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2013.06.25 Tuesday
吹奏楽コンクール課題曲2013トランペット解説【5.流沙/広瀬正憲】その1
課題曲解説についての進め方や曲を吹く前など個人練習でしておきたいことをまとめた記事【はじめに/最初にすべきこと】をお読みでない方はこちらからどうぞ。
みなさんこんにちは!
この時期、テスト期間で楽器が吹けない、なんて方けっこういらっしゃいませんか?
これからコンクールに向けて気合い入れていこうと思っている矢先に、って感じですよね。なんかテスト期間ってタイミング悪い(だから勉強に集中できない)。と僕は学生の時思ってました。言い訳とも言う。
まあでもテストで赤点なんて取ったら、もっと部活の再開時期が遅くなるだけですからね、とりあえず楽器も勉強も頑張って下さい。
ちなみに、部活が再開した時、すぐに曲を吹きたい気持ちはよくわかりますが、数日吹かなかった後というのは少し気をつけて再開してもらいたいです。
詳しくは
「1日吹かないと3日戻る?」
「長期間楽器が吹けない時」
を読んでみて下さい。
あと、ひとつ宣伝させて下さい。
先週にも別記事を掲載したのですが、来月の7月5日(金)の19:00より「講師による管楽器ミニコンサート&楽器体験会」を開催致します。
短い時間ではありますが、僕も含め管楽器講師の方の演奏を無料で聴くことができますので、お近くの方はぜひ遊びにきて下さい!
詳しくはプレスト音楽教室オフィシャルサイトをご覧下さい。
それでは、「吹奏楽コンクール課題曲2013トランペットパート解説」、今回からは課題曲5「流沙」について書いていきます。
この作品は、中学生の団体では演奏できないので、選曲されるところも少なくなると思いますが「楽譜を読む」ということや「合奏」についていろいろ書いていきますので「この曲は関係ないや」と言わずぜひ一度目を通してみて下さい。
この「流紗」という曲、スコアにある作曲者のコメントには「砂(砂漠)が風や水などの自然の力で、その模様や造形が変化していく様子に着想を得た」と書かれていて思い出したんですが、かなり昔になりますが、同じく課題曲で保科洋氏作曲の「風紋」という曲がありました。
僕が中学3年生の時にコンクールの自由曲(課題曲だった時はまだ小学生)として演奏したのでとっても思い入れがあるのですが、この作品の「風紋」というのも風によって作られた砂漠の模様のことで、作曲者はこういったものにインスピレーションを得やすいのかな、なんて思ったり。まあそれは今回の事とは関係ないんですけど。
「風紋」、名曲です。知らない方はぜひ聴いてみて下さい。
《楽譜を読むということ》
さて、この曲の音源か、もしくはフルスコアをご覧になった方、第一印象はどんな感じですか?
もちろん「カッコイイ!」とか「ワクワクする!」とかそういった方もいらっしゃることでしょう。
でもきっと、第一印象としては「う...ごちゃごちゃしてる...」とか「楽譜が読めない!ややこしい!」という方が多数ではないでしょうか。
課題曲って、結構毎年必ず5番目がこんな感じの楽譜ですよね。で、なんとなく敬遠してしまいがち。
確かに「ややこしい」楽譜ではありますが、きちんと読んでみるとそんなに大変なものではなくて、「見た目」がそう思わせているだけ。
過去に「楽譜を読む、ということ。」というタイトルで2つの記事を書きましたが、その中では「楽譜を理屈で読もうとすると難しく感じてしまう」といった内容を書きました。僕自身、吹奏楽部に入るまでは楽譜なんてまったく読めなかったのですが、好きな音楽を聴き、その楽譜を見ることで「このメロディを楽譜にするとこうなるのか」という普通と逆のアプローチで楽譜を読めるようになった経緯があり、楽譜というものをある程度「感覚」や「見た目」で読んでいるところがあります。
しかし、この課題曲のように理路整然とした縦の線(音を出す人全員のタイミングのことを「縦の線」と言うことがあります。指揮者の見ているスコアで縦に各パートの楽譜が積み重なっていることから。)がある作品の場合「なんとなく」とか「見た目」だけで演奏するのは危険です。
ですから、この作品をもし演奏することになった方は、ぜひともこの機会に楽譜を「感覚」の面と「理屈」の面の両方で読めるようにし、結果としてどんな楽譜でも抵抗なくすんなり読めるようになることを目標の一つとしてみてはいかがでしょうか。
先程紹介した過去の記事
「楽譜を読む、ということ。1」
「楽譜を読む、ということ。2」
はこちらからお読み下さい。
《楽譜を読みやすくする準備》
■基準となる音価を理解する
この楽譜が若干読みにくいと感じるのは、いつもよく見ている楽譜よりも「基準となる音符の単位(=音価)が短い」からだと思います。
例えばこの曲の「3/8拍子」が「3/4拍子」に書き換えられていたらもっとスッキリとして見えるでしょう。
楽譜が細かく見える原因のひとつは「連桁(れんこう)や旗が多いから」です。
ご存知の通り、音符というのは細かく分割すればするほど旗が増えてきます。休符も理屈としては同じですね。
その旗が隣の音符とくっつき合うと「連桁」という横棒に変化します。
この細かな音符や休符がそこらじゅうに沢山書いてあるものですから、見た目にはとってもごちゃごちゃした楽譜に見えてしまうんですね。
ですからまず、基準となる音符が何なのかを必ず理解して読むようにしましょう。ここで言う「基準」とは、拍子記号で言う「分母」や、テンポ記号のところに書いてある音符(音価)が何なのか、もしくは、何拍子に分けて読むと読みやすいかをスコアなどで把握する、ということです。
最後のはパート譜だけを見ていてもわかりにくいですよね。フルスコアは必須アイテムです。
基準となる音符(音価)というのは、指揮者も常に考えています。何拍子なのか理解して指揮棒を振らないとテンポを伝えることができませんからね。
だからと言って指揮者に指示されるまで何も考えないのは良くありませんから、各々の奏者もあらかじめ基準となる音符(音価)を把握しておけば、指揮者の出す指示に戸惑うことは少なくなるでしょう。
■拍のアタマに印を付けてみる
この「流紗」だけでなく、普通の楽譜でも読みにくい書き方をしている場合があります。
少し特殊なリズムだったりとか、作曲家がわざと読みにくく書いている場合もたまにありますが、ほとんどの場合、楽譜の書き方(浄書)が悪いんです。
この作品のことを言っているんじゃないですよ。この楽譜はとてもキレイに書かれています。
でも何だか読みにくい。。。
こんな時はどうするか、と言うと
「拍のアタマに印を付ける」と、グッと読みやすくなります。
要するにこういうことです。
この楽譜は「流紗」ではありません。5年前の課題曲5「風の密度」です。覚えている方もいらっしゃるかと思います。
当時この曲を演奏することになった時、もう、本当にイジワルな楽譜の書き方だな、と思いました。多分確信犯。
(この曲だったかは忘れましたが以前作曲者のコメントで「楽譜をわざと読みにくくすることで演奏者の集中力を高める」なんてことが書かれていた記憶があります。とんでもない勘違いですね。ライブでの演奏時、作品が崩壊する確率を高めているだけなのに…せっかく作った作品がステージで崩壊されたら作曲者だって嬉しいわけないはず。)
で、最初の合わせの時、とにかく読み間違えそうになって、リズムや拍を取るのに必死になっちゃったんですね。周りの奏者も同じようなことになってて、指揮者を見ることもできないし、これでは音楽にならないと思って、少しでも読みやすくなるように、かなり楽譜に書き込みをしたことを覚えています。
