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歯車の噛み合わせ 2

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今年も4月より開催!





みなさんこんにちは!

前回は、経験したことのない行動は非常に細かく、順を追って説明する必要がある、ということを書きました。
前回の記事をご覧になっていない方は、ぜひ「歯車の噛み合わせ1」を先にお読みください(こちらをクリック)

今回の記事は、多くの方が苦手(具体的な方法がいまいちわからない)高音域(ハイノート)を吹くことを例に、それぞれの歯車について、そしてそれらがどうのように関連しているのか、解説します。

これまでにトランペットで満足いく高音域を出した経験のない人にとってはその方法がわからないわけですから、順番にひとつひとつ解説する必要が出てきます。そして、そのひとつひとつは、まるで歯車の仕組みのようにすべてが関連し合い、結果へとつながっていくのです。


【ハイノートを出すための歯車とは】

ハイノートを出すために必要な条件は「アパチュアに流れる空気のスピードを必要なぶんだけ上げる」こと、それだけです。
そのための歯車は以下のようになります。



[歯車1:マウスピースの貼り付き]

まずひとつ目は「マウスピースと唇が貼り付いている状態」を得ることです。いわゆる「プレス」ですが、この単語はどうしても「押し付ける」「潰す」ような連想をしがちで僕は好きではありません。マウスピースと唇は「貼り付いている状態」がベストと考えます。

この「貼り付き」というのは2つの条件、「空気漏れしない」ことと「マウスピースの位置がずれない」が達成しているかであり、それ以外に求めることは特にありません。軽く当てるだけでもこの条件は達成しますので、確認してみましょう。


[歯車2:舌とアゴの柔軟性]

次に、舌やアゴが柔軟に、自由に動き回れる状態であるか、が必要です。舌とアゴの位置や形状によって、空気の流れるスピードを調節することができます。高音域の場合は空気の流れるスピードを速めるわけですから上顎と舌との間の空間を狭くすることが求められます。
そして舌が自由にうごくためにはアゴの協力なくしてはできません。


[歯車3:アパチュア]

空気の通り道であり、唯一の出口であり、音の発信源(=リード)でもあるアパチュアは、形状やサイズによって原型となる音色が変化するのですが、大切なのは、「アパチュアは空気の通り道として常に開いている」状態である、という点です。口周辺の力を強く込めて唇を密閉し、強い空気の力で唇をこじ開けた結果、唇を振動されるもの、と思っている方が非常に多いのですが、そうではありません。常に開いているようにしておきます。これはいくつかの歯車の中でも非常に重要な要素のひとつです。


[歯車4:腹圧]

いわゆる「腹筋」といわれる部分です。腸などがある下腹部は「腹腔(ふくくう)」という袋状になっていて、その周りをコーティングしている腹筋が収縮(=力がかかっている状態)すると腹腔内の空気圧が高まり、その上にある横隔膜が押し上げられます。すると、空気が貯蔵されている肺やその空気の通り道にも圧力がかかって、アパチュアへと空気が流れ、音になります。腹圧の力加減によって、空気の流れるスピードが変化しますから、この歯車のバランスコントロールはとても重要です。


[歯車5:ツボに当てる]

楽器が持っているそれぞれの最適な音を出すポイントを「音のツボ」と呼んでいます。無理な負担をかけずに空気の流れる方向に当てることでツボは見つかります。
音のツボは的(まと)の中心のような存在で、とりあえず的に当たりさえすればその音は一応出ます。中音域は的が大きいのですが、高音域になるにしたがって、的は小さくなり、中心以外が存在しなくなってくるので、すべての音域においてツボに当たり続けていなければ、ハイノートは出すことができません。
高音域と中音域で音の出しやすさが異なるのは、これが一番関係していると考えています。ですから、ツボに当たらなければ(演奏に使える)高音域は出せません。


[歯車6:ソルフェージュ]

心の中でこれから出す音、これから演奏するメロディの「最高の状態」を常にイメージしているかが、大切です。暗闇でどこにあるかわからない的に向かってヤミクモに矢を放つようなものであり、「なんだかよくわからないけど高い音出す!」ではまず当たりません。仮に当たったとしてもそれは偶然でしかありません。偶然では、根拠となるものを得られませんから、もう一度同じことをする、という再現ができないのです。


いかがでしょうか。ざっくり挙げてざっくりな解説でしたが、高音域を出すための必要な条件はこのようなものです(細かく言えばもっとあります)。

高音域を出すためには、これらの歯車どうしがかみ合って、連動していくことが必要です。どこかが存在していなかったり、噛み合っていなければ結果は伴いません。

例えば、歯車1の貼り付きがなければ、歯車2のアゴをうごかすことができません。唇が貼り付いていなければ、アゴをうごかした途端にアパチュアが急激に(不本意に)広がってしまい、音が出なくなるからです。


