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トランペット ウォームアップ本 (MyISBN - デザインエッグ社) (JUGEMレビュー »)
荻原 明
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2015.11.23 Monday
イメージと実際の演奏のギャップ 3
みなさんこんにちは!
先々週から「イメージと実際の演奏のギャップ」と題した記事を書いています。
トランペットが難しいと感じられる原因のひとつが、自分のイメージをトランペットで表現しようとした時、体の使い方と結果が異なってくることがひとつ挙げられます。
日常の動作は、例えば重いものを持ち上げようとした時、強い力を使えば使うほど持ち上がる可能性が高くなるであろう、とイメージすると思います。しかし、トランペットを演奏する際にそれが逆の場合もあるのです。力をそれほど使わないほうが結果がついてくるということ。そして、力よりもバランスが重要である、ということ。
実はこれ、何もトランペットに限ったことではないんですよね。今もあるのかわかりませんが、僕が中学生の時には学校で運動能力や基礎体力を計測するスポーツテストなんてものがありました。
その中に、ソフトボール投げというのがあって、ただソフトボールをどれだけ遠くに長られるかを計測するだけなのですが、中にはボールを足元に叩きつけてしまう人がいたのです。飛距離1m。
これは、遠くに飛ばそうを思うあまり力を使いすぎて、投げる行為を超えた筋肉の働きがあったからだと思います。そもそも、ボールを遠くに飛ばすとか、速く投げるというのは筋肉をムキムキに使うというよりも、筋肉をしなやかに、そして手首のスナップをきかせる(柔軟にする)ことが必要なので、それほど「力(筋肉)を使っているぞ!」という感覚にはならないのです。
トランペットの話に戻すと、低音域と高音域になればなるほど力のかけかたやバランス感覚が顕著に変化します。
前回の記事ではそのバランスとは「圧力(体内の空気圧)」「息のスピード」「飛距離」「息と意識の角度(方向)」の4つであり、それぞれについて説明しました。
ということで、ここまでの内容はぜひ過去の記事を読んでみてください。特に、ここから先のバランスの要素に関しては前回の記事をご覧頂いた上で読んで頂くことをおすすめします。
イメージと実際の演奏のギャップ1
イメージと実際の演奏のギャップ2
それでは、今回はそれぞれの音域に対して、それぞれの要素がどんなバランスになると良いか、詳しく書いていきます。
《中音域のバランス》
中音域(おおよそ五線の中の音域)は比較的、体の使い方とイメージが一致しやすい場所です。強く積極的に使えば強い音がでます。したがって、以下のようになります。
・圧力
体内の空気圧を高めると、強い音になります。軽くすればそのぶん音圧は軽くなり、聴こえる音量も優しくなります。イメージする物体のサイズはこれから説明する低音域と高音域の中間です。ツボに当たっている音を基準にします。
・息のスピード
息のスピードは、低音域と高音域の間の状態です。おおよそ五線中央のFやGくらいの音を出している時のスピードを基準にします。
・飛距離
飛距離も低音域と高音域の中間です。これもFやG音あたりがしっかりツボに当たって鳴る音を基準にします。
・息と意識の方向
真正面に息が進むように意識します。音のツボは正面です。
《低音域のバランス》
低音域の特徴は圧力によるイメージの物体サイズです。これが一番大切です。
・圧力
イメージする圧力による物体のサイズは低音域になればなるほど大きく、そして重くなります。自分の体のサイズを圧倒的に超えるくらい大きな圧力が存在するイメージを持ち、ズシーーンと重量感のある息を体内に作り上げて下さい。
・息のスピード
息のスピードは音の高さを決めるものです。ですからスピードは遅くなります。圧力によって作り上げた大きくて重い物体が遅く、しかし確実に前に進んでいるようにイメージして下さい。
・飛距離
飛距離に関しては中音域とさほど変わりません。しっかり鳴らしたければそれなりの飛距離が出るように体をコントロールしましょう。
・息と意識の方向
低音域になると音のツボは、かなり上にあります。ですから、息や意識の方向が前方の斜め上に飛ぶようにコントロールして下さい。
そのために必要なのが舌の形です。舌の奥が沈み、「オ」の発音をしている状態で息を出せば、舌の形状が息の滑走路になり上に飛んでいきます。
《高音域のバランス》
高音域が一番イメージと実際の体の使い方に違いが生まれます。ひとつずつ確認してみましょう。
・圧力
圧力による物体サイズは、想像を絶する小ささで、例えるなら針のような感じです。