「流紗」も、例えば練習番号Aの4小節目からって、何拍目のどこに音があるか、パッと見わかりにくいですよね。そういった場合に、拍のアタマに印を付けておくだけでもかなり違うと思うのでオススメです。
全部の小節に書いてしまうのは、かえってごちゃごちゃして良くありませんが、何度やっても見間違えてしまいそうな箇所にはしっかりと書いておくと、ミスしなくなると思います。
《正確な音価》
この「流紗」のような理路整然とした楽譜の場合「正確な音価」で演奏しないと、とてもゴチャゴチャしてしまいます。
音符の長さ、処理のタイミングをとにかく正確にキッチリとするのもそうですし、休符に対しても同じ様に配慮が必要です。
この作品によく出てくる「3連符の真ん中が休符」のリズムを曖昧に演奏してしまうと付点のようになってしまったり、休符を感じきれずに走ってしまったりしそうですね。そうならないよう、個人練習の譜読みの段階からきちんとしたリズムで演奏できるようにしましょう。
正確な音価を演奏するためには
「キレの良いタンギング(音の出だし)」
「揺らがない音の持続(中身のある音色)」
「音の処理の正確さ」
の3点を常に心がけ、演奏して下さい。
そして、この作品、3rdから順番に音が積上ってくる箇所がいくつかあります。
ということはその時3rdが場面ごとの音色やタイミングを作り上げるパートのリーダーになります。
ですから、3rd奏者の方は決して奥手にならないよう、自信を持って入っていけるようにしっかりとスコアを読み、他の楽器との連携も理解しておくようにして下さい。
1st,2ndパートの方は3rdが先に入ってくる場面では、どんな音色で入ってきたか、そんな雰囲気で演奏しているかを良く聴き、統一感のある演奏になるようにしましょう。
パート練習やセクション練習を沢山することが大切かもしれませんね。
《指揮者の手腕》
この曲の楽譜をお持ちの方はテンポの変化に着目して下さい。
指示がとても頻繁に、しかし微妙な変化が多いのに気付きますでしょうか。
ここまで細かな指示になってくるとメトロノームで把握するのも限界があります。
ですので、こういった楽譜の書き方をしている場合にはとりあえず個人練習をする時点で
1.メトロノームで「確認」しておく(おおよそのテンポ感)
2.前後のテンポとの比較を把握する(今吹いているテンポがこの後どのくらいどうなるのか)
3.ざっくりと奏者同士のテンポ感を統一しておく
そして、合奏になったら
4.その時の指揮者のテンポで決定
という流れにしておくと柔軟に対応できて良いと思います。
まずはメトロノームでそれぞれのテンポを体に叩き込みます。それが出来たら、メトロノームを使わずに「その前よりもどのくらいテンポが速い(遅い)のか」を把握しておいて、不自然にならないよう、つなげて吹いてみます(長休符で演奏しないところも把握する)。
その後、一緒に演奏するメンバーとそれぞれの場面でのテンポ感覚を統一させる目的でパート練習やセクション練習を行います。
良くないのは、いつまでも「メトロノームに合わせようという姿勢で練習をする」行為です。
メトロノームは単なるテンポ確認をするための道具であって、そのカチカチ音や電子音に奏者が従っていくものではありませんので注意して下さいね。
そして、いざ合奏になったら「指揮者が示してくるテンポに忠実に合わせていく」という姿勢を崩さないようにしましょう。
こういった曲でテンポを勝手に揺らしたりする行為はバンド全体を崩壊させてしまう恐れがあります。
ということなので、最終的には楽曲を正しく構築できるかは指揮者の手腕にかかってくるんですよね。まあそれはこういった作品に限ったことではありませんが。
関連記事として「メトロノーム」もぜひお読み下さい。
《譜面台とイスの配置》
重要な役割である指揮者の動きを視界にしっかり入れるためには「イスの置き方」と「譜面台の置き方」が重要になってきます。
ほとんどの団体の方が、合奏をするたびにイスをみんなで並べていると思います。しかし、イスの配置や置き方についてそんなに神経を尖らせたことってないと思うんですね、特に練習の時は。
でも、このイスの置き方ひとつでアンサンブルが大きく変わるんです。詳しくは過去の記事
「イスの配置1」
「イスの配置2」
を読んでみて下さい。
そして譜面台の置き方なんですが、やはり今でも譜面台を(右)斜めに置いて正面に遮るものがない状態で演奏している団体が本当に沢山いるのですが、指揮者はよく見えるかもしれませんが僕は(吹奏楽やオーケストラ等の時に限って言えば)賛成できません。
ということでこの作品に関しては、まずは譜面に慣れるための準備と練習に時間をかけましょう。
正確に演奏するための繊細な練習を初期の段階で行って下さい。そうしないと、感覚だけでアバウトに演奏するクセがついてしまうのは良くありません。
ブログを読んでもいまいち理解できない、もっと詳しく実際の演奏で学んでみたいという方はぜひ僕が講師をしている「プレスト音楽教室」までいらして下さい。
特設の「吹奏楽クラス」というのがあって、入会金など不要の1回から受講できる講座があります。お一人でもトランペットパート全員でもレッスンができますので、特にこの作品はパートみなさんでレッスンができるととても良い結果を得られるのではないかと思います。
詳しくは「プレスト音楽教室オフィシャルサイト」をご覧下さい。
プレスト音楽教室トランペットクラスのページはこちら
プレスト音楽教室吹奏楽クラスのページはこちら↓
プレスト音楽教室へ行くのは距離的に難しい、という場合は学校等へ訪問することも可能です。毎年コンクールシーズンになるといくつかの学校におじゃましています。詳しくはこちらのメールフォームにご連絡下さい。
それでは、次回は楽譜に沿って解説していきます。
また来週!
当ブログの写真・記事等すべての営利目的による無断利用、ネット上などへの無断転載を禁止します。
at 07:56, 荻原明(おぎわらあきら), 吹奏楽コンクール課題曲2013
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2013.06.18 Tuesday
プレスト音楽教室講師による管楽器ミニコンサート&楽器体験会
みなさんこんにちは!
吹奏楽コンクール課題曲トランペットパート解説の真っ最中ではありますが、ひとつ宣伝をさせて下さい。
僕が講師をしている「プレスト音楽教室」で、来月の7月5日(金)の19:00より「講師による管楽器ミニコンサート&楽器体験会」を開催致します。
このブログをお読み頂いているみなさんは、きっとほとんどの方がすでにトランペットを吹いていらっしゃるかと思います。
管楽器って、自分も中学生の時そうだったんですが「習うもの」っていう感じじゃなかったですよね。部活とかで練習していればとりあえず吹けちゃうし。
でも高校生になって音大受験を本格的に進めることになってから自分は個人レッスンを受け始めたのですが、(自分で言うのも変ですが)飛躍的に演奏技術がのびました。中学生の頃ももちろんトランペットを吹くのが楽しかったけれど、より楽器が吹けるようになったらそれまで以上に楽しく、もっと上手になりたい!と思えるようになったんですね。
個人レッスンを受ける、というのは何だか緊張するし、どんな雰囲気なのかもわからないし、何よりも講師の先生がどんな人だかわからないと、不安要素が多いと思うんです。
なのでぜひこの機会にお友達を誘ってプレスト音楽教室へ遊びにきて下さい!
