしてください。

カップミュートはメーカー(素材や形状)によっても音色がだいぶ違いますから、できるだけ同じものを使いたいですね。この曲では、結構カップミュートでの演奏箇所が活躍ポイントになっていますから、あまりこもりすぎて鳴らないものではなく、音の立ち上がりがハッキリしたものを選ぶと良いでしょう。


【練習番号G〜】
2小節目、4小節目は練習番号Eと同じ動きをしているのですが、ミュートをはずしたということで、先ほどよりも元気に吹いてしまいがちです。もちろん、雰囲気としては練習番号Gになって若干開放的になりましたが、スコアを見てください。
トランペットと同じ動きをしている木管楽器が増えました。しかも良くみてみると、それぞれ2拍目ウラからは木管楽器はトランペットの音よりも上に行っていますね。メインはトランペットではなく、木管楽器にある、ということです。ここは注意です。要するに、1stトランペットも、バンド全体からするとこの部分はハーモニーを作っているパートであり、メイン(トップ)の立場ではなくなっているのです。したがって、練習番号Eから何も考えずにずっとトランペット先導の意識で吹いていると、バランスが悪くなってしまいます。自覚を持った上で演奏して下さい。
そして、練習番号Gで同じ動きをしている楽器だけで集まり、セクション練習を行いましょう。


【練習番号G,5小節目アウフタクト〜】
トランペット+トロンボーンでファンファーレを演奏しています。金管楽器の魅力を伝えるチャンスです(ここくらいしかチャンスがありません)。この箇所で大切なのは、「3拍目にTutti(総奏)になる」という点。トランペットとトロンボーンの演奏で他の全員を連れてこなければならないのです。
「別に意識しなくてもみんな3拍目になったら入ってきてくれるじゃん」と思うかもしれません。もちろんみんな入ってきてくれるはずです。「1,2!ジャンジャン!」といった具合に。
しかし、それでは「アンサンブル」と言えません。単に同じ楽譜を同じタイミングで演奏している者たち、になってしまいます。アンサンブルというのは「音の会話」です。誰かが何か提案したり、アクションを起こした結果、誰かがそれに答えたり、反発したり。そういった「やりとり」をすることがアンサンブルです。各自がそれぞれ台本通りにタイミングを合わせただけのものは、アンサンブルと呼ぶにはふさわしくありません。ですから、トランペットがみんなを

「さあみんないくぞ!」

と先導できる演奏をして、他の楽器の人たちがが「トランペットとトロンボーンに乗せられて、思わず吹いてしまった!」音楽の流れになってほしいんです。

僕は以前、オーケストラでとても素晴らしいティンパニストとの演奏し、彼のとても強いカリスマ性と先導力のある演奏で、乗せられてしまった経験があります。決して悪い意味ではありません。多分オケ全体がそうであったと思います。どの楽器もティンパニが司令塔になって動かされているように感じました。そういった奏者がたくさんいる団体の合奏はとても刺激的で(彼らがその時その時、各自の立場を理解していればですが)、聴いている側もエキサイティングに楽しめます。僕は何でもかんでも予定調和の上で完成度を上げていけば良いとは決して思いません。台本通りの演奏は安定感があり評価がブレないのでそういった完成度を求めていく部活が多いのですが、たとえコンクールであっても、中高生であっても、音楽はそれではつまらないと思うのです。

話がそれてしまいましたが、練習番号Gの5小節目からのファンファーレはバンド全体で演奏しているんだ、自分たちが中心になっているんだ、という自覚を持って吹いて下さい。


【練習番号H,2小節前】
この部分のロングトーンは「盛り上げよう」と思うあまりに身勝手に鳴らしすぎないように注意しましょう。なぜなら、他のパートにはとても重要な動きをしているところがたくさんあるからです。
トランペットやトロンボーン、打楽器などは、編成によっては「うるさい」立場になる可能性がありますね。鳴らしすぎて他のパートがお客さんに聴こえないようでは、アンサンブルになりません。では自分たちトランペットが萎縮することなく、動きの違うたくさんの楽器とバランスを保ち、全員でクレッシェンドしていくにはどうしたら良いでしょうか。ポイントは、

「他のパートの音がきちんと自分の耳に聴こえていればバランスは保たれている」

という点です。自分の音で周りの音がかき消されている時には、客席にも同じように聴こえていると考えてください。トランペットという楽器の中での「ff」と考えてしまうと、例えばファゴットなどが限界まで鳴らそうとしてもかなうわけがありません。ですから、一緒に演奏している他の楽器が自分の耳に届いている状態をキープしていれば、客席にもバランスよく聴こえている、ということです。これは、どんな編成でもどんな時でも使えますから、ぜひ覚えておいてくださいね。


