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トランペット ウォームアップ本 (MyISBN - デザインエッグ社) (JUGEMレビュー »)
荻原 明
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2014.12.30 Tuesday
「ファ」、高くないですか?
みなさんこんにちは!
《「ファ」、高くないですか?》
唐突ですが、トランペットで吹いた「ファ」の音、高くありませんか?ファと言うのはBb管であれば「Es(エス/イーフラット)」の音で、僕が言っているのは五線の中にあるほうです。
解放音(Bb音)のピッチを確認して、チューニングを終えた状態で、下のBbから「ドレミファー」と吹いた時のファの音のピッチをチューナーでチェックしてみてください。あまり深く考えず、いつも通りに吹いて下さい。
いかがでしょうか。高くなりませんか?
トランペットには、いくつか「高くなりやすい音」というのがあります。
例えばこれです。
これらの音はほとんどの楽器でピッチが高くなる傾向にあります。
他の音が安定したピッチで演奏していたとしても、高くなってしまうので、トリガーを使用してピッチ調節をします。
他にも、1,2番ピストンで出す音は比較的上ずりやすい傾向がありますが、楽器の個体差でもだいぶ違うので、上記の音に比べればたいしたことはないと言えます。
他の音に関しても同じで、それぞれの楽器のクセのようなものはあるにせよ、一概に「この音は上がり(下がり)やすい」と言うことはできません。前回の記事で書いたように奏者の演奏の仕方によっても、ソルフェージュ力によってもこれらは変化しまいます。
しかし、多分ですが「ファ」の音が高くなりやすい方、多いのではないかと思います。特に「ドレミファー」と下から音階を吹いた時に顕著ではないかと。
《なぜ「ファ」が上ずるのか》
それではなぜ「ファ」音のピッチが高くなりやすいのでしょうか。ひとつは「半音」です。
我々はトランペットを初めて吹いた時、とにかく音を出せるように、という課題に一生懸命だったはずです。鍵盤楽器やリコーダー、打楽器のように、何かアクションをすればとりあえず音が出るものと違い、音を出すだけでいきなり苦戦を強いられるのが管楽器。ですから、音階を吹けるようになるのも一苦労でしたよね。
初心者の頃は音楽的に音階を吹けるようにするという意思はこの時点ではほぼなく、ドの音が出たから次はレ、ミ…と、運指を覚えて、単に隣の音を出せるようにしようといった意識で練習をしていませんでしたか?
そうすることによって「運指の組み合わせを変更することで音階を演奏する」という感覚になります。楽譜とか、鍵盤とか、音を出すのにそういうものは必要なく、単に「ドレミファ」を順番に吹くことが目的になっているだけです。
しばらくこの練習を続けていくと音を出すことにもだいぶ慣れ、とりあえず音階を吹くくらいは余裕になってきます。しかもBb durの運指を感覚的に記憶しているので結構速いスピードで、パラパラと吹けるようになりました。
ここが落とし穴。
《平均律の仕組み》
音階、具体的には西洋音楽で一般的に使われている「平均律」という音階での音階は、隣り合う音が全音(長2度/半音+半音)のところと、半音のところがあります。
鍵盤をイメージするとわかりやすいと思います。
そして平均律には「長音階(長調、durの音階)」と、「短音階(短調、mollの音階)」があり、長音階の音と音の間は以下のような順番で並んでいます。
「全 全 半 全 全 全 半 全」
僕は中学生の音楽の授業でこんな覚え方を教わりました。「全」は全音の音程で「半」は半音の音程。この間隔で隣り合う鍵盤を押せば、どの音から開始しても同じように長音階が演奏できる、これが平均律の仕組みです。
では一番わかりやすい、鍵盤でいう「C」音からスタートした長音階の順番を見てみましょう。
それぞれの音程を確認してみましょう
ドとレは全音
レとミも全音
ミとファは半音
こうなります。ミとファの音程は半音であるからこそ、長音階に聴こえる。これがポイントです。