コンサート終了後はそれぞれの楽器体験をすることができますので、もしレッスンに興味のある方はその時にもご相談して頂ければと思います。
入場無料ですが、会場サイズの都合上定員20名様までとさせて頂いております。
いらっしゃれる場合はお電話かメールにてご予約して頂けると確実です。
詳しくはプレスト音楽教室オフィシャルサイトをご覧下さい。←こちらをクリック!
皆様のご来場、お待ちしております!
====================================
開催日:2013年7月5日(金)
開演時間:19:00(楽器体験は20:00開始を予定しております)
会場:プレスト音楽教室 アンサンブルスタジオ
入場無料(定員20名様ですのでご予約されることをお勧めします)
出演:
フルート:若土祥子、中村和美
オーボエ:李英珠
クラリネット:山口由夏
サクソフォン:石名田亜紀
ホルン:月原義行
トランペット:荻原明
ピアノ:前田涼子
ご予約・お問合せ:プレスト音楽教室
TEL:03-5940-6431
welcome@presto.vip.co.jp
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管楽器って、自分も中学生の時そうだったんですが「習うもの」っていう感じじゃなかったですよね。部活とかで練習していればとりあえず吹けちゃうし。
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at 22:48, 荻原明(おぎわらあきら), ラッパの吹き方:Re更新情報/その他
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2013.06.18 Tuesday
吹奏楽コンクール課題曲2013トランペット解説【3.復興への序曲「夢の明日に」/岩井直溥】その2
>>課題曲解説についての進め方や曲を吹く前など個人練習でしておきたいことをまとめた記事【はじめに/最初にすべきこと】をお読みでない方はこちらからどうぞ。
みなさんこんにちは!
只今「吹奏楽コンクール課題曲トランペットパート解説」絶賛開催中です!
今回は課題曲3「復興への序曲『夢の明日に』」の後半。曲を追いながら解説を進めていきますね。課題曲3の前半記事はこちら。
《ドラムセットに合わせる》
と、その前に前回の記事でも触れましたがこの作品は打楽器の中に「ドラムセット」があります。
合奏と言えば指揮者に合わせようとみんなが指揮棒を凝視したりするかもしれませんが(実際のところこれは間違ってますが)、ドラムセットがある場合、指揮者よりもこちらに耳を傾けるほうが重要になります。
理由は簡単。指揮者はテンポを支配できませんが、ドラムはテンポを支配できるからです。
変な話、奏者全員がドラムのテンポ、ビート感に乗った演奏ができれば、指揮者を完全無視しても(テンポとしての)アンサンブルは崩壊しないんですね。
まあ、そんなことしたら音楽としてよろしくないですから、指揮者はちゃんと見て下さいね。
指揮者というのはメトロノームのようにテンポを一定に保つことが仕事ではなく、それぞれの作品をどのように作り上げるかを指示するプロデューサーなんです。
ということで、テンポやビート感に関しては終始全員がドラムを聴いて演奏するよう心がけましょう。
《スコアを読む》
課題曲解説の至る所で書いていますが、コンクールで演奏する曲くらい時間をかける作品は、ぜひフルスコアを読みましょう。
なぜスコアを読む必要があるのかは過去の記事「フルスコアを読もう」を読んでもらうとして、この作品のスコアを見ると、とってもわかりやすい書き方をしています。
難しく考える必要はありません。スコアを縦に見ると(それぞれのパートが一斉にどんなことをしているのかを見ると)、同じ動きをしているパートがとても沢山あることに気付くと思います。
また、逆にトランペットだけ独立した動きをしている、という発見もあるはずです。
これがわかってくると、それぞれの箇所でどんな演奏をしたら良いかおおよそ見当がつくのではないでしょうか。他のパートも同じ動きをしていることが多い時には(例えメロディだからと言っても)自分たちラッパばかりが出しゃばるのではなく、木管楽器もちゃんと客席へ届けられるようにちゃんと耳を傾けてバランスの良い演奏をして下さい。そしてトランペットパートが独立した動きをしているのであれば、意識的に目立たせるように演奏しましょう。
《演奏解説》
ではここからは曲に沿って解説していきます。
[冒頭(全パート)]
冒頭のメロディは低音パート以外みんな同じ動きです。まずはとにかくテンポ感とリズム感ですね。
先程書いたように指揮者の動きに対してそれぞれの奏者が合わせようとする傾向は大変良くありません。
そして、「誰かの動きに合わせよう」と考えるのもアンサンブルが成り立ちません。
ではどうするか。
一番大事なことは「自分の中で明確にテンポを決めておき、自信を持って演奏し始める」ということです。
指揮者に合わせることも、他の誰かに合わせようとすることも結局は「受け身」で「消極的」な行為です。その姿勢は音楽ではどんな時でも良くありません。ですから、一緒に演奏するみんながそれぞれ「音楽を引っ張っていくぞ」という気持ちで合奏をしていることがとても大切で、そういった演奏からは「活力」を感じることができます。
ただ、この意識の持ち方の場合、初期の合奏ではズレが生じるかもしれません。でもそれで良いんです。テンポがずれた時に「あ、自分の判断は間違ってた!怖い!怒られる!」と逃げてはいけません。積極的な気持ちを決して失わないように、しかし、奏者全員が他の仲間の音をしっかりと聴きながら演奏することですぐに縦の線が合ってくるはずです。
怖れず、自信を持って演奏しましょう。
[冒頭(全パート)]
冒頭でもうひとつ、この曲は付点のリズムから始まり、曲中も付点のリズムが多用されています。
これまでの課題曲解説でも何度か出てきていますが、付点の演奏が苦手な方をとても多く見かけますので、ぜひとも明確なリズムを表現したいものです。
付点に関しては詳しくは過去の記事「付点音符の吹き方」を読んでみて下さい。
[練習番号A(全パート)]
ここから8小節間、トランペットパートだけの旋律になります。
前回の記事で書きましたが「メロディだ!」と気合いが空回りしてガンガン吹きすぎないように注意しましょう。
あくまでも軽く、メリハリのあるリズム感で演奏することが大切です。まだまだ曲が始まったばかり。盛り上がってくるのはもっと後半です。
しかし、手抜きをした演奏をするのではありません。このようなポップス特有のリズムの時、楽譜に何もアーティキュレーションが書かれていなかったとしても以下のように演奏するのが良いと思います。
楽譜にするとこのような演奏だと良いかな、と思います。音色は軽く、しかし、タンギングやブレスコントロールを上手に使ってキレのある演奏を心がけて下さい。
[20小節目〜(全パート)]
いわゆる「バッキング」です。
このような拍のアタマから出てこないリズムは、ちょっとでもユルい演奏をしてしまうと単なる邪魔な音になってしまいますから、できるだけシャープに、リズムに厳しく吹いて下さい。
こういったリズムを演奏するために必要なことは、
「拍のアタマにはすでにタンギングも息もスタンバイしている状態」
であることが大切です。