多くの方が、高い音を出そうとした時に、お腹をはじめとする全身に力を込めてしまうのですが、その行為から生まれる高圧の空気は、低音域を吹く時のような巨大な物体です。そういう体の使い方をしてしまっている自覚がもしありましたら考え方を一掃し、できるだけ小さくて鋭利な物体をイメージして下さい。
ただし、息の通り道が口の中で狭くなるぶん、「返し」が強くなるのも高音域の特徴です。ですから、吹くための圧力ではなく、「返し」の力に耐えるための圧力(腹筋)が必要になります。しかし、返しの力に耐えようとする意識は、音を出し続けようとする意思で充分カバーできますので、あえて最初から力をかけにいこうとする必要はありません。音が出はじめた瞬間に「おっと、力を入れておかないと『返し』の力に押し返されちゃうぞ」と絶対に感じますので、そういうことが起こるのだ、と覚悟しておくだけで良いと思います。
・息のスピード
息のスピードはとても速くなります。鋭く尖った針が「シュッ!」と素早く飛ぶようなイメージを持って下さい。
・飛距離
この飛距離が一番意外かもしれません。できる限り飛距離を出さないように心がけることで、高音域を当てることができます。
トランペットを吹いていると、いつも「遠くへ飛ばそう」と思い、イメージでも実際の体の使い方に関しても管の中を素早く流れ、ベルから一直線に遠くへ飛んで、、、なんて教わり方をした方も多いと思いますが、勘違いしやすいのが、「実際の音の飛び(客観的に聴こえる音)」と「コントロール上の息の飛距離」は高音域の時、まったく異なってしまうということです。
飛距離を出さないで当たった音は、ホールの遠くまでしっかりと聴こえるのです。
・息と意識の方向
高音域では、音のツボが下にあります。高い音を吹こうとすると、どうしても上へ上へと狙ってしまいがちですが、まったく逆ですので注意して下さい。
《高音域について再確認》
音域によって上記のようにバランスが変化することがわかったでしょうか。
特に注意して欲しいのがやはり高音域です。高音域では息のスピードを上げること以外は、圧力も飛距離も出さないように心がける必要があるので、がむしゃらに力を込めてしまう体の使い方が逆効果なのです。
「スピードは速いが、飛距離が短い」このバランスを作ることを目標に、高音域を出す練習をして下さい。
《要素が増えすぎた時の具体的な弊害》
前回の記事でこんなことを書きました。
『圧力が高くなれば基本的には音量が大きくなり、より張った音になります。』
圧力は、その名の通り聴こえる「音圧」を決めます。圧力が高いほうがムチッとした音になり、大勢で演奏している時にもしっかりと存在感のある音を出すことができます。
しかし、これも限度があります。高くなりすぎた圧力では、コントロールがきかなくなり、唇が反応しなくなっていきます。結果、こもった音になり、吹いている本人は苦しくてたまらなくなってしまいます。良い高圧の状態では苦しさを感じることはありません。注意して下さい。
そしてもうひとつ、こんなことを書きました。
『お腹に力を入れれば腹圧が高まりますので、その圧力を高くしていけば肺の中の空気は速く噴出することになります。しかしこの動きには、先ほど説明した圧力に対しても変化が生まれ、力がかかればそれだけ息の強さも増してしまうので、音量にも影響を与えます。
実はバランス崩れを起こしやすい一番の原因がここにあります。』
文章にすると難しく感じますが、要するにお腹の力を使えば使うほど、音量も大きくなってしまうのです。
お腹の力で何でも吹いてしまうクセを持っている人が多いように感じます。例えばリップスラーもお腹をグイっと使って上の音にたどり着いたり、音階やメロディの頂点に向かってお腹の力で一気に駆け上がるように吹くなど。
もちろんこの吹き方が悪いわけではありません。このテクニックはとても有効で、方法のひとつではあります。
しかしこの吹き方は同時に「クレッシェンド」というオマケが必ず付いてくるのです。
なので、もしもリップスラーやメロディの頂点に向かってデクレッシェンドが書いていたり、もしくはずっとピアノの音量で演奏するように求められたとき、これでは対応できなくなってしまうのです。
そのためにもうひとつのテクニックである「口の中のサイズ変化」を身につけておきたいですね。このブログでもよく出てくる「舌の動きを形状、それにともなうアゴの動き」です。口の中のコントロールでも充分息のスピードを変化させることができます。しかもこの方法だと音量の変化は生まれません。
この2つの方法を上手に組み合わせて演奏することができれば、表現の幅はとても広くなることでしょう。
ということで、3週にわたって書いてきました「イメージと実際の演奏のギャップ」、いかがでしたでしょうか。
ちょっと難しいお話になってしまいましたので、じっくり実践しながら時間をかけて体感していって下さい。
レッスンを受けてもらえると、実演を交えてより理解しやすくなると思いますので、よろしければ「プレスト音楽教室」までいらして下さい。
それでは、また来週!