《音程感覚の大切さ》
話を戻します。トランペットでやっとのこと音が出せるようになって、ドレミファを順番に出せるようになるまでの間、多くの人はこの音階の仕組みをしっかり学んで吹いていたわけではないと思うのです。しかし、音階がドレミファソラシドという呼び方で並んでいることや、長音階のなんとなくの聴こえ方はほとんどの人は知っています。
だから安易にトランペットでドレミファを吹いてしまうのですが、「ミとファの間は半音」=ドとレ、レとミの半分しか音が離れていないのです。全音と半音では、聴こえ方はだいぶ違う、これを感じていなければならないのです。
しかし、一度覚えてしまうと、もう余裕と言わんばかりに「ドレミファソー!」と音程感覚を持たずに勢い良く吹いてしまったり、ミとファの音程も全音の感覚で吹いてしまいがちなのです。
そして更に追い打ちをかけるようにトランペットの(Bb管での)「C音(in Bb楽譜上でのレ)」と「D音(in Bb楽譜上でのミ)」は少なからずピッチが高めに出てしまう楽器特有のクセがあるので、尚のこと全体的にピッチが高めのままファまで流れ込んでいってしまいます。
結果、ファの音が半音以上に離れてしまい、高いピッチになりがちなのです。
これは奏法が悪いわけではなく、「ソルフェージュ力」が影響を与えているのだと思います。
トランペットは、ある音を出すためにはピストンを押す組み合わせを変える必要があります。しかし、それ以上にソルフェージュする力、頭の中で音を取る力が、実際に出る音に影響を与えていると考えます。
音階は基礎中の基礎で、しかも馴染みのあるものですから、あまり深く考えなくてもそれなりに吹けてしまいます。しかし、音階にもしっかりとした音程感覚がなければ、音楽的に聴かせることができません。
《音程感覚は機械ではわからない》
しかし、音程感覚をしっかり感じようと、チューナーを使ってはいけません!
前回、前々回の記事ともつながるところがありますが、チューナーを使うと、意図的にピッチを合わせようと、口周辺の力を強くしたり、唇を変形させてみたり、プレスを強くしたみたりと、使う必要のないところで変化させてしまいがちです。そうでなくとも、ひとつひとつの音を修正させてピッチを正すという方法はトランペットには不向きで、それをするなら「鳴る音(ツボにはまった音)」を常に出し続けられることを目標にしていくべきだと考えます。
金管楽器にとってチューナーというのは、自分のピッチの悪さを修正するためのものではなく、今出している音がどうなのか(高いのか低いのか合っているのか)確認するための道具です。もしピッチが悪かった時には、その針を±0に吹きながら移動させるのではなく、一旦吹くのをやめて、なぜピッチが悪かったのか原因を探るようにしましょう。
そして、音程というのは正確なピッチを追求するだけではどうしても機械的になってしまいます。若干ですが音程というのは場面によって狭かったり広かったりするもので、それらが人間味を出していると思っています。
例えば、音階の7番目の音。ドレミで言うなら「シ」の音は、次のゴール(主音)である「ド」の音へ一番向かっていく力が強い「導音」と呼ばれる音です。「シ」の音は「ド」のことがとても好きで、他の音に比べるとくっつきあってるように僕は感じます。ですから、音程も、他の半音に比べると少し狭いくらいがちょうどいいのが僕の中の感覚です。
他にも「刺繍音(ししゅうおん)」と呼ばれる音の流れも臨時記号を使った半音が出てきますが(下に向かう時に多い)、これも浅めのピッチで演奏すると聴こえが良いと思っています。(刺繍音に関してはぜひいろいろ調べてみて下さい。)
他のサイトにあった譜例がわかりやすいです(こちらをクリック)
もちろんこれらは正確なピッチ、正確な音程感があってこその話ではありますが、機械のように正確なピッチだけを追い求めるのではなく、「こう聴こえると美しい」「すんなり聴こえる」など人間味のある音程を表現できるようにしたいものです。それがないと、今回のお話「ファ」の音はずっと高いままになってしまうかもしれません。
ということで、今回はここまで。
それでは!
