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課題曲5 メタモルフォーゼ 〜吹奏楽のために〜/川合清裕 後編(吹奏楽コンクール課題曲トランペット解説)

 >> 初めてこちらのブログにいらっしゃった方、最初にこちらをお読み下さい






みなさんこんにちは!

只今、「吹奏楽コンクール課題曲トランペットパート解説2017」と題しまして記事を書いております。
すでに課題曲1「スケルツァンド」と課題曲2「マーチ・シャイニング・ロード」の記事は掲載していますので、以下のリンクよりぜひご覧ください。課題曲をご存知ない方にも理解でき、参考になる内容になっています。


==============================

課題曲1「スケルツァンド」/江原大介 前編
 演奏者はツアーガイド/楽譜を読む、ということ(テンポ、リズム、音の高低)

課題曲1「スケルツァンド」/江原大介 後編
 合奏は演奏者全員の個性を持ち寄る場/音をブレンドする?

課題曲2「マーチ・シャイニング・ロード」/木内涼 前編
 パート譜について/行進曲という音楽について

課題曲2「マーチ・シャイニング・ロード」/木内涼 後編
 拍のウラから入るときの吹き方/テンポが走ってしまう原因/ユニゾンを合わせるために大切な3つのこと

==============================


そして前回から課題曲5「メタモルフォーゼ 〜吹奏楽のために〜/川合清裕」について書いております。前回の記事はこちらからご覧いただけます。


《G線上のアリア》
突然ですがこちらをお聴きください。



J.S.バッハ作曲の管弦楽組曲第3番より「アリア」です。単発で演奏されるほうが圧倒的に多く、「G線上のアリア」というタイトルでご存知な方もたくさんいらっしゃることと思います。

では、ここで問題です。
この作品のオジリナルの楽譜はどうなっているのか、みなさんイメージしてみてください。


正解はこちら↓




音価が細かくて意外だった方も多いのではないでしょうか。

演奏から受ける印象からだと、とてもゆっくりな楽曲ですので、きっと楽譜もたくさんの白玉(2分音符とか)が並んだ白っぽい楽譜なのだろう、と無意識にイメージしてしまいがちです。

しかし、4/4拍子の曲を2/2で書くことができるように、同じ音楽でも、楽譜の書き方は何通りもあります(厳密にはまったく同じではありませんが、機械に演奏させれば同じになります)。


《課題曲5の楽譜》
楽譜というのは、作品に対する印象を操作する力を持っています。

楽譜に対する印象操作は、この課題曲5も同じです。

最初に楽譜(スコア)を見たときに、毎年のことですから覚悟はしていましたけど、やっぱり第一印象は

「楽譜、黒っ!!」

でした。
しかもよくよく見て驚いたのが、拍子です。いたるところに「32分の○○拍子」が出てきます。


(課題曲5 121小節目)

拍子の分母が32分音符なのって、多分見たのは初めてです。

なぜこんな細かい楽譜にしたのでしょうか。
とりあえず、これをもっと一般的な分母で書き直してみましょうか。



ああすっきり。



読みやすい。演奏に集中できます。


《楽譜の見た目から得られる印象》
吹奏楽部でトランペットを吹いていた頃の話。
A.リード作曲の「アルメニアン・ダンス パート1」の合奏練習時、最後の「ゆけ、ゆけ」の場面になった途端に木管楽器が猛烈なスピードで演奏し始めたことがあります。正確に言うと、16分音符が出てきた途端に、急激にテンポが上がった…むしろ、変わったと行ったほうがいいかもしれません。


8:20あたりから「ゆけ、ゆけ」が始まります。

「ゆけ、ゆけ」からお聴きになる場合はこちらから


アルメニアンダンスは最後の「ゆけ、ゆけ」の前の曲がとてもゆったりたっぷりなので、それぞれの曲に対する印象のギャップもあったのかもしれません。

しかし、理由はもっと他にあると思っています。

みなさんも経験がないでしょうか。手にした楽譜が16分音符ばかりで真っ黒だったときと、4分や2分音符ばかりの余白の多い楽譜のときでは受ける印象は大きく変わりませんか?

中でも、見た目が細かく、黒っぽい楽譜に対しては「速い」という印象を持ちやすいです。なぜなら「16分音符は速い=速く演奏しなければならない」と、無意識に感じてしまいやすいからです。

しかし、楽譜の見た目と実際の演奏から受ける印象が必ずしもイコールで結ばれるわけではありません。今回の記事の冒頭で紹介したバッハの「G線上のアリア」がそれを証明していますね。


《楽譜から得られるイメージが音楽に反映されている》
この課題曲5も同じことが言えます。そんなに大慌てで演奏するような場面はありません。拍子記号が32分音符である結果、連桁や旗が異常に多くなってしまい、楽譜が細かく、黒っぽい印象を受けるだけです。先程の譜例のように、もっとゆったりした書き方は本当だったらいくらでもできるはずなのです。

演奏者にとっても、ここまで旗や連桁が多い楽譜にされてしまうと、初見で演奏するのが非常に困難です。読みにくいし、リズムも読み間違えやすいです。記号が細かくなれば、スタッカートなどのアーティキュレーション記号も音符から距離が遠ざかってしまったり発見されにくかったりと、とにかく楽譜を読むのが大変です。

ではなぜこのように複雑な楽譜にしかのか。ここからは僕の憶測なので実際のところはわかりませんが、作曲者はそもそも「楽譜のややこしさから生まれる音楽」を求めているのではないか、と思うのです。

要するに、見た目を複雑な楽譜にすることによって演奏者の「緊張感」を生み出そうとしているのではないでしょうか。

こまごましている楽譜は「妥協が許されない雰囲気」を醸し出します。集中していないと間違えてしまったり、見落としてしまったりするその力そのものが演奏に反映されていくように考えているのかな、と勝手に思っています。

通常楽譜というのは、作曲者と演奏者の仲介役になるデータでしかありません。
しかしこの作品は、楽譜の存在も演奏に影響を与えるひとつの道具になっているような気がします。

毎年言っていますが、例えコンクールで演奏しなくても、課題曲5の複雑に書かれた譜面を読み、合奏で作り上げていく練習をすると、譜読みの力(スコアリーディングの力)やアンサンブルの力がつきますので、ぜひとも積極的に演奏してみてください。

ということで課題曲5に関してはここまでです。
次回は他の曲について書いていきます。

また来週!


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at 06:25, 荻原明(おぎわらあきら), 吹奏楽コンクール課題曲2017

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