息を体に取り入れて、みぞおちに力を集中させた(=みぞおちがふくらむ)時、タンギングの準備も完了(舌先が歯の裏周辺にくっついて待機)していると、肺から舌先まで息の圧力が高まってきます。その状態を変えずに(みぞおちの力を緩めることなく)楽譜のリズムに合わせて舌だけを離す(=タンギング)と、キレのあるタンギングをすることができます。
同じ動きをしているトロンボーンと同じ表現になるまでしっかりと練習をしましょう。
音の出し方、処理の仕方というのは方法のすべてが「奏法」と言えます。
ですから、「タンギングとはこうでなければならない」とか「呼吸というのはこの方法しかやってはいけない」と考えてしまうと表現の可能性を減らしてしまいます。
その場その場に合った奏法で臨機応変に演奏するようにしましょう。
[練習番号B〜C終わりまで(全パート)]
ここからカップミュートでの演奏になります。
ミュートについてもこれまで課題曲の解説でも出てきました。
詳しくは過去の記事
「ミュート1」
「ミュート2」
を読んでもらうとして、ここではいくつか簡単に解説します。
■ツボにはまらないと鳴らない
ミュートを付けて演奏した時、頑張って吹いても音量が出ない、なんて方いませんか?カップミュートの場合、なんかモコモコしてて聴こえているのか何なのかわからない、といった状態。
「ミュートが悪いんじゃ?」と考える方も多いのですが(実際コンディションの悪いミュートかもしれませんが)、ほとんどの場合、吹き方に問題があります。それは
「ツボにはまった音が出せていない」
ということ。
「音のツボ」については過去の記事「ハイノート(ハイトーン)へのアプローチ6」を読んで頂ければと思いますが、通常の状態以上にミュートを付けるとこの「ツボ」にはまっているかどうかが顕著に音に出ます。しかし、この現象はツボに当たっている状態を見つけやすいとも言えますので、個人練習の時にぜひミュートを付けて練習してみて下さい。ミュートから「ビーン」とはっきりした音が出たら、その吹き方のままOpenにして音を出してみましょう。
上手くいけばしっかりした「鳴る音」を手に入れることができるかもしれません。
■ピッチ変化
メーカーやミュートの種類でも変わりますがOpenの時に比べるとピッチが高くなったり低くなったりするのはご存知かもしれません。
ベルに詰め物をするわけですから、この変化はある意味「しかたのないこと」です。ですので、可能な限りチューニングスライド(主管)の長さで調節できるのが良いと思います。
決してアンブシュアやプレスでピッチを修正しないようにしましょう。これをしてしまうと「鳴る音」が出せなくなります。
■ミュートのつけはずし
ミュートをつけたりはずしたりが短い時間で行われていますので、いちいち床に置くなどをすると面倒ですね。この方法については過去の記事「ミュート1」に掲載しているのでぜひ読んでみて下さい。
[練習番号D 3小節目〜]
この箇所のようにアクセントが続いていた場合、テヌートぎみに吹くと効果的です。
しかし、決してベタベタした音を並べるのではなく、それぞれの音が前に進む力(=音のベクトル)を持っていることが大切です。
このことに関しても過去の記事「タンギング5(息のタンギング練習)」を参考にして下さい。
[練習番号 D〜(全パート)]
また、この部分はダイナミクスがどんどん変化します。
楽譜には書いてありませんが音量の切り替わりが明確である「Subito(スービト)=すぐに」の表現でできると面白いのではないかと思います。
客観的に聴いて「音に立体感がある」演奏ができると良いですね。
[練習番号G 1小節前(全パート)]
これまでにも何度か解説してきましたが「聴衆とのギャップ」というのがあります。自分ではしっかり楽譜に書かれている演奏をしていても、お客さんには届いていないという現象です。スタッカートをしているつもりでも、客席ではかなりユルく聴こえていたり、大きな音で吹いているつもりでもお客さんの耳には届いていない、など。
簡単にまとめるとこんな事が言えます。
「短い音は長い音より聴こえにくい」
「低い音は高い音より聴こえにくい」
この小節の最初の音は五線下の「Bb」ですが、次の小節ではオクターブ半ほど上までメロディがいきますね。そうすると、音が高くなっていくにつれてトランペットの音が聴こえてきてしまう(最初が聴こえず、cresc.しているような演奏になってしまう)という現象がおきやすいんです。自分の中では均一に吹いているつもりでも結果はバランスの悪いメロディの流れになりがちな箇所です。
この場面の場合、最初のBb音を一番鳴らすように心がけると、トランペットが入ってきたというアピールがしっかりできるので、お客さんの耳には「ああ、トランペットがここから入ってきているんだな」という印象を植え付けることができます。一度トランペットの音が耳に入ってしまえば「演奏し続けている」という認識を与えやすいので、とにかく最初の音が聴こえているかが一番肝心です。
[練習番号H 1小節前(全パート)]
ここに書いてあるallargando(アラルガンド)については過去の記事「吹奏楽コンクール課題曲2013トランペット解説【4.エンターテインメント・マーチ/川北栄樹】その2」の「練習番号 I 3小節前(全パート)」に詳しく書いてあります。ぜひ読んでみて下さい。
[練習番号H〜(全パート)]
この部分もアクセントがほとんどの音に書かれています。先程の[練習番号D]では「テヌートぎみに吹く」と書きましたが、ここでは「軽く音を抜く(音を張りっぱなしにしない)」イメージで演奏すると良いかと思います。
しかし、単に音を抜くと考えると、まるで田植えをしているかのように音を一個一個置いてしまいがちです。そうならないように「すべての音のベクトルを前に前に意識して演奏する」イメージを強く持って演奏して下さい。
そして、タンギングを明瞭にし、キレのあるスピーディな音を表現しましょう。
このスタイルは「95小節目のGrave」に入るところまで続きます。
[練習番号H 10,12小節目(全パート)]
最初この2つの小節を見た時、浄書ミスかと思いました。難しいリズムではありませんが、書き方がわかりにくいので気をつけて下さいね。
[95小節目Grave(全パート)]
この場所は[練習番号D 3小節目〜]と同じ解釈で良いと思います。そして、その後にある「Allegro 3小節目」の裏拍の音は音を張りすぎないようにしましょう(練習番号Hと同じ)。
[最後のGrave]
この音はしっかりと張った音で出したいのですが、多分一番悩むのが下向きのグリッサンド指示でしょう。
この場合のように音符にくっついていないグリッサンドは「次の小節の最初の音にめがけて落ちていく」表現を求められています。
ですから、すぐにピッチを下げるのではなく、次の小節に入る少し前に「ピッチが落ちてきているぞ!」ということが客席に伝わればそれでいいのです。
ということは、頑張って沢山の音を含める必要はなく、むしろ「たどり着いたAb」の音をしっかりと演奏するほうが大切です。
グリッサンドが効果的に演奏できる楽器は他に沢山あります。ですので、ここで出しゃばる必要はありませんから「結果として楽譜に書いてあるように聴こえる」のであれば良いのです。
ぜひ合奏などを録音してみて、グリッサンドが「バンド全体として」効果的に聴こえているかを確認してみて下さい。
ということで今回は課題曲3.復興への序曲「夢の明日に」の後編でした。
コンクール課題曲ではありますが、真面目になりずぎずポップスの楽しさを充分に発揮して客席まで届けられるように演奏して下さいね!