《「ファ」、高くないですか?》
唐突ですが、トランペットで吹いた「ファ」の音、高くありませんか?ファと言うのはBb管であれば「Es(エス/イーフラット)」の音で、僕が言っているのは五線の中にあるほうです。
解放音(Bb音)のピッチを確認して、チューニングを終えた状態で、下のBbから「ドレミファー」と吹いた時のファの音のピッチをチューナーでチェックしてみてください。あまり深く考えず、いつも通りに吹いて下さい。
いかがでしょうか。高くなりませんか?
トランペットには、いくつか「高くなりやすい音」というのがあります。
例えばこれです。
これらの音はほとんどの楽器でピッチが高くなる傾向にあります。
他の音が安定したピッチで演奏していたとしても、高くなってしまうので、トリガーを使用してピッチ調節をします。
他にも、1,2番ピストンで出す音は比較的上ずりやすい傾向がありますが、楽器の個体差でもだいぶ違うので、上記の音に比べればたいしたことはないと言えます。
他の音に関しても同じで、それぞれの楽器のクセのようなものはあるにせよ、一概に「この音は上がり(下がり)やすい」と言うことはできません。前回の記事で書いたように奏者の演奏の仕方によっても、ソルフェージュ力によってもこれらは変化しまいます。
しかし、多分ですが「ファ」の音が高くなりやすい方、多いのではないかと思います。特に「ドレミファー」と下から音階を吹いた時に顕著ではないかと。
《なぜ「ファ」が上ずるのか》
それではなぜ「ファ」音のピッチが高くなりやすいのでしょうか。ひとつは「半音」です。
我々はトランペットを初めて吹いた時、とにかく音を出せるように、という課題に一生懸命だったはずです。鍵盤楽器やリコーダー、打楽器のように、何かアクションをすればとりあえず音が出るものと違い、音を出すだけでいきなり苦戦を強いられるのが管楽器。ですから、音階を吹けるようになるのも一苦労でしたよね。
初心者の頃は音楽的に音階を吹けるようにするという意思はこの時点ではほぼなく、ドの音が出たから次はレ、ミ…と、運指を覚えて、単に隣の音を出せるようにしようといった意識で練習をしていませんでしたか?
そうすることによって「運指の組み合わせを変更することで音階を演奏する」という感覚になります。楽譜とか、鍵盤とか、音を出すのにそういうものは必要なく、単に「ドレミファ」を順番に吹くことが目的になっているだけです。
しばらくこの練習を続けていくと音を出すことにもだいぶ慣れ、とりあえず音階を吹くくらいは余裕になってきます。しかもBb durの運指を感覚的に記憶しているので結構速いスピードで、パラパラと吹けるようになりました。
ここが落とし穴。
《平均律の仕組み》
音階、具体的には西洋音楽で一般的に使われている「平均律」という音階での音階は、隣り合う音が全音(長2度/半音+半音)のところと、半音のところがあります。
鍵盤をイメージするとわかりやすいと思います。
そして平均律には「長音階(長調、durの音階)」と、「短音階(短調、mollの音階)」があり、長音階の音と音の間は以下のような順番で並んでいます。
「全 全 半 全 全 全 半 全」
僕は中学生の音楽の授業でこんな覚え方を教わりました。「全」は全音の音程で「半」は半音の音程。この間隔で隣り合う鍵盤を押せば、どの音から開始しても同じように長音階が演奏できる、これが平均律の仕組みです。
では一番わかりやすい、鍵盤でいう「C」音からスタートした長音階の順番を見てみましょう。
それぞれの音程を確認してみましょう
ドとレは全音
レとミも全音
ミとファは半音
こうなります。ミとファの音程は半音であるからこそ、長音階に聴こえる。これがポイントです。
《音程感覚の大切さ》
話を戻します。トランペットでやっとのこと音が出せるようになって、ドレミファを順番に出せるようになるまでの間、多くの人はこの音階の仕組みをしっかり学んで吹いていたわけではないと思うのです。しかし、音階がドレミファソラシドという呼び方で並んでいることや、長音階のなんとなくの聴こえ方はほとんどの人は知っています。