【とりあえず噛み合わせる】
完璧なハイノートを最初から出そうと思う必要はありません。
まずはすべての歯車が噛み合い、機能させることが先です。

仮にひとつひとつの歯車のクオリティが低く、噛み合いがぎこちなくても機能していれば、不安定で満足いかないかもしれませんが高音域が出ます。最初はそれで構いません。

そのスタート地点から、それぞれの歯車のクオリティを高め、より歯車どうしの噛み合い精度を上げていけば、方向性は脱線せずに効率よく伸ばせます。


今回は高音域について書きましたが、他にもタンギングとか、様々なテクニックはいくつもの歯車が噛み合った結果生まれたものです。
ですから、これから身につけていくテクニックや、もっと質を上げていくテクニックがある場合、それを構成している歯車ひとつひとつがいったい何なのかを見つけてください。

それがレベルアップのための大切な条件です!

ということで今回はここまで。
また来週!


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歯車の噛み合わせ 1

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今年も4月より開催!





みなさんこんにちは!

トランペットを吹いていて具体的にできないことや身についていないスキルを要求されると、「練習しなきゃ」と思いますよね。

しかし、練習を積み重ねてもなかなか思うようにいかないこと、よくありませんか?

何かを新しく身につけるというのはほとんどの場合時間がかかります。例えばレッスンを受けて、終わるころにはできるようになっているなどというまるで美容院で髪を切ってもらったかのような変化はまず起こりません。

「じゃあできるようになるまでもっともっと練習しなきゃ!」

この意気込みはとても素晴らしいことですし、技術習得や上達に必要な意志とも言えます。
が、やはり効率よく、できるだけ短時間で身に付けたいものですね。

そこで今回は「身につく」というのがどういったことなのか、できないことができるようになる変化を起こすために大切な考え方を書いてみたいと思います。


【歯車の噛み合わせ】
世の中にある様々な「うごき」は、歯車の噛み合わせのような働きで行われていることがとても多いです。



例えば、「コップを手に取る」といううごき。
客観的に見ていると単に「コップを手に取る」だけに思いますが、実際の体の中では、

「必要な関節、筋肉などが働いてコップに手を伸ばす→必要な関節、筋肉などが働いてコップを握る→必要な関節、筋肉などが働いてコップを持ち上げる」

このようにからだの必要な部分がそれぞれ働くことによって、結果「コップを手に取る」という行動になるわけです。

しかし、そんなこと考えてコップを手に取る人はいません。

「よし、次は肘の関節を曲げるぞ…よし。次は各指の関節を、おっと、中指の角度が足りていない、これでは落としてしまう。もっと深く、深く曲げなければ…」

こんな人いません。からだのパーツがそれぞれどのように働いているかではなく、「イメージ」や「見た目」で人間はほとんどの行動をインプットしています。
ですから、「コップを手に取る」という「行動の結果」を極めて簡潔に(言葉で)伝えるだけでほとんどの人はそれがどういうことなのかを瞬時に理解できますし、実際の行動に反映させることができます。


日常生活での行動のほとんどは、「行動の結果」を言語化していることに注目してください。

「歩く」「振り向く」「匂いを嗅ぐ」「舌を出す」など。

からだのどこがどう働いているかなんてわからないけれど、きっと全部できますよね。
なぜなら、これらは過去に何度も成功した経験を持っていて、さらに習慣的な行動として身に付けている「スキル(=身についている技能、技術)」だからです。

では、次はどうでしょうか。

「自転車に乗る(運転する)」

これは全員ができるわけではありません。自転車に乗ったことがない人には、あの細い車輪でバランスを取り続ける具体的なうごきはわかりません。

では次。

「トランペットでHigh Bbの音を出す」

僕のところに来る質問メッセージの9割が「高い音が出ません、どうすれば出ますか?」という内容です。なぜ高音域が満足に出せない人がこんなにも多いのでしょうか。
山のように情報があり、トランペット奏者の中にはもちろん高音域が出せる人もいる中で、出せずに悩んでいる人たちがそれ以上に多い。そしてなかなか解決しない。

これも先ほどの「コップを手に取る」話と関連付けてみると見えてくることがありそうですね。

コップを手に取ることは、すでに過去に経験をして成功もしているので、「からだがどのように働くとそれができるのか」を知っているからこそ、いちいち考えなくてもできているのです。しかし、未経験なことや、成功していないことはそれがわかっていないので、からだの具体的なはたらきがわかっていません。