先々週から「イメージと実際の演奏のギャップ」と題した記事を書いています。
トランペットが難しいと感じられる原因のひとつが、自分のイメージをトランペットで表現しようとした時、体の使い方と結果が異なってくることがひとつ挙げられます。
日常の動作は、例えば重いものを持ち上げようとした時、強い力を使えば使うほど持ち上がる可能性が高くなるであろう、とイメージすると思います。しかし、トランペットを演奏する際にそれが逆の場合もあるのです。力をそれほど使わないほうが結果がついてくるということ。そして、力よりもバランスが重要である、ということ。
実はこれ、何もトランペットに限ったことではないんですよね。今もあるのかわかりませんが、僕が中学生の時には学校で運動能力や基礎体力を計測するスポーツテストなんてものがありました。
その中に、ソフトボール投げというのがあって、ただソフトボールをどれだけ遠くに長られるかを計測するだけなのですが、中にはボールを足元に叩きつけてしまう人がいたのです。飛距離1m。
これは、遠くに飛ばそうを思うあまり力を使いすぎて、投げる行為を超えた筋肉の働きがあったからだと思います。そもそも、ボールを遠くに飛ばすとか、速く投げるというのは筋肉をムキムキに使うというよりも、筋肉をしなやかに、そして手首のスナップをきかせる(柔軟にする)ことが必要なので、それほど「力(筋肉)を使っているぞ!」という感覚にはならないのです。
トランペットの話に戻すと、低音域と高音域になればなるほど力のかけかたやバランス感覚が顕著に変化します。
前回の記事ではそのバランスとは「圧力(体内の空気圧)」「息のスピード」「飛距離」「息と意識の角度(方向)」の4つであり、それぞれについて説明しました。
ということで、ここまでの内容はぜひ過去の記事を読んでみてください。特に、ここから先のバランスの要素に関しては前回の記事をご覧頂いた上で読んで頂くことをおすすめします。
イメージと実際の演奏のギャップ1
イメージと実際の演奏のギャップ2
それでは、今回はそれぞれの音域に対して、それぞれの要素がどんなバランスになると良いか、詳しく書いていきます。
《中音域のバランス》
中音域(おおよそ五線の中の音域)は比較的、体の使い方とイメージが一致しやすい場所です。強く積極的に使えば強い音がでます。したがって、以下のようになります。
・圧力
体内の空気圧を高めると、強い音になります。軽くすればそのぶん音圧は軽くなり、聴こえる音量も優しくなります。イメージする物体のサイズはこれから説明する低音域と高音域の中間です。ツボに当たっている音を基準にします。
・息のスピード
息のスピードは、低音域と高音域の間の状態です。おおよそ五線中央のFやGくらいの音を出している時のスピードを基準にします。
・飛距離
飛距離も低音域と高音域の中間です。これもFやG音あたりがしっかりツボに当たって鳴る音を基準にします。
・息と意識の方向
真正面に息が進むように意識します。音のツボは正面です。
《低音域のバランス》
低音域の特徴は圧力によるイメージの物体サイズです。これが一番大切です。
・圧力
イメージする圧力による物体のサイズは低音域になればなるほど大きく、そして重くなります。自分の体のサイズを圧倒的に超えるくらい大きな圧力が存在するイメージを持ち、ズシーーンと重量感のある息を体内に作り上げて下さい。
・息のスピード
息のスピードは音の高さを決めるものです。ですからスピードは遅くなります。圧力によって作り上げた大きくて重い物体が遅く、しかし確実に前に進んでいるようにイメージして下さい。
・飛距離
飛距離に関しては中音域とさほど変わりません。しっかり鳴らしたければそれなりの飛距離が出るように体をコントロールしましょう。
・息と意識の方向
低音域になると音のツボは、かなり上にあります。ですから、息や意識の方向が前方の斜め上に飛ぶようにコントロールして下さい。
そのために必要なのが舌の形です。舌の奥が沈み、「オ」の発音をしている状態で息を出せば、舌の形状が息の滑走路になり上に飛んでいきます。
《高音域のバランス》
高音域が一番イメージと実際の体の使い方に違いが生まれます。ひとつずつ確認してみましょう。
・圧力
圧力による物体サイズは、想像を絶する小ささで、例えるなら針のような感じです。
多くの方が、高い音を出そうとした時に、お腹をはじめとする全身に力を込めてしまうのですが、その行為から生まれる高圧の空気は、低音域を吹く時のような巨大な物体です。そういう体の使い方をしてしまっている自覚がもしありましたら考え方を一掃し、できるだけ小さくて鋭利な物体をイメージして下さい。
ただし、息の通り道が口の中で狭くなるぶん、「返し」が強くなるのも高音域の特徴です。ですから、吹くための圧力ではなく、「返し」の力に耐えるための圧力(腹筋)が必要になります。しかし、返しの力に耐えようとする意識は、音を出し続けようとする意思で充分カバーできますので、あえて最初から力をかけにいこうとする必要はありません。音が出はじめた瞬間に「おっと、力を入れておかないと『返し』の力に押し返されちゃうぞ」と絶対に感じますので、そういうことが起こるのだ、と覚悟しておくだけで良いと思います。
・息のスピード
息のスピードはとても速くなります。鋭く尖った針が「シュッ!」と素早く飛ぶようなイメージを持って下さい。
・飛距離
この飛距離が一番意外かもしれません。できる限り飛距離を出さないように心がけることで、高音域を当てることができます。
トランペットを吹いていると、いつも「遠くへ飛ばそう」と思い、イメージでも実際の体の使い方に関しても管の中を素早く流れ、ベルから一直線に遠くへ飛んで、、、なんて教わり方をした方も多いと思いますが、勘違いしやすいのが、「実際の音の飛び(客観的に聴こえる音)」と「コントロール上の息の飛距離」は高音域の時、まったく異なってしまうということです。
飛距離を出さないで当たった音は、ホールの遠くまでしっかりと聴こえるのです。
・息と意識の方向
高音域では、音のツボが下にあります。高い音を吹こうとすると、どうしても上へ上へと狙ってしまいがちですが、まったく逆ですので注意して下さい。