【練習番号H〜】
このメロディは吹きやすいし、クライマックスに向かっているので、ついつい吹きすぎてしまいやすいです。しかし、ここはまだ「f」。この後に「練習番号I」で「ff」が待っていますから、静に演奏して下さい。楽譜は、今演奏しているところだけに注目しないように、前後の関係がとても重要になりますので、いつでも視野を広く持つようにしましょう。
f(フォルテ)があるからff(フォルテシモ)の基準ができるのです。クレッシェンドが書いてあるのは、その時点から変化がある、ということ。そしてその先に結論が待っているということです。


【練習番号 I,4小節目〜】
ここでトランペットだけ一旦引き下がります(演奏しなくなります)。多分ドンチャン騒ぎのまま楽曲を終わらせたくなかったのでしょう。少し落ち着きを取り戻す(冷静さを取り戻す?)場所ですから、4小節目にあるデクレッシェンド指示は単に「音を小さくしていく(オーディオのボリュームツマミを操作する)」と考えず「木管楽器に主導権を(一時的に)譲る」「スポットライトを木管楽器に当てる」とイメージして下さい。そう考えることで音楽が立体的に表現されますし、7小節目アウフタクトで復活する時にも吹きやすいと思います。


【練習番号J,3小節目】
この部分も2分音符で伸ばしている奏者が多いのですが、いそがしく音階を吹いているフルートやクラリネットがいることを忘れないようにしましょう。先ほどの練習番号H 2小節前と同じです。


さて、いかがでしょうか。冒頭からざっくりとポイントを書いてみました。ぜひ参考に練習をしてみて下さい。
わからないところ、もっと具体的に聞いてみたい、教えてほしいことがありましたら、携帯アプリ「BOLERO」プレスト音楽教室にいらして下さい。詳しくはこちらの記事をご覧下さい


それでは、また来週!
来週は他の曲の解説です。


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at 08:00, 荻原明(おぎわらあきら), 吹奏楽コンクール課題曲2015

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吹奏楽コンクール課題曲2015トランペット解説【2.マーチ「春の道を歩こう」/ 佐藤邦宏】前編











みなさんこんにちは!
先週より「吹奏楽コンクール課題曲2015トランペット解説」と題しまして、課題曲について書いております。
今回からは1作品ずつピックアップして、様々な角度から作品を完成させるための記事を書いていこうと思っています。

もちろんこのブログだけでその作品の全てを語れるわけではありませんので、ひとつの参考資料みたいに扱ってもらえればいいかなと思います。それと、完全にトランペットパート目線で書き続けますのでその点はご了承ください。

また、雑誌やネットなどいろいろなところで同じような企画をしていると思いますが、このブログに書いていることは、あくまでも僕個人の見解です。「作曲家本人は違うこと言ってる!」とか「あの有名な奏者は逆のこと言ってた!」なんて茶飯事でしょう。
そして一番考えられるのは「このブログの通り演奏したら指揮者やコーチに違うと否定された」だと思います。音楽には解釈の正解がなく、良いか悪いか興味あるかないかで評価されます。しかもその評価もひとそれぞれだし、タイミングや環境、世代などでも違います。ですから、ここでは僕が主観的に「こう考えると(こう演奏すると)良いと思う」ことを書いているだけですので、どうぞもめごとにならないようにお願いします。

こんな記事を過去に書いていますので、もめる前にぜひ読んでみてください。
 →「複数の指導者に教わる、ということ。

では、曲解説に入ります。


《「いつもの」曲?》
ある程度吹奏楽経験がある方でしたら、この曲を初めて聴いた時、絶対思ったはずです。「ああ、いつものだ」。
そうです。確かに「いつもの」コンサートマーチですね。ですから、5曲(4曲)の中で一番とりかかりやすそうで、「まぁ、今年はこの曲かな?」とすでに決めているところもあるかと思います。もちろんこの曲を選択させるのは自由ですが、ひとつだけ「いつもの」よりも厄介なものがあるので、今回はそれについて徹底的に書いていきます。


《厄介な「付点+スラー」》
この作品は「付点8分音符+16分音符」のリズムが沢山出てきます。厄介なもの、とはまさしくこれです。

付点音符
これ。この記事では「付点(のリズム)」と呼びます。

そしてこんな感じでスラーがついています。

春の道を歩こう01

トランペットパートだけで言えば、音の高さが変化する時のこのリズムすべてにスラーが付いています。これが「厄介なもの」と思っています。


《クセになってしまうフレージング》
この付点に付いたスラーは、楽譜をパッと見て、吹きにくいものだと気付きにくく、バンド全体が効果的に統一感を持たせて吹くには、結構気をつけて練習をしなければならないと思います。