ブログを読んでもいまいち理解できない、もっと詳しく実際の演奏で学んでみたいという方はぜひ僕が講師をしている「プレスト音楽教室」までいらして下さい。
特設の「吹奏楽クラス」というのがあって、入会金など不要の1回から受講できる講座があります。お一人でもトランペットパート全員でもレッスンができますので、特にこの作品はパートみなさんでレッスンができるととても良い結果を得られるのではないかと思います。
詳しくは「プレスト音楽教室オフィシャルサイト」をご覧下さい。
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プレスト音楽教室へ行くのは距離的に難しい、という場合は学校等へ訪問することも可能です。毎年コンクールシーズンになるといくつかの学校におじゃましています。詳しくはこちらのメールフォームにご連絡下さい。
それでは、次回からは他の課題曲についての解説を行います。
また来週!
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at 08:19, 荻原明(おぎわらあきら), 吹奏楽コンクール課題曲2013
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2013.06.11 Tuesday
吹奏楽コンクール課題曲2013トランペット解説【3.復興への序曲「夢の明日に」/岩井直溥】その1
>>課題曲解説についての進め方や曲を吹く前など個人練習でしておきたいことをまとめた記事【はじめに/最初にすべきこと】をお読みでない方はこちらからどうぞ。
みなさんこんにちは!
只今2013年度吹奏楽コンクール課題曲トランペットパートの解説を行っています。課題曲解説とは言っても、様々な楽曲の演奏に役立つ内容にしていますので「この課題曲やらないし」「課題曲は吹かないので」という方もぜひ一度目を通してみて下さい。
ということで今回から課題曲3『復興への序曲「夢の明日に」』について書いていきます。
《岩井直溥さん》
吹奏楽で楽器を演奏している人にとってこの岩井直溥さんという方の作・編曲作品を演奏したことがない、というのはかなり稀(まれ)ではないでしょうか。それほどまでにこの方の楽譜は本当に沢山ありますし、今も多くの団体で演奏されています。
今でこそいろんな方が編曲していますが、昔のニューサウンズ・イン・ブラスの楽譜はすべて岩井さんが書いていました。
ディズニー・メドレー(1作目)、ウエスト・サイド・ストーリー・メドレー、コパカバーナ、シング・シング・シング...本当に沢山の作品を僕も演奏させてもらい、吹奏楽がとても楽しいものだ、と教えてくれたきっかけを作って頂きました。
そして、岩井直溥さんの編曲の特徴のひとつに「楽曲が様々なスタイルに変化していく」というのが挙げられると思います。
例えば、ディズニー・メドレー(1)の中に出てくる「狼なんて怖くない」はディキシーランドジャズのスタイルになっています。岩井さんの編曲には、よくこのディキシースタイルがありましたが、当時中学生だった僕はこのスタイルをまったく知りませんでした。
もしかすると、吹奏楽をやっていなかったら、岩井さんの編曲作品に出会っていなかったら、このディキシーだけでなくいろんな音楽のスタイルを知らずに今も生きてきたかもしれません。この経験は「ただ楽譜に書いてある音符を追いかけて音を出すだけでは音楽は完成しない」「音楽のスタイルに合わせた演奏をしなければ曲は活きてこない」ということを学びました。
「音楽のスタイルに合わせた演奏をする」というのは例えて言うなら浴衣を着て盆踊りをするようなもので、これがもしドレスで盆踊りだったらとてもおかしいと感じますよね。音楽スタイルにはそれぞれ特徴があり、そのスタイルに合った吹き方をしなければいけないんですね。
《スタイルの変わる作品》
そしてこの課題曲。こちらの作品も岩井さんおなじみの、様々に音楽スタイルが変化するのが特徴的です。
Moderatoから始まり、練習番号Dでテンポが上がったかと思えばすぐに「Slow Ballad」に変化します。その流れを引き継いで練習番号Fからは「Moderatly Slow Rock」に。練習番号Hから「Bright Tempo(Show Music Style)」という指示があり、最後はGrave→Allegro→Graveで終わります。
これらの演奏指示を単に「テンポが激しく変化する」と思うだけでなく「スタイルの変化」に着目しなければいけません。
特に「Slow Ballad」「Moderatly Slow Rock」「Bright Tempo(Show Music Style)」この3つはしっかりと理解しておく必要があります。
ただ、これらはいわゆるポップスによく使われるスタイルです。なのであまり理屈っぽく理解するよりもか(もちろんしっかりと学ぶことは無駄ではありませんが)どんな作品(ジャンル)にそれらの言葉が使われているかを知った上で自分なりのイメージを膨らませると演奏しやすいのではないでしょう。
では、ひとつずつイメージをしてみましょう。
《バラード》
練習番号Bからの「Slow Ballad」。いわゆる「バラード」ですね。これはよく聞く言葉なのでイメージしやすいでしょう。
カラオケで歌うタイミングが難しい(と思っているのは自分だけ?)スタイルの音楽ですよね。
みなさんもポップスは沢山聴くでしょうから、きっと何かしらの「バラード」作品を知っているはずです。
バラードは基本的にはゆったりとしたテンポで「歌詞の内容をしっかり伝える」楽曲が多いように思います。そして「愛」や「恋」をテーマにした曲がほとんどではないかと思います。
当たり前ですがこの課題曲には歌詞が付いていませんし、本当の意味での(定義としての)バラードは別に愛や恋についてだけを歌っていたわけではありませんが、練習番号Eからのアルトサックスのメロディやバンド全体の音の響き、音楽の流れを皆さんそれぞれがイメージする「バラード」というスタイルに当てはめて演奏すると、心のこもった作品になると思います。
イメージするのはどんなものでも構いません。先程書いたように好きなアーティストの歌う歌詞でも良いし、恋愛ドラマや映画でも良いでしょう。あなた自身が今経験している恋愛そのものでも、妄想でも良いでしょう。
大切なことは「イメージしたものを演奏に反映させる」簡単に言えば「心を込めて演奏する」ということです。言葉で言うのは恥ずかしくても演奏で表現することは恥ずかしくないですよね。
ただ、ここまで書いておいてなんなんですが残念ながら練習番号Eにトランペットの出番はありません(笑)
しかし、次に続く練習番号Fへは流れるように曲が進んでいきますし、トランペットがメロディを担当していますので、そこへバラードのイメージを与えていければ良いと思います。
《ロック》
練習番号Fに出てくる「Rock」という言葉、これも皆さん聞いたことがあるでしょう。
ただ、聞いたことがありすぎて、具体的にどんなものなのかイメージがしにくいかもしれません。実際、「ロック」ってどんなジャンル?と聞かれると、今ではほとんどのいわゆる「(ロック)バンド」がこのスタイルで演奏をしているので、定義付けるのはちょっと難しいですよね。ただそれらすべてのバンドが「ロック」スタイルで演奏しているかと言われればそれも難しいところです。
とりあえず「ロック」のイメージを固めたいですよね。これも起源やら歴史を詳しく調べなくても良いかな?と思います。それよりも具体的に誰もが「ロック」と認めるようなアーティストの演奏を聴いたほうがわかりやすいですよね。例えを挙げるならば「ビートルズ」「ローリングストーンズ」「エルヴィス・プレスリー」など、アメリカやイギリスで流行した音楽でしょうか。
若い方はあまり触れたことのない(かもしれない)これらのアーティストの演奏をぜひ聴いてみて下さい。カッコイイですよ。
で、スタイルについてですが、「ロック」については編成から見てみましょう。
ロックバンドと呼ばれる編成は、ヴォーカル、ギター、ベースギター、ドラムを中心として、キーボードなどの鍵盤楽器やホーンセクション(サックス、トランペット、トロンボーン)が入ることもあります。これらの楽器にはそれぞれ特徴的な役割を持っていることはイメージできるでしょう。
では、もしあなたがロックバンド編成の作品を吹奏楽に編曲して下さい。と言われたら基本的にどの楽器に役割を分担させますか?