《高音域について再確認》
音域によって上記のようにバランスが変化することがわかったでしょうか。
特に注意して欲しいのがやはり高音域です。高音域では息のスピードを上げること以外は、圧力も飛距離も出さないように心がける必要があるので、がむしゃらに力を込めてしまう体の使い方が逆効果なのです。
「スピードは速いが、飛距離が短い」このバランスを作ることを目標に、高音域を出す練習をして下さい。
《要素が増えすぎた時の具体的な弊害》
前回の記事でこんなことを書きました。
『圧力が高くなれば基本的には音量が大きくなり、より張った音になります。』
圧力は、その名の通り聴こえる「音圧」を決めます。圧力が高いほうがムチッとした音になり、大勢で演奏している時にもしっかりと存在感のある音を出すことができます。
しかし、これも限度があります。高くなりすぎた圧力では、コントロールがきかなくなり、唇が反応しなくなっていきます。結果、こもった音になり、吹いている本人は苦しくてたまらなくなってしまいます。良い高圧の状態では苦しさを感じることはありません。注意して下さい。
そしてもうひとつ、こんなことを書きました。
『お腹に力を入れれば腹圧が高まりますので、その圧力を高くしていけば肺の中の空気は速く噴出することになります。しかしこの動きには、先ほど説明した圧力に対しても変化が生まれ、力がかかればそれだけ息の強さも増してしまうので、音量にも影響を与えます。
実はバランス崩れを起こしやすい一番の原因がここにあります。』
文章にすると難しく感じますが、要するにお腹の力を使えば使うほど、音量も大きくなってしまうのです。
お腹の力で何でも吹いてしまうクセを持っている人が多いように感じます。例えばリップスラーもお腹をグイっと使って上の音にたどり着いたり、音階やメロディの頂点に向かってお腹の力で一気に駆け上がるように吹くなど。
もちろんこの吹き方が悪いわけではありません。このテクニックはとても有効で、方法のひとつではあります。
しかしこの吹き方は同時に「クレッシェンド」というオマケが必ず付いてくるのです。
なので、もしもリップスラーやメロディの頂点に向かってデクレッシェンドが書いていたり、もしくはずっとピアノの音量で演奏するように求められたとき、これでは対応できなくなってしまうのです。
そのためにもうひとつのテクニックである「口の中のサイズ変化」を身につけておきたいですね。このブログでもよく出てくる「舌の動きを形状、それにともなうアゴの動き」です。口の中のコントロールでも充分息のスピードを変化させることができます。しかもこの方法だと音量の変化は生まれません。
この2つの方法を上手に組み合わせて演奏することができれば、表現の幅はとても広くなることでしょう。
ということで、3週にわたって書いてきました「イメージと実際の演奏のギャップ」、いかがでしたでしょうか。
ちょっと難しいお話になってしまいましたので、じっくり実践しながら時間をかけて体感していって下さい。
レッスンを受けてもらえると、実演を交えてより理解しやすくなると思いますので、よろしければ「プレスト音楽教室」までいらして下さい。
それでは、また来週!
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at 06:16, 荻原明(おぎわらあきら), ハイノート(ハイトーン)
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2015.11.17 Tuesday
イメージと実際の演奏のギャップ 2
みなさんこんにちは!
前回より「イメージと実際の演奏のギャップ」について解説しています。
トランペットでは、中音域(五線内のF音前後)が一番コントロールしやすいと多くの方が思うのではないか、なぜなら、そのあたりの音域は、自分のイメージと出た音の結果が一致しているから、というのがひとつあると思われる、というお話をしました。詳しくは前回の記事をご覧ください(こちらから見られます)
逆に低音域や高音域になると「思った通りの音が出てくれない(=コントロールが難しい)」と感じることが多くなります。大きな音で鳴らしたいから一生懸命吹き込んでいるのに、かえって音が出ず、頑張っているのに報われない、とか。
そうなった時、きっと多くの方が「まだ努力が足りない」とか「まだパワーが足りない」とか、様々な角度から「プラス」の方向へ意思を向けているのではないか、と思うのです。
努力をするのは悪いことではありませんが、例えば高い音が出ないとか、大きな音が出ないとかは、一概に力(パワー/筋力)が足りないことが原因だとは言い切れないのです。
そこで、大切なのは「バランス」である、と前回の記事で書きました。
今回の記事では、そのコントロールすべき「バランス」とは具体的に何を指しているのかを解説していきます。
《バランスとは具体的に何を指しているのか》
バランスをとるために必要な要素は大きくわけて4つあります。
[圧力 〜空気の大きさと重さ〜 ]
ひとつは「体内の空気圧」です。ここでは「圧力」と書きます。
トランペットから音を出す時、お腹に力を入れる(腹筋を使う)のはご存知の通りです。では、なぜお腹に力を入れる必要があるのでしょうか。
これは「体内から楽器へ空気を流し込むため」とも言えるのですが、楽器へ流れ込んでいる息は、すでに「結果」でしかないので、意識するポイントとしては遅すぎます※。したがってもう一歩手前の、肺から口の中までにどんな圧力がかかっているのかを意識し、コントロールすることが大切なのです。
僕はこの目に見えない圧力を、「物体」としてイメージしています。物体には大きさと重さがありますので、圧力を高くしている時は、とても大きくて重いもの(形状は立方体でも球体でもなんでもいいですし、表現しようとする音に対してそのつど変化したほうがいいと思います)のイメージ、といった感じです。
圧力が高くなれば基本的には音量が大きくなり、より張った音になります。