仮にHigh Bbを出している人を間近で見ていても、それだけでは外見からのわずかな情報しか得られず、しかもその外見だけではからだのはたらきがどうなった結果なのかもわかりません(このときに自分の知っている方法で外見だけ真似してしまうことは、結論を得られずに苦労する未来が待っています。有名なジャズトランペット奏者の外見を真似てほっぺたを思い切りふくらましたり、目をぎゅっとつむったり、体をよじらせたりベルを真下へ向けて吹いたり。それが自分への負担になっていきます)。

そこで、誰かに高音域の出し方を教えてもらったり、調べてみたりすることになるのですが、そこで受け取る情報というのは、それぞれのからだの部分がどうなっているのか、という「部分的なうごき」でしかないのです。

コップを手に取るときの説明も、もしからだのそれぞれのパーツを説明していくことになると、

「(その位置からコップを手にするには)足を前に出して」
「(その位置からコップを手にするには)肘を伸ばして」
「(コップに触れたら)一旦指を伸ばして」
「指を曲げてコップを掴んで(注意:コップが潰れるほどの力ではない!)」
「そのまま握る力を抜かずに肘や肩を使って持ち上げて」

どこまで経験したことがあるのかわからないので、もしかすると「掴むとは」「持ち上げるとは」「肩の関節とは」といったさらに細かな説明や解説、場合によってはコップを手に取る前に経験しておく必要がある行動が出てくるかもしれません。


経験や成功したことのない人に言語を使って行動を説明するというのはこのような必要がどうしても出てきてしまうのです。


【歯車を噛み合わせるとは】
先ほど挙げたコップを手に取るまでのそれぞれのうごきは、例えるなら「歯車ひとつひとつ」です。

歯車を想像してください。歯車はひとつだけでは単なる回転にすぎませんが、その歯に他の歯車の歯が噛み合うと、連動して動き始めます。こうしていくつもの歯車が連動し合うと、例えば時計とか、エンジンとつながったタイヤなどが動き出し、時刻を正確に刻み続けたり、車が走ったりするのです。

どこかひとつでも歯車が噛み合っていなかったり、歯車そのものが存在していない部分があると機能しません。
それぞれの歯車がどれだけ高品質で素晴らしいものだったとしても、噛み合っていなければ結果は伴いません。
逆に、それぞれの歯車の品質が悪かったとしても、とりあえず噛み合ってさえいれば、とりあえずの結果は伴います。

高音域を演奏する仕組みも、これと同じなのです。

ですから、まずはクオリティが低くても構わないので、本当に必要な歯車をそれぞれ用意し、それらを正しく噛み合わせることが成功への第一歩になります。


では次回次回の記事では具体的にハイノートを出すためのそれぞれの歯車が何であるかを説明したいと思います。

それではまた来週!


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メトロノームは練習に必要か 2

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みなさんこんにちは!

先週から「テンポ」について、とくに「メトロノーム」とテンポの関係について書いています。
先週分をご覧になっていない方は、ぜひ前回から続けてご覧いただければと思います。(先週分はこちらから


《音楽的テンポ感》
正確なテンポを刻むためにメトロノームを常にカチカチさせて演奏している方にお聞きしたいのですが、「やりにくい!」と感じたことありませんか?

技術的なことではなく、「なんか納得いかない」「体がそう反応してくれない」といったストレスを感じるようなやりにくさです。

「でも楽譜のテンポ指示はこの数値だから、しっかりはめこまなきゃ!…なんかやりにくい!」

と葛藤する。

これは、あなたの中に持っている「音楽的テンポ感」が邪魔をしているからです。
言い方を変えれば「歌心」、あなたの音楽的センスと言えるでしょう。

音楽というのは(レコーディングされたポップスや映画音楽作品等の商業音楽を除いて)、正確なテンポをキープしている作品はほとんどありません。
ためしにウィーンフィルでもベルリンフィルでも、どこでもいいですが、テンポが一定であろう部分をメトロノームと合わせてみてください。
全然合わないはずです。

では、その録音をメトロノームなしで聴いて、「テンポが不安定だ!ダメな音楽だ!」とか「こんな正確じゃないテンポで金賞は取れないよ!」などと思えるでしょうか。

そうは思わないはずです。

人間は、音楽に正確なテンポを求めて聴いているわけではありません。
メロディやその作品の持っている個性に、より合った(と、奏者等が感じている)演奏、人間的な心から発せられる歌から生まれるテンポを求めて聴いているのです。