だから安易にトランペットでドレミファを吹いてしまうのですが、「ミとファの間は半音」=ドとレ、レとミの半分しか音が離れていないのです。全音と半音では、聴こえ方はだいぶ違う、これを感じていなければならないのです。
しかし、一度覚えてしまうと、もう余裕と言わんばかりに「ドレミファソー!」と音程感覚を持たずに勢い良く吹いてしまったり、ミとファの音程も全音の感覚で吹いてしまいがちなのです。
そして更に追い打ちをかけるようにトランペットの(Bb管での)「C音(in Bb楽譜上でのレ)」と「D音(in Bb楽譜上でのミ)」は少なからずピッチが高めに出てしまう楽器特有のクセがあるので、尚のこと全体的にピッチが高めのままファまで流れ込んでいってしまいます。
結果、ファの音が半音以上に離れてしまい、高いピッチになりがちなのです。
これは奏法が悪いわけではなく、「ソルフェージュ力」が影響を与えているのだと思います。
トランペットは、ある音を出すためにはピストンを押す組み合わせを変える必要があります。しかし、それ以上にソルフェージュする力、頭の中で音を取る力が、実際に出る音に影響を与えていると考えます。
音階は基礎中の基礎で、しかも馴染みのあるものですから、あまり深く考えなくてもそれなりに吹けてしまいます。しかし、音階にもしっかりとした音程感覚がなければ、音楽的に聴かせることができません。
《音程感覚は機械ではわからない》
しかし、音程感覚をしっかり感じようと、チューナーを使ってはいけません!
前回、前々回の記事ともつながるところがありますが、チューナーを使うと、意図的にピッチを合わせようと、口周辺の力を強くしたり、唇を変形させてみたり、プレスを強くしたみたりと、使う必要のないところで変化させてしまいがちです。そうでなくとも、ひとつひとつの音を修正させてピッチを正すという方法はトランペットには不向きで、それをするなら「鳴る音(ツボにはまった音)」を常に出し続けられることを目標にしていくべきだと考えます。
金管楽器にとってチューナーというのは、自分のピッチの悪さを修正するためのものではなく、今出している音がどうなのか(高いのか低いのか合っているのか)確認するための道具です。もしピッチが悪かった時には、その針を±0に吹きながら移動させるのではなく、一旦吹くのをやめて、なぜピッチが悪かったのか原因を探るようにしましょう。
そして、音程というのは正確なピッチを追求するだけではどうしても機械的になってしまいます。若干ですが音程というのは場面によって狭かったり広かったりするもので、それらが人間味を出していると思っています。
例えば、音階の7番目の音。ドレミで言うなら「シ」の音は、次のゴール(主音)である「ド」の音へ一番向かっていく力が強い「導音」と呼ばれる音です。「シ」の音は「ド」のことがとても好きで、他の音に比べるとくっつきあってるように僕は感じます。ですから、音程も、他の半音に比べると少し狭いくらいがちょうどいいのが僕の中の感覚です。
他にも「刺繍音(ししゅうおん)」と呼ばれる音の流れも臨時記号を使った半音が出てきますが(下に向かう時に多い)、これも浅めのピッチで演奏すると聴こえが良いと思っています。(刺繍音に関してはぜひいろいろ調べてみて下さい。)
他のサイトにあった譜例がわかりやすいです(こちらをクリック)
もちろんこれらは正確なピッチ、正確な音程感があってこその話ではありますが、機械のように正確なピッチだけを追い求めるのではなく、「こう聴こえると美しい」「すんなり聴こえる」など人間味のある音程を表現できるようにしたいものです。それがないと、今回のお話「ファ」の音はずっと高いままになってしまうかもしれません。
ということで、今回はここまで。
それでは!
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at 07:02, 荻原明(おぎわらあきら), ピッチと音程
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