※体内から放出されてしまった(トランペットに流れこんだ)空気は、例えるなら、ゴルフやテニスで打った後のボールのようなもので、それを何らかの力でコントロールする(方向や飛距離を変えようとする)というのは聴いていて自然な状態ではありませんね。もちろん、クレッシェンド、デクレッシェンド、フォルテピアノなど、吹いている最中に体の使い方を変化させて音楽的な表現をすることは少なくありませんが、それらすべては「特殊」な行為であり、そういった特殊な演奏をきちんと演奏できるようにするためにはまず「普通」で「自然」な吹き方を身につる必要がある、と考えているのでこう書いています。
[息のスピード]
このブログで何度も書いている通り、音の高さを変化させるのは息のスピードです。スピードが遅ければ低く、早ければ高くなります。
問題なのは、そのスピードをどこで変化させるか、ということ。方法は大きくわけて2つあります。ひとつは「腹筋(腹圧)」によるもの。そして「口の中の空気の通るサイズ(舌とアゴの動き)」変化によるもの。
お腹に力を入れれば腹圧が高まりますので、その圧力を高くしていけば肺の中の空気は速く噴出することになります。しかしこの動きには、先ほど説明した圧力に対しても変化が生まれ、力がかかればそれだけ息の強さも増してしまうので、音量にも影響を与えます。
実はバランス崩れを起こしやすい一番の原因がここにあります。それについては次回解説します。
もうひとつの「口の中のサイズ」は、舌とアゴがどんな形状になっているかということです。息が口の中を通過した際のサイズが息のスピードを変化させます。この方法は、腹圧による強さにあまり影響を受けることなくコントロールができるので、ピアノの音量で優しく高音域を出したい時にも有効な手段です。
したがって、音域変化は舌とアゴのコントロールがメインであると考えてください。
[飛距離]
意外に意識していないものが飛距離です。ここで言う飛距離とは、ベルから出た音がどこまで飛んでいくかのイメージとは異なり、口の中から噴出した空気が楽器の中でどのくらいの距離を飛んでいるのか、ということです。
僕はレッスンで飛距離を説明する時、口の前、どのくらい先にロウソクが立っているのか、というイメージをまず持ってもらい、そのロウソクの火を吹き消す時(もしくは吹き付けても火が消えない程度)の強さを飛距離と言っています。息の飛距離は遠ければ遠いほどいい、というイメージを持ちやすいのですが、口から出た空気の飛距離と音が遠くまで届くことは比例しません。
前述の「スピード」と混同してしまいがちですが、実際に「スピードは速いが飛距離が短い」ということが起こるので、イメージする時にしっかりと区別できるようにしておきましょう。
[角度(方向)]
このブログのオリジナルの表現で、「反比例の法則」というものがあります。
詳しくは「ハイノート(ハイトーン)へのアプローチ6」を読んでいただければと思いますが、「音のツボ」に当てるための空気や意識の角度(方向)について言っています。
以上4つの要素のバランスが、音域によって変化するのです。
次回の記事では具体的にそのバランスについて解説しますので、引き続きおつきあいください。
それでは、また来週!
前回より「イメージと実際の演奏のギャップ」について解説しています。
トランペットでは、中音域(五線内のF音前後)が一番コントロールしやすいと多くの方が思うのではないか、なぜなら、そのあたりの音域は、自分のイメージと出た音の結果が一致しているから、というのがひとつあると思われる、というお話をしました。詳しくは前回の記事をご覧ください(こちらから見られます)
逆に低音域や高音域になると「思った通りの音が出てくれない(=コントロールが難しい)」と感じることが多くなります。大きな音で鳴らしたいから一生懸命吹き込んでいるのに、かえって音が出ず、頑張っているのに報われない、とか。
そうなった時、きっと多くの方が「まだ努力が足りない」とか「まだパワーが足りない」とか、様々な角度から「プラス」の方向へ意思を向けているのではないか、と思うのです。
努力をするのは悪いことではありませんが、例えば高い音が出ないとか、大きな音が出ないとかは、一概に力(パワー/筋力)が足りないことが原因だとは言い切れないのです。
そこで、大切なのは「バランス」である、と前回の記事で書きました。
今回の記事では、そのコントロールすべき「バランス」とは具体的に何を指しているのかを解説していきます。
《バランスとは具体的に何を指しているのか》
バランスをとるために必要な要素は大きくわけて4つあります。
[圧力 〜空気の大きさと重さ〜 ]
ひとつは「体内の空気圧」です。ここでは「圧力」と書きます。
トランペットから音を出す時、お腹に力を入れる(腹筋を使う)のはご存知の通りです。では、なぜお腹に力を入れる必要があるのでしょうか。
これは「体内から楽器へ空気を流し込むため」とも言えるのですが、楽器へ流れ込んでいる息は、すでに「結果」でしかないので、意識するポイントとしては遅すぎます※。したがってもう一歩手前の、肺から口の中までにどんな圧力がかかっているのかを意識し、コントロールすることが大切なのです。
僕はこの目に見えない圧力を、「物体」としてイメージしています。物体には大きさと重さがありますので、圧力を高くしている時は、とても大きくて重いもの(形状は立方体でも球体でもなんでもいいですし、表現しようとする音に対してそのつど変化したほうがいいと思います)のイメージ、といった感じです。
圧力が高くなれば基本的には音量が大きくなり、より張った音になります。
※体内から放出されてしまった(トランペットに流れこんだ)空気は、例えるなら、ゴルフやテニスで打った後のボールのようなもので、それを何らかの力でコントロールする(方向や飛距離を変えようとする)というのは聴いていて自然な状態ではありませんね。もちろん、クレッシェンド、デクレッシェンド、フォルテピアノなど、吹いている最中に体の使い方を変化させて音楽的な表現をすることは少なくありませんが、それらすべては「特殊」な行為であり、そういった特殊な演奏をきちんと演奏できるようにするためにはまず「普通」で「自然」な吹き方を身につる必要がある、と考えているのでこう書いています。