それを「音楽的テンポ」と呼んでいます。


奏者は何よりもこの音楽的テンポ感を大切に演奏しなければならないと思っています。


《音楽的テンポ感はだれにでも備わっている》
世の中にテンポ感の悪い人はほとんどいません。
「いや、テンポ感が悪いんです!先生によく怒られるから」と一生懸命メトロノームにテンポをはめこむ練習をしている方、あなたもテンポ感は実は悪くないのです。

みなさん、友達と横に並んで一緒に歩きますよね?一緒に歩こうとしているのにどんどん先に行ってしまうとか、一緒に買い物に出発したのに、気づいたら友達より5分も早くお店に着いちゃったとか、そんなことありえませんよね。「歩調を合わせる」と言いますが、これはテンポ感の一種です。

テンポを合わせる=一歩一歩の足の動かし方も、その距離感も完全に一致させるだけが合わせることと思わないでください。


友達が、お互いのよく知っている曲を突然口ずさんだとしましょう。あなたも一緒に歌ったとします。気づいたら先に歌い終わっていた、なんてこと絶対ありませんよね。
その歌が、メトロノーム的、機械的な正確さとしては合っていなかったとしても、二人が「一緒に歌おう」と思っていれば、一緒に最後まで歌い続けることは簡単なことです。
それがメトロノーム的テンポとは合っていなかったとしても、そんなことは関係なく「一緒に歌ったこと」が嬉しくて、楽しくて、充足感を得られるはずです。

これが人間の心の中に持っている「音楽的テンポ感」です。

一緒に歩いたり、歌を口ずさんだりするのと同じようにトランペットでも友達と音楽的テンポ感を合わせることは決して難しいことではありません。


《呼吸とメトロノーム》
メトロノームを鳴らしっぱなしで演奏していると、曲中の「呼吸」がうまく取れなくて困りませんか?

もはやブレスしないで最後まで吹ければ、こんな乱れないのに!こうなったら循環呼吸の練習だ!みたいな発想になっていたら危険です。

曲中のブレスが苦手としている方、または自覚がないけれど、本来の呼吸とは違う空気の吸引が当たり前になっている方は管楽器の世界では非常に多いのです。曲が進み、ブレス回数が増えれば増えるほど息苦しくなり、演奏できる長さがどんどん短くなってしまう方、その元凶はメトロノームを使った練習にあると思います。


コンピュータが演奏している音楽って、すぐ「人間じゃないな」とわかりますよね。最近のCG(コンピュータ・グラフィックス)技術は飛躍的に進歩していて、パッと見では実際の映像と判別がつかないことも増えてきましたが、コンピュータ音楽に関してはまだそこまで到達しているようには感じません。
あの有名な初音ミクも、人間が歌っていると思って聴いている人はいないと思います。作品の善し悪しではなく、やはりコンピュータからの電気信号にしか聞こえません。存在否定はしていませんよ。

逆にPerfumeのように人間の声を電気的に変換していても「元は人間が歌っているんだな」とわかりますよね。

これらの理由のひとつが「呼吸」の存在です。

人間は、呼吸を感じられない存在を「生命」として認識しづらいものです。呼吸は単なる生命維持のためのガス交換だけが目的ではなく、話し方や体のうごき、思考など様々な面で呼吸が関係しています。

当たり前ですがメトロノームは呼吸をしていません。ですから、メロディの合間に呼吸を必要とする、なんて理解はをしてくれるわけもなく、単なる物理的な正確性を貫いているだけです。
その機械と人間が、音楽に込められた「生命力」や「心」を表現するためにある音楽で共存できるはずがないのです。必ずどちらかがある程度妥協するしかありません。

管楽器における呼吸は、絶対に必要です。
そして、音楽においても呼吸は絶対に必要です。

音楽は呼吸をしています。無機質に音がタイミングよく羅列したものを芸術、音楽とは呼べません。

僕はレッスンで、呼吸をできるだけ音符の羅列を乱さないように、もしくは人間の体の構造を無視した「偽物の呼吸」をしている生徒さんには、一旦それらをリセットしてもらい、メロディ間の呼吸に、充分時間をかけ、尊重してもらうようにお願いします。結果的に楽譜にない空白の1拍が生まれてもまったく構いません。

その瞬間、楽譜通りではなくなりましたが、音楽と人間の自然な呼吸が共存します。

これをスタート地点として、その作品が、きちんと作品として活きてるように、正しい呼吸の方法を素早くできるようにすることを課題とします。

そうすると不思議なことにメトロノームには全然一致しないのに、聴いていて何も違和感のない、むしろそちらのほうがテンポが流れている美しい音楽と感じられる演奏になるのです。
呼吸がいかに音楽にとって大切なことか、理解できる瞬間ではないか、と思います。