僕だったらこうなるでしょうか。
ヴォーカル →すべての管楽器(臨機応変)
ギターのコード→ホルン、トロンボーン
ギターソロ →サックス
ベースギター →低音楽器全般
ドラム →ドラム
ドラムセットはそのままドラム(もしくは複数の打楽器)だという点に着目して下さい。この楽器はほとんどの吹奏楽バンドが持っていますよね。
何が言いたいかおわかりでしょうか。ドラムセットという楽器は、吹奏楽の編成で演奏してもオリジナルとまったく同じアピールができる(可能性が高い)んです。ですから、ロックスタイルを表現する際にドラムのもつ表現やリズムが鍵を握っていると考えます。
この課題曲のスコアを持っている方はぜひ見てほしいのですが、打楽器にドラムセットが存在しています(ドラムがない場合はスネアとバスドラムで併用可)。そして、場面が変わるごとにドラムの演奏するリズムも大きく変化していますよね。
私たち管楽器奏者はどうしても自分のパート譜だけを見て演奏するので、他のパートが何をしているのかという意識が薄くなりがちです。しかし、アンサンブルをする全ての楽器は決して無関係ではありませんから、合奏中は耳を全ての楽器にも向けられるよう、そしてスコアを読む習慣を持つことがとても大切になります。
特にこの作品のようなドラムセットがある場合、スタイルだけでなくテンポを司っている司令塔のような存在ですから(指揮者よりもテンポを操作する力が強い)、無視して演奏することはできませんし、してはいけません。
ですので、この楽曲を演奏する時はドラムの演奏が音楽の中心になるよう意識してみてください。
ドラムを担当することになった方は頑張って下さいね!
また、ロックのリズムは「アップビート」が基本になりますので、クラシック音楽のような(4拍子の場合)1,3拍目が強拍ではなく、2,4拍目が強拍になります。と言ってもこの作品の場合あまりアップビート感が強くないのですが、メロディ以外の部分で若干そのニオイがしているので、他の楽器にも耳を傾けて演奏できると良いと思います。
とにかく、前向きなベクトルを感じながら重いビート感にならないようにしましょう。
《Show Music》
練習番号Hからは「Bright Tempo(Show Music Style)」という指示が書いてあります。
Brightというのは「輝く」などの意味を真っ先に思い浮かぶと思うのですが、音楽的な意味、しかも書いてある場所が五線の上ですのでテンポに関連した言葉と考え「生き生きとした」「活発な」と捉えます。
同じような意味でよく使われる楽語に置き換えるなら「Allegro」ですね。
そして( )の中に書いてある「Show Music Style」ですが、これはどのような意味なのでしょうか。
ショウ・ミュージック、みなさんはどのようなイメージを持ちますか?
多分、近いのはこんな感じではないかと思うのですがいかがでしょうか。
これはミュージカル版と映画版の「シカゴ」です。こういったいわゆる「ブロードウェイミュージカル」であったり、宝塚であったり、ショウ・ミュージックってこんなイメージがあります。
そして結構古い作品ですがニューサウンズにこんな作品もありました。
みなさんの中には演奏したことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。「ハリウッド万歳」という曲です。これも実は岩井直溥さんの編曲によるものです。
ともかく、ミュージカルなどショウ・ミュージックの音楽はとにかく「ワクワク」する雰囲気と若干の高級感を個人的に感じます。
ですから、この課題曲を演奏する時には「これから始まるいろいろな何かにワクワクする」そんな前向きな雰囲気が出せるといいかな?と思います。そういった雰囲気はタイトルからも伺えますよね。
《鳴らしまくりたくなる?》
僕が中高生の時、吹奏楽部のコンサートでポップス曲を演奏すると、どうしてもめっちゃくちゃ鳴らしたくなって自爆していたことを思い出します。
コンサートは他にも沢山の曲を演奏しますから、パワープレイの代償としてすぐにバテてしまう結果に終わってしまっていました。
みなさんはどうですか?同じ経験したことありませんか?
なぜガンガン吹きたくなっていたかというと、こういう曲のオリジナル音源ってすごい音量で吹いているイメージがあるからなんです。いわゆるスタジオ系と呼ばれるプレイヤーの演奏。
もちろん、生で聴いても結構な音量、音圧で吹いてはいますが、決して乱暴な演奏ではありません。ポイントになるのは「音を維持している時の圧力」であったり「音の立ち上がり(と処理)がクラシック以上にクリアで強い」という点でしょう。
中高生の時はそんなことまったくわからなかったので、とにかく大きな音量で吹くイメージしかなく、自分の限界を超えた吹き方をしていたんです。そりゃ自爆しますよね。
ポップス系の音楽を演奏する時も、この課題曲を演奏する時も、気合いが空回りしないように気をつけましょう。
そしてメリハリのある発音や音圧で吹くために必要なことは「明瞭な発音」と「楽器に合わせたブレスコントロール」「鳴る音を出す」ことが大切です。
舌に力を込めて思い切りタンギングをしたところで、クリアな発音を得ることはできません。日常の会話で考えてみればすぐにわかるでしょう。舌に力が入ってもただツバが飛ぶだけです。滑舌の良いキレイな発音をする時、舌や口の中がどうなっているのか、今一度考えてみて下さい。
参考までに過去の記事カテゴリー「タンギング」をぜひ読んでみて下さい。
そして「楽器に合わせたブレスコントロール」というのは、トランペットの中に一度に入れられる息の量を理解することです。自分の体の限界の息の量を楽器に押し付けて「さあ鳴れ!」と吹いたところで楽器は反応してくれないのです。
トランペットが一番良く鳴ってくれる吹き方を奏者のほうが合わせにいかなければいけないんですね。
自分本位ではなくトランペットのことを考え、息を入れてあげれば最大限のパフォーマンスをしてくれるはずです。
ということで課題曲3の前半記事は「音楽のスタイル」について中心に書いてみました。
どんな楽曲を演奏することになっても、その作品が一番活きてくるスタイルを理解して演奏しなければ聴いている側は面白くありません。楽譜に書いてある情報をただ再現するだけでは本当の意味での音楽にはならない、ということなんです。
コンクール前だから集中するんだ!と言ってコンクール曲ばかり吹いたり聴いたりするのは視野を狭くしてしまい、あまり良いこととは思えません。なので、これからコンクール練習がどんどん大変になってきますが、ぜひ沢山のジャンル、スタイルの音楽を聴いて楽しんでみて下さい。
ブログを読んでもいまいち理解できない、もっと詳しく実際の演奏で学んでみたいという方はぜひ僕が講師をしている「プレスト音楽教室」までいらして下さい。
特設の「吹奏楽クラス」というのがあって、入会金など不要の1回から受講できる講座があります。お一人でもトランペットパート全員でもレッスンができますので、特にこの作品はパートみなさんでレッスンができるととても良い結果を得られるのではないかと思います。
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プレスト音楽教室へ行くのは距離的に難しい、という場合は学校等へ訪問することも可能です。毎年コンクールシーズンになるといくつかの学校におじゃましています。詳しくはこちらのメールフォームにご連絡下さい。
それでは、次回も課題曲3を解説していきます。
引き続きお読み下さい!