[息のスピード]
このブログで何度も書いている通り、音の高さを変化させるのは息のスピードです。スピードが遅ければ低く、早ければ高くなります。
問題なのは、そのスピードをどこで変化させるか、ということ。方法は大きくわけて2つあります。ひとつは「腹筋(腹圧)」によるもの。そして「口の中の空気の通るサイズ(舌とアゴの動き)」変化によるもの。
お腹に力を入れれば腹圧が高まりますので、その圧力を高くしていけば肺の中の空気は速く噴出することになります。しかしこの動きには、先ほど説明した圧力に対しても変化が生まれ、力がかかればそれだけ息の強さも増してしまうので、音量にも影響を与えます。
実はバランス崩れを起こしやすい一番の原因がここにあります。それについては次回解説します。
もうひとつの「口の中のサイズ」は、舌とアゴがどんな形状になっているかということです。息が口の中を通過した際のサイズが息のスピードを変化させます。この方法は、腹圧による強さにあまり影響を受けることなくコントロールができるので、ピアノの音量で優しく高音域を出したい時にも有効な手段です。
したがって、音域変化は舌とアゴのコントロールがメインであると考えてください。
[飛距離]
意外に意識していないものが飛距離です。ここで言う飛距離とは、ベルから出た音がどこまで飛んでいくかのイメージとは異なり、口の中から噴出した空気が楽器の中でどのくらいの距離を飛んでいるのか、ということです。
僕はレッスンで飛距離を説明する時、口の前、どのくらい先にロウソクが立っているのか、というイメージをまず持ってもらい、そのロウソクの火を吹き消す時(もしくは吹き付けても火が消えない程度)の強さを飛距離と言っています。息の飛距離は遠ければ遠いほどいい、というイメージを持ちやすいのですが、口から出た空気の飛距離と音が遠くまで届くことは比例しません。
前述の「スピード」と混同してしまいがちですが、実際に「スピードは速いが飛距離が短い」ということが起こるので、イメージする時にしっかりと区別できるようにしておきましょう。
[角度(方向)]
このブログのオリジナルの表現で、「反比例の法則」というものがあります。
詳しくは「ハイノート(ハイトーン)へのアプローチ6」を読んでいただければと思いますが、「音のツボ」に当てるための空気や意識の角度(方向)について言っています。
以上4つの要素のバランスが、音域によって変化するのです。
次回の記事では具体的にそのバランスについて解説しますので、引き続きおつきあいください。
それでは、また来週!
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at 07:02, 荻原明(おぎわらあきら), ハイノート(ハイトーン)
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2015.11.10 Tuesday
イメージと実際の演奏のギャップ 1
みなさんこんにちは!
このブログではみなさんからのご質問を随時募集しておりまして、たくさんのメールをいただいております。ありがとうございます。
頂いた質問の内容は様々ではありますが、その中でも一番多く寄せられる質問がやはりハイノートです。
トランペット吹きにとっては初期の段階でぶつかる大きな課題のひとつですね。中学校や高校で始めた方の場合、まだ1,2年くらいしか楽器を吹いていないのに、どんどん高い音を吹かされるといった急すぎる環境の変化に対応できず、出し方もよくわからないのに合奏で指摘されてしまうから、しかたなく力ずくで出そうとしてわからなくなる、という流れが多いから悩む方が多いのだと思っています。
結局のところ、本当の意味で高い音が出る理論と、その方法を適切に伝えられることができる人がまだまだ少ないのかな、とも感じます。
今、もしハイノートで悩みを持っている方がいたら、これまでにもたくさんの記事を書いてきたので、まずそれを読んで頂ければと思いますが(こちらからまとめて読むことができます)、今回は今まで書いていなかった補足的なことも含め、違う角度から音域変化がどのように行われているのかを確認し、ハイノートを出すための参考になれば、と思います。
《イメージと実際の演奏のギャップ》
みなさんは、誰かが吹いているフォルテの音を耳にした時、例えるならその音を「力強い」「音量が大きい」と感じることでしょう。こういったイメージを持つことは、実際の身体にも無意識に影響を及ぼします。
例えば、テレビでお笑い芸人のコントを見て面白いと感じれば笑顔になり、笑い声を出すでしょう(体に直接触れられ、くすぐられたわけでもないのに)、会議で納得がいかないことが起これば苛立ちや怒りを覚え、握りこぶしを作ることもあります(殴られたわけでもないのに)。人間は肌に直接的な刺激を受けなくても、様々な要因で筋肉が反応するのです。だから頭の中で「これから自分は強い音を出す」とイメージすれば、自然と力をかける方向に身体を使おうとするのです。
しかし、トランペットの興味深いところは、実際に出てくる音と、それを発している奏者の体の使い方がからなずしも一致していないことです。
これを知り、実感できることがトランペットをコントロールする上で重要なポイントです。
では、詳しく解説してみましょう。
《トランペットは大きな音が出る楽器》
わかりやすいのでフォルテの話で統一します。
トランペットは形状からしても想像できるように、もともと大きな音を出すために作られた楽器です。大勢いる中、遠くの人間にもちゃんと音が届くように作られ、そして改良されてきたわけですから「頑張って吹いたら大きな音が出る」のではなく「大きな音が出るように設計された」と考えると、わざわざ奏者が頑張って大きな音を出そうとする必要はなく、どうすれば大きな音が出るのか、その方法を見つけることが大切だということがわかるはずです。
《中音域は素直に吹ける》
ところで、トランペットが一番鳴らしやすいと感じる音域はどのあたりですか?