これは管楽器だけの話ではありません。打楽器も弦楽器も鍵盤楽器も指揮者も、すべての音楽を表現する人たちには「呼吸」が大切であり、必要なのです。


《アンサンブル》
アンサンブルやパート練習のとき、指揮者がいないからと自分たちの前にメトロノームを置き、それに合わせて(部分的にでも)曲を通す、という光景を何度となく見かけますが、これまでの話からすれば、この行為が音楽的には悪い方向に進んでいると理解できることと思います。

アンサンブルを作り上げているのは、演奏者全員の、それぞれの中に持っている音楽的テンポ感、音楽的呼吸、作品のイメージ、どのように表現するかのある程度共通したイメージ、そしてフレーズ感など、様々な要素によって音楽は作り上げられていきます。

もうひとつ、「ある程度のビート感」も必要です。メトロノームで確認した均一なビートを持ち続けることは大切ですが、しかし、それに最初から最後まで合致させる必要はないし、それをやってしまうと人間味、芸術性が失われてしまいます。


《メトロノームの効果的な使い方》
では、メトロノームなど必要ないのか、使い道などないのか、というとそうではありません。
正確なテンポをキープできる機能を生かして、自分を成長させてくれる使い方がいくつかありますので紹介します。


[おおよそのテンポ(ビート)を理解する]
これはすでにお話した通りです。その作品の持つテンポがどのくらいなのかを正確に知ることができます。


[フィンガリング練習]
難しい指づかいがあるときに重宝します。強制的なテンポが存在していると、そこの中にすべての音を存在させなければならないので、解決方法を模索するきっかけになります。
手段を選ばずにやみくもに指を一生懸命並べていても苦手なフィンガリングはほとんど改善されませんが、手助けになる存在です。


[奏法を強化するとき]
音の跳躍(インターバル)や、幅広い音域のリップスラー、リップトリルなどの「(場合によって)奏法を優先してしまいがち」なテクニカル練習時に役立ちます。
例えば跳躍練習で、一生懸命広い音域を移動しようとすると、大きな体のうごきが必要と勘違いしがちで、時間をかけてしまう場合があります。しかし、それは奏者の都合であり、音楽的にも、その演奏を聴く人にも必要のないことですから、そういった意味で技術を磨くためにメトロノームを使うことは非常に有効です。
しかしこれも、手段を考えずにやみくもに練習するのは意味がありません。

また、ヴィブラートをかける練習にも使えます。


[呼吸を音楽的に使うための練習]
先ほどの呼吸とは違い、曲頭や長い休みがあった後の吹き始めです。
人間の正しい呼吸のシステムを無視して管楽器を演奏することはできません。管楽器用の特殊な吸気(空気が体内に入る行為)など存在していませんから、「応用」するしか方法がありません。
そのとき、からだのシステムと、音楽的(拍のアタマから正確に入るなどの)要素を合体させるときに有効です。

他にもあると思いますが、こういった便利な使い方は沢山ありますので、用法用量をしっかり決めた上で、正しく使いたいとこです。薬みたい。

ということで、2週に渡ってメトロノームについて書いてみました。
ぜひ参考にしてみてください!


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at 07:21, 荻原明(おぎわらあきら), 練習に対する考え方

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メトロノームは練習に必要か 1

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みなさんこんにちは!

前回は吹奏楽で大人気の「宝島」のテンポについて書きました。速すぎやしないか、と。
僕の個人的感想なので、当然、楽曲の演奏テンポは指揮者や団体ごとに自由です。

しかし、音楽…特にオーケストラや吹奏楽などといったクラシック音楽(寄り)の演奏形式、いわゆる芸術といわれる分野は、「創作した人(音楽の場合は作曲者、編曲者)」と「演奏する人」のバランスが大切になります。

作編曲者は、その作品をどのように演奏して欲しいか、具体的な完成図を持った上で楽譜にしています。しかし作曲者が書いた楽譜がそこに存在しているだけでは大半の人間には、それがどんな音として聴こえるのかがわかりません。ですから、演奏者はその作品がどのようなものなのかを聴く人に伝える役割、「仲介役」を担っていると言えます。

しかし、それだけだったらこの時代、コンピュータにでもやってもらえばいいだけです。ということは演奏者には他にも大事なことがあるのです。

それが「自分の心を作品に込める」という作業。
演奏する作品がどのような完成図になるかを理解した上で、「自分だったらこう表現する(したい)」という心を入れることが必須です。そうすることで、「その奏者しかできないその作品の表現」が生まれるのです。