多くのバンドでは、音の高低(音をはずさない)、リズムの正確さ、テンポの正確さ、ピッチ*の正確さを練習の優先事項にしているように感じます。フレージングやアーティキュレーション(アクセントやスタッカートなど)歌うこと(cantabile=カンタービレ)などははあまり注目しなかったり、テンポやピッチなどの優先事項ができてからにしよう、といった感じに見えます。

*多くの方がピッチのことを「音程」と呼んでいますが、ピッチだけに注目していることがほとんどです。チューナーでは音程の正確さはわかりません。ピッチの計測器です。音程とは、2つの音の隔たり、距離感を指します)

その結果、スラーの付き方(フレージング)に関しても教える側があまり関心を持たず、各奏者に任せっきりになりがちなのですが、楽譜通りのフレージングで全員が演奏することはとても重要です。フレージングを適当に吹いてしまっている人たちの合奏は、言うならば、同じ意味の言葉を喋っているのに、人によっては関西弁や東北弁だったりするのと似ています。

そして一番厄介なのは、一度身につけてしまったフレージングは、なかなか直せなく、特に緊張している合奏中、本番で出てしまうものです。

そうならないためにも、楽譜を渡した一番最初の段階で全員にフレージングを徹底しておくことが重要だと思います。


《フレージング比較》
例えば、冒頭2小節目でいきなりこのフレージングが出てきます。そして主旋律にも出てきます。
以下の動画は楽譜に書かれた吹き方です。


春の道を歩こう06

付点の後にタンギングができるかがポイントです。


《間違ったフレージング》
そしてこちらが、一番やってしまいそうな間違った吹き方です。


春の道を歩こう07

春の道を歩こう05

このほうが吹きやすいんです。なぜ吹きやすいのか。それは、細かい(速い)リズムの途中にタンギングを入れるのが大変だから(面倒だから、難しいから)なのです。その最大の原因は「スラーをしている時に舌を奥へ引いてしまっている」からで、タンギングをすること(質の問題ではなく、タンギングそのものを入れるおと)が苦手だったり、意識していないとほとんどスラーで吹いてしまっている方は、スラーの最中に舌を無意識に奥へ入れてしまっている可能性が高いです。なぜ奥へ入れてしまうのかというと、スラーをスラーらしく演奏しようとするあまり、舌を必要以上に逃がしているからです。舌が歯の裏側とその周辺に触れなければそれで充分なのですから、あまり奥へ引かないようにしたいですし、舌が奥へ行きすぎると、非常にこもったサウンドになったり、無駄にピッチが上がったりもしますから、良いことはありません。

この付点+スラーの部分で上記のような演奏をすると、とてもだらしないというか酔っ払ったような雰囲気になってしまい、テンポも走ってしまいがちです。印象が悪いですよね。

もしも僕が審査員をしていたら、真っ先にこのリズム、フレージングを全員がきちんと演奏できているかをチェックすると思います。


《付点+スラーを演奏する際のポイント》
結局はお客さんに対してきちんと楽譜通りのフレージングで演奏しているな、と伝わらなければなりませんから、はっきり演奏したいものです。


春の道を歩こう08

こちらの動画では付点+スラーの部分を何度かゆっくり演奏しています。少し様子がわかりますでしょうか?

大切なのは、16分音符をハッキリと吹くことです。なぜなら自分ではしっかり楽譜通り演奏していると思っていても、お客さんの耳には緩く聴こえがちで、意外に伝わらないからです。お客さんが納得できる演奏をするためには、奏者自身はそのギャップを理解して演奏しなければなりません。

そのギャップで覚えておきたい大切な点は、「短い音は長い音よりも聴こえにくい」「低い音は高い音よりも聴こえにくい」という2点。
ですから、この場合は短い16分音符はどうしても前にある付点8分音符よりも聴こえにくくなってしまいますから、上記の動画にあるように16分音符をしっかりと吹こうと意識してください。

普通、ハッキリ吹くと言われたら、タンギングでどうにかすることが多いのですが、この場合スラーでつながってしまっています。こういった時には、おなか(みぞおち付近)の力を使って、流している息そのものに変化を与える「息のアクセント」を使う必要があります。

いかがでしょうか。楽譜をみると、音の高さやテンポ、リズムばかりが目にいってしまいがちですが、もっと多くの情報を目に入れること、そして楽譜に書かれていない沢山の重要なことも発見できると、その曲を演奏する楽しみや意欲もどんどん大きくなっていきます。たかがスラーと思わずに、丁寧に曲作りを始めましょう。

ということで今回はスラーの付いた付点のリズムについて書いてみました。
来週は冒頭から順を追って解説します。


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at 07:33, 荻原明(おぎわらあきら), 吹奏楽コンクール課題曲2015

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