それでは!
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at 06:52, 荻原明(おぎわらあきら), 吹奏楽コンクール課題曲2013
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2013.06.04 Tuesday
吹奏楽コンクール課題曲2013トランペット解説【4.エンターテインメント・マーチ/川北栄樹】その2
>> 課題曲解説についての進め方や曲を吹く前など個人練習でしておきたいことをまとめた記事【はじめに/最初にすべきこと】をお読みでない方はこちらからどうぞ。
みなさんこんにちは!
今回も課題曲の解説を行います。前回に引き続き課題曲4「エンターテインメント・マーチ」の解説、後編です。今回は具体的に演奏や練習の仕方について書いていきますね。
※前回の記事をお読みでない方はぜひ読んでみて下さい。こちらをクリック!
[冒頭(全パート)]
冒頭1拍目にある付点音符は軽快に、あまりキツい音にならないように注意しましょう。前回の記事でも書きましたが、この作品はとにかく他のパートと同じことをしていたり、同じトランペット内でもオクターブやユニゾンが多発します。その際、メロディ(主旋律)だからといって、いきりたって演奏をしてしまうと、木管楽器のサウンドをかき消してしまう可能性があります。そうならないよう、常に「一緒に演奏している他の奏者の音が自分の耳に聴こえてくる状態以上に音量を大きくしない」というスタンスを基本とし、ここぞというところではトランペットの威力を発揮できるようなメリハリのある演奏をするように心がけると「うるさいラッパ」にならないと思います。
[3小節目(全パート)]
この小節まではTutti(トゥッティ:全員)で演奏をしていますが、練習番号Aからいきなり木管楽器だけの静かなテーマが始まります。
トランペットのパートだけ見ると、この先にあるメロディまで吹きたくなってしまいますが、強制的にトランペット等の演奏をストップさせるオーケストレーションになっています。
こういった手法はスーザのマーチなどでも見ることはあり、決して珍しいことではありませんが、作曲者としては多分「このまま盛り上がっていくと見せかけて意外にも落ち着いたマーチにしてしまおう」という雰囲気を感じますから、トランペットパート(その他金管パートも)としてもその期待に沿っていきたいところです(違う解釈もあるでしょうが、僕はそう思いました)。
ですので、練習番号Aに向かって音量を抑えていくのではなく、楽譜には書いてありませんがむしろcresc.をしていくくらいに演奏したほうがその先とのギャップがより明確になって面白いと思います。
これと同じ手法が[練習番号I]にも出てきます。
ちなみに、冒頭は1stのオクターブ下を2,3rdがユニゾンで演奏しているパターンです。前回の記事でも書きましたが、この作品はこういった箇所が多発しますので、音量バランスとピッチには充分注意しましょう。
基本的に、オクターブ下を演奏しているパートは、上のパート以上に音量も音の重量感も大きいほうがいいのですが、このアレンジの場合はすでに下のパートが倍いる書き方をしていますので、むしろあまりコントロールをして吹かないほうが良いのかもしれません(バランスの良い編成であるなら、全ての奏者が同じレベルで演奏すれば良いのかも)。
このことについては前回の記事にもアドバイスを書いていますのでぜひ読んでみて下さい。
[練習番号B〜(全パート)]
ポップス系の音楽によく出てくる、いわゆる「バッキング」です。
不思議な事にこのバッキングはこれ以降出てくることがありません。気が変わってしまったのか、忘れてしまったのか...作曲者のみぞ知ることではありますが、せっかく出てきたので印象深く演奏したいところです。
バッキングの時に大事なことは「クリアで立ち上がりの早いタンギング」と「瞬間的な長さの音であっても中身の詰まった音質であること」この2つが挙げられます。
8分休符や16分休符があってから(裏拍から)音を出すわけなので、鈍い発音や後押しのような吹き方をしてしまうのは作品そのものを台無しにしてしまいます。
ですので、まずはクリアで立ち上がりの早いタンギングをしなければならないのですが、タンギングについては過去の記事に沢山書いています。ぜひカテゴリー「タンギング」を読んで練習をしてみて下さい。
カテゴリー「タンギング」
ここでもひとつ解説しておくと、休符からの(裏拍からの)演奏の場合「音を出すタイミングと関係なく演奏準備は拍の頭に完了している」状態にすることが大切です。
言い方を変えれば「拍の頭から音が出せる状態で待ち構えている」となります。
タンギングでアパチュアへ流れる息の意味を遮断し→みぞおちから舌先までの息の圧力を高め→音を出すタイミングで舌のロックをはずす、という演奏方法でいくとクリアで強烈なタンギングをすることができます。
練習番号Bの6小節目前半でバッキングは終了しますので、それ以降の発音の仕方との差別化を図って下さい。
[練習番号C(全パート)]
この箇所はトロンボーン、テューバなどの中・低音楽器のメロディの応答のような形で、後から追っかけて演奏します。
スコアを持っているとすぐわかると思うのですが、メロディも追っかけもすべてユニゾン(オクターブ含む)なんですね。
バンド全体にハーモニーというものがほとんど存在していませんので、ここはとにかく安定したピッチで演奏することがとても大切になります(ちょっとピッチがずれただけでバンド全体が濁ったサウンドになりがち)。ピッチに関しては前回の記事でも書いて、リンクも貼っていますのでそちらを見て下さい。
とにかく、このようなオーケストレーションになっている以上、奏者全員が同じイメージの下で演奏をしていることが大切なので、ただ単に楽譜に書いてある音符を追いかけてるだけ、みたいな演奏にならないよう注意して下さい。
基本的には2拍前から先に演奏している同じメロディの人たちがどんな演奏をしているかによって、それに答えていくような姿勢でいられると良いと思います。
また、吹きやすくて鳴らしやすい音域ですので各自音量バランスにも充分注意してください。トロンボーンがあまりに鳴らしていて、負けるものかとガンガン吹くのではなく、バンド全体が良いバランスで演奏するように心がけましょう。
先程、ハーモニーがほとんどないと書きましたが、木管楽器が裏打ちで演奏していますから、可能であるならその音もきちんと客席まで届かせてあげられるといいですね。
木管のサウンドを終始潰してしまう演奏をする金管奏者は嫌われます。笑
これらは練習番号Dも同じです。
[27小節目〜(全パート)]
またしてもこの場所にしか出てこないほんの数拍のカップミュートです(意味あるのか無いのか...)。まあ、書いてあるのでやるしかありませんが、こういったミュートのつけはずし前後の間隔が短い時ってセッティングに焦りますよね。
そうならないために、例えばミュートホルダーをみんなで買い揃えるとかも方法ではありますが、そんなお金をかけなくても効率的に負担なくミュートのつけはずしを行う方法があります。
[練習番号E2小節前(全パート)]
こういったいわゆる「ブリッジ(つなぎ)」がこの場所以外にも沢山出てきます(練習番号F2小節前、練習番号H、78小節目、練習番号K2小節前)。この小節の形もこの先に2回出てきますが、言ってしまえばマーチやファンファーレによく出てくるリズムパターンですよね。