お客さんは、その作品を聴きたいというだけでなく、「この人だったらその作品をどのように演奏してくれるのだろう」という期待も含め、聴いてくれています。

そのような関係性があるからこそ、クラシック音楽は非常に長い間、様々な奏者によって何度も何度も色あせることなく演奏され続けらているのです。


話を戻すと、「宝島」もどんなイメージを持って演奏するかは、個人や団体の自由で結構です。しかし、それは「原曲と吹奏楽編曲作品としての存在を尊重(理解)した上で」という、約束があります。

ということは編曲された意図…どんな完成図になっているのかを理解して、「それだったら自分はこんなテンポで演奏したい!だってそれが一番カッコイイと思うから!」と表現して欲しいんですね。
奏者の気分の高揚だけに任せて、編曲作品が活きてこない演奏表現はするべきではなく、最近はだいぶテンポが速くて、この作品の持っているメロディの良さや、サンバ形式を採用した編曲の効果が活かされていないと感じる演奏が多いと思い、このような記事を書いたわけです。

ですから、前回の記事に関しては、単純な個人的見解ではない、ということを理解してもらえれば嬉しいです。

ということでテンポの話題になりましたので、今回はその流れで書いていきます。


《メトロノーム》
みなさんは、練習時にメトロノームを使いますか?
吹奏楽部にはひとりひとつあるんですか?というくらい沢山のメトロノームが置いてあるところもすくなくありません。しかも、びっくりするくらい巨大なメトロノームを指揮台に置いてガッチンガッチン鳴らしているところもよく見かけます。

どうでもいいですがメトロノームってどのくらいまで巨大化できるんですかね?人間と同じくらいのサイズになると、横に立つと危険ですよね。



さて、このメトロノーム、性格な「ビート」を刻んでくれる単純かつ便利な道具ではありますが、みなさんはこれをどんな目的を持って使っていますか?

これがきちんと答えられる方は、メトロノームを効果的に使っていると思います。

しかし、

「楽譜に書いてあるテンポ通りの演奏をするために、メトロノームに合わせている」
「タテが(他の奏者と)ずれないようにするために全員でメトロノームに合わせて練習している」

などをメトロノームの使い方、目的としている方は、要注意です。


《メトロノーム本来の目的》
メトロノームは本来、『作曲者(編曲者)が想定しているテンポを奏者へ正確に伝えるため』に存在した、と考えられます。
古くはベートーヴェンが使っていたようですが、テンポというのは「Allegro(=快活に)」とか「Andante(=ほどよくゆっくりと/歩くように)」などといった「楽語」で示すことが昔から一般的で、今も使われています。作品の持つ雰囲気を伝えるにはこの速度に関する楽語は重要な存在ですが、人によって受け取る「快活さ」や「ほどよいゆっくり感」はかなり違います。よって正確にテンポを伝えるためには「数値化」されているほうが便利なわけです。

「Allegroって書いてあったらか1拍120くらいなのかと思ったら、132だったんだ!想像以上に速いテンポを想定した作品なんだね!」

というやりとりによって、作曲者が「遅いなあ、違うんだよなあ」とガッカリすることもなく、演奏できる便利なツールというわけです。

よって、メトロノームは具体的なテンポを「理解する」ために用いることが本来の使用目的なのです。


それがいつの間にか「正確なリズムを刻み続ける道具」になっていました。
メトロノームに合わせて楽譜を演奏する。この行為、100%悪いわけではありませんが、決して良い使い方だとは思いません。

なぜかわかりますか?
それは

「他力本願」だからです。


《「走る」演奏を解決するには》
テンポというのは、自分が生み出すもの、自分の中に作り上げるものです。

そしてテンポをキープするのは、奏者ひとりひとりの「自覚」です。
(指揮者は?と思うかもしれませんが、指揮者は本来そんな仕事をする人ではありません!指揮者をメトロノーム的テンポ制御装置のように見てはいけませんし、指揮をされる方もそれを意識してはいけません)。

「でも、合奏で「走る!(テンポキープができていない)」と指摘されたから、メトロノームを使って練習するのはダメなの?」

という意見があるかもしれませんが、メトロノームをカチカチ鳴ら続けている最中は、それに合わせて吹けても、合奏になるとやっぱり指摘をされた経験、きっとあると思います。

「それは、自分の練習量が足りないからだよ」
「もっとメトロノームを使って正確にテンポを刻めるようになれば、走らなくなるよ」

という意見があるかもしれませんが、…確かに何回も何十回も何十時間も同じことを繰り返していけば、まるでロボットのようなテンポを刻めるようになるかもしれません。しかし、我々が目指していることは、そんな単純なことなのでしょうか。音楽とはそういうものなのでしょうか。

「正確な(メトロノームのような)テンポで演奏すること」と「走らないように演奏すること」が混同していませんか?