人によって多少のばらつきはあると思いますが、きっと多くの方は「中音域」と言うのではないでしょうか。
おおよそ、五線の真ん中あたり、GとかFとか。その下とか。
では、なぜこのあたりの音域が一番吹きやすいのでしょう。
理由はいろいろあると思うのですが、そのなかのひとつに
「コントロールがしやすい」
ことがあげられます。コントロールがしやすいというのは、もっと具体的に言えば
「イメージ通り吹ける(吹き加減と結果が一致している)」
ということ。
それが正しいかは別として、フォルテで吹こうと思ったら、自分の身体もイメージ通りのフォルテの力を使う、ということ。多少力を込めて音を出せば、その通りに反映してくれる。そんな感じ。
中音域というのは、ある程度イメージ通りの身体の使いかたで音が反応してくれるから吹きやすいと言えます。
《音域による吹き方のギャップ》
では低音域、高音域はどうでしょうか。
みなさんの中にも、吹奏楽やオーケストラで下のパートを担当した際、五線より下あたりの低音域をフォルテで吹こうとしても全然鳴ってくれなかったり、息の音しか出なかったり、音がひっくりかえってしまったり、そんな経験をしたこと、ありませんか?
「こんなに頑張って吹いているのに、全然鳴ってくれない!」
必死に吹けば吹くほど出てくれないんですよね。
これがまさに音域による吹き方の違いなんです。
この問題を解決するには、音の出る原理についてもう一度確認する必要があります。
そもそも音の高さの変化は空気を振動させる数が多いほど高い音になり、少なければ低い音になります。
トランペットでは、唇の振動数がそれに当たり、息のスピード変化によってコントロールしています。
したがってトランペットでの音の高さは、息の流れるスピードによって変化するのです。
低音域を吹くためには、息の流れるスピードを遅くする必要があるのですが、最初に書いた通り大きな音を出そうとした際、どうしても身体の力を強く使おうとしてしまいます。身体の使い方が正しいかどうかは別として、身体の筋力を強くすればするほど、体内の空気圧が高くなりますから、結果として唇を通過する息のスピードは速くなってしまいます。
スピードの速い息は、低音を出すためのものではありません。
ですから、低音域でフォルテを出そうとした時、(出た音の)イメージが力強いばかりに身体の使い方までもが力強くなってしまうと、矛盾した状態になり、音に反映されなくなってしまう(フォルテで吹けなくなってしまうか息の音しか出ない無音状態になる)。
トランペットを演奏する側と聴く側の大きなギャップがここにあります。
《バランスを保つ》
レッスンで常々言っていますが、「トランペットはバランスが大切」な楽器です。
バランスが崩れた時、イメージとは違う結果が生まれてしまいます。
今回のお話がまさにそれで、トランペットから音が出なかった時(息の流れる音だけになってしまった時)は、バランスが崩れた時なんですね。いわゆるミスをした、と感じると、どこかが悪いのだと思いがちなのですが、イメージをきちんと持っていて、アパチュアも確保できていて、舌やアゴもきちんと使えていて、息を流す腹筋なども正常な状態であっても、それらのバランスが崩れていると音にならなかったりするのです。
先ほどの低音域のお話では、息の流れが、音域に合っていなかったために音がきちんと出せませんでした。
次週はこの「バランス」というのが具体的に何を指しているのか、それらはどのように変化させるのか、解説します。バランスを冷静にコントロールする力を持てると、ハイノートを出すことが大変だ、苦手だ、という発想もなくなってきますよ!
それでは、また来週!