しかし、意外にこういったパターンのリズムを効果的に演奏できていない人が多くいます。
具体的に言うと、付点4分音符をギリギリまでひっぱって吹こうとしてしまうことなのですが、そうしてしまうと後に続く16分音符2つの音への威力がなくなってしまうんです。
過去の記事に「短い音は長い音よりも客席に届きにくい」ということを書きました。それがまさにこの箇所で、すべての音を均一に聴かせようとした場合には、16分音符をかなり強く演奏しなければなりません。そのために、付点4分音符は少しだけ早めに切り上げて若干空間を作ってから(溜めを入れてから)クリアに強い発音で演奏するように心がけて下さい。
ちなみにこのフレーズは課題曲2「祝典行進曲『ライジング・サン』」にも出てきますので、その時にも改めて書こうと思います。
[練習番号Hアウフタクト〜(全パート)]
このブリッジにあたる箇所もやはり1stのオクターブ下で2,3rdがユニゾンという形になっています。
トランペットだけで唐突に演奏するファンファーレですから、メリハリのある印象的なアウフタクトで演奏できると良いですね。
真ん中に16分休符のある付点のリズムに関しては、課題曲1「勇者のマズルカ」で解説していますのでそちらを読んでみて下さい。
参考までに譜例を再掲載しておきます。
練習番号Hに入った後は、トロンボーンやサックスなどが動き始めますので、その音がしっかりと客席へ届けられるようにがむしゃらにF音のロングノートを張りっぱなしにしないように気をつけましょう。ただし、音を抜くとかfpのように音量を抑える必要はありません。この部分も「他のパートの音が自分の耳にきちんと聴こえている状態」でいられれば自然とトランペットパートも他の動きのあるパートもバランス良く聴こえてくるはずです。
[練習番号 I 3小節前(全パート)]
molto allargandoの指示があります。moltoは「非常に」という意味、allargandoはrit.+cresc.の意味ですが、この部分に限らず楽語というのは単純な「機能」として把握するのではなく「作曲家はどのように演奏して欲しくてこの楽語を書き記したのか」を考え、それでは「自分はこの部分をどのように演奏したいか」というイメージをしっかり持ち、それを表現できるように練習をすることが大切です。
その「自分なりの解釈からの表現」が演奏に反映されるようになってから合奏に臨みましょう。そこで自分の演奏がOKならば指揮者からは何も言われないでしょうし、指揮者が違った解釈を持っていれば何か指摘があるかもしれません。
しかしその「指摘」は「お前の演奏はダメだ」という意味で言っているわけではなく「指揮者(曲作り責任者)としてはこのように作りたい」というメッセージですので「間違った!」とショックを受ける必要はありません。大事なことは「まずは自分なりの解釈で作品を完成されること」であって、言い方を変えれば「何のイメージもなく楽譜に書いてある情報だけを再現する機械的な演奏」や「指揮者からの指示待ち」「受け身の姿勢」で合奏に挑むのは非常に良くありません。
例えばこのallargandoは、rit.とcresc.が組合わさっている結果「壮大さ」や「テンションの高ぶり」などを感じられることができます。そのイメージをどんな演奏で聴く人に伝えるか、そういった練習を積み重ねることが大切です。
また、具体的な演奏方法としてrit.(リタルダンド)は徐々にテンポが落ちてくるわけですが、言い換えれば「(音楽の)時間の経過が遅くなる」とも言えます。
ということは、同じ8分音符という記号であっても速いテンポの音楽と遅いテンポの音楽に書かれている8分音符は、音を鳴らし続ける時間の長さが違いますよね。
ですから、rit.によってだんだんテンポが落ちてきたら「同じ8分音符であっても次第に長い音になってくる」と考えるのが自然な演奏につながります。
よく、テンポだけ遅くして、各音を鳴らす時間を変えないで演奏をして、音と音の隙間ばかりが空いてしまう演奏をしている人をみかけますが(そういった指示があり意図的に演奏している場合もアリ)、基本的な解釈としては間違っていますので、この作品に限らずrit.が出てきた時には注意して下さい。
したがってこの部分では「cresc.をかけながら徐々に音を重く引っ張って演奏する」のがひとつの方法(イメージ)だと思います。もちろん、解釈はこれだけではありませんから最終的には指揮者のイメージするもの、指揮者の指示通りに演奏するようにして下さい。
[練習番号K2小節前アウフタクト(全パート)]
他の全ての楽器からトランペットがメロディを一手に引き受けるというオーケストレーションになっています。
ダイナミクスとしてはffですが、だからと言って何も考えず「バカデカい」音で演奏するのはセンスが良いとは言えません。
トランペットが演奏を始める2小節前から他の楽器がcresc.をかけていますから、その盛り上がった結果のffであると理解し、自然な流れになるように演奏しましょう。
こういったこともフルスコアがないとわかりにくいことですよね。やはりフルスコアを各自持って全体像を把握しておくことはとても大切なことだと思います。
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ただ、指揮者によっては「飛び抜けてトランペットを鳴らす」なんてイメージを持って指示をしてくる可能性もあります。それも先程書いたように最終的には指揮者の指示に従いましょう。
ということで特徴的な部分を挙げてみました。
今回書いていない箇所については、上記に解説したどれかに当てはまりますので、そのつど疑問が出てきたら読み直してみて下さい。
読んでもいまいち理解できない、もっと詳しく実際の演奏で学んでみたいという方はぜひ僕が講師をしている「プレスト音楽教室」までいらして下さい。
特設の「吹奏楽クラス」というのがあって、入会金など不要の1回から受講できる講座があります。お一人でもトランペットパート全員でもレッスンができますので、特にこの作品はパートみなさんでレッスンができるととても良い結果を得られるのではないかと思います。
詳しくは「プレスト音楽教室オフィシャルサイト」をご覧下さい。
プレスト音楽教室トランペットクラスのページはこちら
プレスト音楽教室吹奏楽クラスのページはこちら↓
プレスト音楽教室へ行くのは距離的に難しい、という場合は学校等へ訪問することも可能です。毎年コンクールシーズンになるといくつかの学校におじゃましています。詳しくはこちらのメールフォームにご連絡下さい。
ということで若干難しい感じで解説してしまいましたが、コンクールと言えども、課題曲と言えどもやはり楽しくなければ音楽ではありません。最終的には「演奏していて楽しい」ということが結果として「聴いていて楽しい」演奏になりますから、その点を忘れないように練習や合奏の段階なら楽しんで音楽をして下さいね。
課題曲2「エンターテインメント・マーチ」の解説は以上です。
次回は他の課題曲について書いていきますので引き続きお読み下さい!
それではまた来週!
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at 11:16, 荻原明(おぎわらあきら), 吹奏楽コンクール課題曲2013
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