仮に、正確な機械的テンポが本当に求められているのであれば、ポップスのレコーディングのように、本番も全員イヤホンでもして、クリック音を聴きながら演奏したほうがいいですし、今の技術ならいくらでも可能でしょう。しかし、そんなことをして舞台でお客さんを前に演奏をしている管弦楽団や吹奏楽団はどこにもいません。

「それは、その団体が上手いんだよ」
「個人の実力の問題だよ」

という意見があるかもしれませんが、そうではありません。「走る」のは全然違うところに理由があるのです。

ざっくり言えば「ビート感(こまかなテンポ感)」と同時に「大きなフレーズ感」を作り出すことでほとんどの場合は解決します。レッスンで走ってしまった場合は、テンポという考え方から一旦離れ、フレーズ感を強く持てる練習を少し行うことでみなさんすぐに良くなります。原因はとても単純なことであり、同時に音楽にとっては何よりも大切なことです。

テンポというのは自分の中に生み出すものなのです。


ということで、長くなりそうなのでここで一旦区切ります。
次週はこの続きです。引き続きご覧下さい!

また来週!


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失敗と成功

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おかげさまで昨年は年間18回の講習会を無事終えることができました。ご参加くださった皆様、ありがとうございます。
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つきましては、「こんな内容の講習会だったら参加してみたい」とか「こんな企画があったら楽しそう」などのご意見をお聞かせください。

こちらのメールフォームにご自由にお書きください。
よろしくお願い致します。




みなさんこんにちは!

先日どこで見たのか忘れてしまったのですが、こんな言葉を目にしました。

「得意なことをすればいい。無理に苦手なことをする必要はない」

実は、この言葉に結構救われたんです。もうだいぶ経ちますが昨年の秋にリサイタルをしまして、そのときの選曲について考えていたときです。
クラシック音楽のリサイタルというと、どうしてもアカデミックなものや、超絶技巧を誇示するような作品をメインに取り入れて「ドヤァ」とかやってるイメージが強くて、自分もそういうのやらなきゃダメなのかなぁ、音大の試験みたいで楽しくないな、聴いてくださる方もつまらいんじゃないかなあ、と感じていたんですね。
クラシック音楽ってよく「わからない」「むずかしい」「つまらない」「じっとしてなきゃいけない」「咳もできない」「オギョーギよくしてなきゃいけない」といったネガティブな言葉を耳にしますよね。実際にそういうのが浮かんできている方が、リサイタルに来てくださって「ああ、やっぱりクラシックって…」とがっかりされてしまうのだけは避けたかったんです。本当は聴きやすくて楽しい作品だって沢山あるのに。

そんなときにこの言葉を見て、ああそうか、自分が得意とすることを聴いてもらえばいいんだ、と我に返った感じがしました。
自分が得意なことをおもいきり表現して、それをお客さんに喜んでもらえたら、と。
その中に、トランペットってこんな楽器なんですよ、とか、クラシック音楽ってこんな曲もあるんですよ、的なものも挟んでいこうと。

おかげで自分としては楽しいコンサートができたわけですが、ただ、この言葉、良い面もそうでない面も持ち合わせているように感じたんです。


《人生はチャレンジの連続》
前回、前々回と、「苦手を克服する方法」と題して記事を書きました。
何かにチャレンジするということは、自分にとって未知なものと対峙することでもあります。

新しいことをするとき、今までとったことのない行動をとるとき、それらはすべて未経験なことに対するチャレンジです。
そのチャレンジを重ねていくことで、人間は成長します。

言い換えるなら、いくつものチャレンジを重ねた結果が今の自分です。

そしてチャレンジには「成功」と「失敗」いずれかの結果があります。


《成功と失敗は表裏一体》
一般的に成功は良いもので、失敗は良くないものと捉える傾向にあります。

もちろん、きめなければならないとき、きめてほしいと願うとき、そんな瞬間が訪れることが生きていく中で何度となく訪れます。
しかし、成功も失敗も「チャレンジを積み重ねていく」という点では、どちらも貴重な経験であると考えます。

成功を経験すると、人は自信を持つことができます。そういった点で成長します。
失敗を経験すると、人は手段の選択肢を知ることになります。そういった点で成長します。

一度失敗したことは経験となり、「これをしてしまうと失敗する(願わなかった結果へ向かっていきやすい)」と危険回避につながるわけで、むしろこの経験の積み重ねがあることで成功へのルートを絞り込むことができ、成功率が上がってくるのではないか、と思うのです。