このブログではみなさんからのご質問を随時募集しておりまして、たくさんのメールをいただいております。ありがとうございます。
頂いた質問の内容は様々ではありますが、その中でも一番多く寄せられる質問がやはりハイノートです。
トランペット吹きにとっては初期の段階でぶつかる大きな課題のひとつですね。中学校や高校で始めた方の場合、まだ1,2年くらいしか楽器を吹いていないのに、どんどん高い音を吹かされるといった急すぎる環境の変化に対応できず、出し方もよくわからないのに合奏で指摘されてしまうから、しかたなく力ずくで出そうとしてわからなくなる、という流れが多いから悩む方が多いのだと思っています。
結局のところ、本当の意味で高い音が出る理論と、その方法を適切に伝えられることができる人がまだまだ少ないのかな、とも感じます。
今、もしハイノートで悩みを持っている方がいたら、これまでにもたくさんの記事を書いてきたので、まずそれを読んで頂ければと思いますが(こちらからまとめて読むことができます)、今回は今まで書いていなかった補足的なことも含め、違う角度から音域変化がどのように行われているのかを確認し、ハイノートを出すための参考になれば、と思います。
《イメージと実際の演奏のギャップ》
みなさんは、誰かが吹いているフォルテの音を耳にした時、例えるならその音を「力強い」「音量が大きい」と感じることでしょう。こういったイメージを持つことは、実際の身体にも無意識に影響を及ぼします。
例えば、テレビでお笑い芸人のコントを見て面白いと感じれば笑顔になり、笑い声を出すでしょう(体に直接触れられ、くすぐられたわけでもないのに)、会議で納得がいかないことが起これば苛立ちや怒りを覚え、握りこぶしを作ることもあります(殴られたわけでもないのに)。人間は肌に直接的な刺激を受けなくても、様々な要因で筋肉が反応するのです。だから頭の中で「これから自分は強い音を出す」とイメージすれば、自然と力をかける方向に身体を使おうとするのです。
しかし、トランペットの興味深いところは、実際に出てくる音と、それを発している奏者の体の使い方がからなずしも一致していないことです。
これを知り、実感できることがトランペットをコントロールする上で重要なポイントです。
では、詳しく解説してみましょう。
《トランペットは大きな音が出る楽器》
わかりやすいのでフォルテの話で統一します。
トランペットは形状からしても想像できるように、もともと大きな音を出すために作られた楽器です。大勢いる中、遠くの人間にもちゃんと音が届くように作られ、そして改良されてきたわけですから「頑張って吹いたら大きな音が出る」のではなく「大きな音が出るように設計された」と考えると、わざわざ奏者が頑張って大きな音を出そうとする必要はなく、どうすれば大きな音が出るのか、その方法を見つけることが大切だということがわかるはずです。
《中音域は素直に吹ける》
ところで、トランペットが一番鳴らしやすいと感じる音域はどのあたりですか?
人によって多少のばらつきはあると思いますが、きっと多くの方は「中音域」と言うのではないでしょうか。
おおよそ、五線の真ん中あたり、GとかFとか。その下とか。
では、なぜこのあたりの音域が一番吹きやすいのでしょう。
理由はいろいろあると思うのですが、そのなかのひとつに
「コントロールがしやすい」
ことがあげられます。コントロールがしやすいというのは、もっと具体的に言えば
「イメージ通り吹ける(吹き加減と結果が一致している)」
ということ。
それが正しいかは別として、フォルテで吹こうと思ったら、自分の身体もイメージ通りのフォルテの力を使う、ということ。多少力を込めて音を出せば、その通りに反映してくれる。そんな感じ。
中音域というのは、ある程度イメージ通りの身体の使いかたで音が反応してくれるから吹きやすいと言えます。
《音域による吹き方のギャップ》
では低音域、高音域はどうでしょうか。
みなさんの中にも、吹奏楽やオーケストラで下のパートを担当した際、五線より下あたりの低音域をフォルテで吹こうとしても全然鳴ってくれなかったり、息の音しか出なかったり、音がひっくりかえってしまったり、そんな経験をしたこと、ありませんか?
「こんなに頑張って吹いているのに、全然鳴ってくれない!」
必死に吹けば吹くほど出てくれないんですよね。
これがまさに音域による吹き方の違いなんです。
この問題を解決するには、音の出る原理についてもう一度確認する必要があります。
そもそも音の高さの変化は空気を振動させる数が多いほど高い音になり、少なければ低い音になります。
トランペットでは、唇の振動数がそれに当たり、息のスピード変化によってコントロールしています。
したがってトランペットでの音の高さは、息の流れるスピードによって変化するのです。
低音域を吹くためには、息の流れるスピードを遅くする必要があるのですが、最初に書いた通り大きな音を出そうとした際、どうしても身体の力を強く使おうとしてしまいます。身体の使い方が正しいかどうかは別として、身体の筋力を強くすればするほど、体内の空気圧が高くなりますから、結果として唇を通過する息のスピードは速くなってしまいます。
スピードの速い息は、低音を出すためのものではありません。
ですから、低音域でフォルテを出そうとした時、(出た音の)イメージが力強いばかりに身体の使い方までもが力強くなってしまうと、矛盾した状態になり、音に反映されなくなってしまう(フォルテで吹けなくなってしまうか息の音しか出ない無音状態になる)。
トランペットを演奏する側と聴く側の大きなギャップがここにあります。
《バランスを保つ》
レッスンで常々言っていますが、「トランペットはバランスが大切」な楽器です。
バランスが崩れた時、イメージとは違う結果が生まれてしまいます。
今回のお話がまさにそれで、トランペットから音が出なかった時(息の流れる音だけになってしまった時)は、バランスが崩れた時なんですね。いわゆるミスをした、と感じると、どこかが悪いのだと思いがちなのですが、イメージをきちんと持っていて、アパチュアも確保できていて、舌やアゴもきちんと使えていて、息を流す腹筋なども正常な状態であっても、それらのバランスが崩れていると音にならなかったりするのです。
先ほどの低音域のお話では、息の流れが、音域に合っていなかったために音がきちんと出せませんでした。
次週はこの「バランス」というのが具体的に何を指しているのか、それらはどのように変化させるのか、解説します。バランスを冷静にコントロールする力を持てると、ハイノートを出すことが大変だ、苦手だ、という発想もなくなってきますよ!
それでは、また来週!
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at 07:58, 荻原明(おぎわらあきら), ハイノート(ハイトーン)
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