そういった点で言えば成功も失敗も同じように表裏一体、プラス要素として捉えることができるのです。


《「なぜ失敗したのか」を追求する》
成功と失敗は、音楽でも常につきまとわれます。

先程の話の通り、演奏で失敗をしても、「それが経験できてラッキーだった」と思って欲しいのです。
特に合奏練習やレッスンを含めた練習時にはそれを強く持っておきたいものです。本番失敗しないためにも。

しかし、どうしても反射的に失敗すると「しまった!」と焦ったり(ミス=悪の発想)、バツが悪そうな顔をしたり(ミス=悪の発想)、首をかしげたり(言い訳)、なかったことにしようと何度も吹いてみようとする(言い訳)と、失敗はプラス要素にすることはできません。

失敗を正面から受け入れ、冷静になって考えます。


「なぜ失敗したのか」


追求した先にたどり着いた原因は仮説でも構いません。考えられるあらゆる原因を探っていき、それを再度試してみるのです。
そうしていくうちに具体的な原因が見えてくると思います。

原因がわかれば、それをしないように心がけていく方向にルートが定まってくるので、成功する可能性が上がります。

練習というのはこの積み重ねをする時間でもあります。


《「苦手」と簡単に呼んではいけません》
そこで最初の話に戻ります。

「得意なことをすればいい。無理に苦手なことをする必要はない」

この言葉をどのように捉えますか?

「苦手」は、深く追求した結果わかることです。
適当に経験しただけ判断することではありません。とことんやって、失敗を繰り返した結果です。
そして成功もある程度経験する必要があります。失敗を重ねただけで「苦手」というのは、失敗が嫌だったという感情であって、苦手とは呼べません。
食わず嫌いや、精神的にやりたくない、面倒くさいというのも苦手なことではありません。やってもいないのに苦手とは呼べません。

そうやって様々な経験を重ねていった結果、自然と見えてきたものが「苦手」そして「得意」なんだと思います。


《周りとの評価の差異》
また、自分の中で感じている得意、苦手と、周りからの評価は決して同じではありません。
自分ではあまり自信がないことだったのに、高評価を得た経験はありませんか?

僕はそればかりです。

あまり得意だと自分では思っていなかったことが、高い評価を得て、それが仕事になっているものがいくつかあります。
僕の場合、仕事につながっていることは、趣味で始めた事だったり好きでやっていることなのでありがたいのですが、人によっては気が進まないとか、無関心なものが高評価につながったりします。

ですから、自分が得意なものを見つけることも大切ですが、周りから評価してくれるものを見つけられることもとても大切です。
そのためには、食わず嫌いや面倒くさいとか、失敗したらどうしよう、なんて思っていては宝の持ち腐れになる可能性がありあす。そんなのもったいなさすぎです。

何でもとにかくやってみて、とことんまで掘り下げてみてください。自分の中の感情だけで完結して、先読みした気になってはいけません。誰かにアピールして評価してもらうところまでやってください。それも一度では足りません。


《成功のレールはその先に危険が伴う》
親は子どもの失敗して辛い気持ちになっている姿を見たくないのはわかりますが、だからといって、「将来のため」「あなたのため」という言葉の連呼で一流大学、一流企業に就職してもらう(させる)ために保育園幼稚園からお受験お受験で成功のレールばかりを親御さんがどんどん敷き詰めて、無理矢理乗せて進ませてしまうと、失敗する経験がまったくないまま大人へと成長してしまいます。
受験が悪いというわけでは毛頭なく、どんな言動が失敗を導き、そしてどんな経験を積むことでそれらを解決させられるかを知らずにヒトとして成長をするのは非常に危険だと思うのです。

そもそも、レールを敷いている親はいつまでそのレールを敷いていけるのでしょうか。子どもが自分でレールを敷こう、敷けるようにとした瞬間、「チャレンジ」が訪れるのです。その突然のチャレンジには前述のように「成功」と「失敗」が絶対に待ち構えています。
それまで失敗する経験がなかった(もう成長しきった)子どもは、いったいそのときどうなるのでしょうか。

「あなたのため」「将来のため」という言葉は、その裏に「親のエゴ」がぴったりくっついています。


ちなみに「○○離れ」が増えてきている(と言われている)のも、この「失敗」を経験することが少なくなってきているからでははないか、とも思うのです。
とりあえずやってみる前に情報があるので、「ああ、じゃあいいや」みたいになりやすいのでは、と。


ともかく、苦手も得意も経験を積み重ねた結果でなので、何でもチャレンジするのみです。
その先に「認められる」という嬉しいご褒美が待っています。

ということで今週はここまで。
また来週!


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